6月のやわらかな午後、カーテン越しに射す光が、白いソファの上に座る青年をやさしく照らしていた。
すちは、膝の上に広げた本を閉じて、大きくひとつ息を吐いた。
「……そろそろ、戻る頃かな」
時計は午後三時を回っている。
朝から姿を見かけないみことに、少しの不安と、ほんの少しの寂しさを覚えていた。
だがその時、玄関のチャイムが鳴った。
「ん……?」
扉を開けると、そこにいたのは――
「……みこちゃん?」
それは、確かにみことだった。けれど、彼は……明らかに小さくなっていた。
つぶらな瞳に、くるんとした柔らかい金髪。首元までの大きなシャツを引きずるように着ていて、足元は裸足のまま。
戸惑ったようにすちを見上げるみことの表情は、普段のどこかぼんやりした天然さを、そのまま年齢だけ引き下げたような無垢さだった。
「すち……?」
「……どうして、そんなにちっちゃくなってるんだよ……」
「わかんない……。でも、なんか気づいたら……こうなってて……。でも、すちに会いたくて……きたの……」
不安げな声に、すちはゆっくりしゃがみこみ、その小さな手をとった。
ひんやりしていた。何も分からないまま、ひとりでここまで来たのだろう。
「……よく来たね。偉いよ、みこちゃん」
頭を撫でると、みことはくすぐったそうに笑った。その笑顔に、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
――これは一時的なものだ。何かの魔法か、現象か。すちはそう予感していた。
けれど、いま目の前にいるこの「ちいさなみこと」は確かに、彼の知るみことであり、
そしてその小さな手を、放したくないほどに愛おしかった。
「お腹、すいてない? なんか食べようか」
「……すちのごはん、たべたい……」
その一言が、たまらなくうれしかった。
「よし。じゃあ、特製のハンバーグ、つくろっか」
「やったぁ!」
無邪気に笑うみことの声が、リビングに響く。
その声を聞きながら、すちはふと思った。
――もしかしたら、この時間は、神様がくれたご褒美なのかもしれない。
いつもは隣にいるはずの人が、いまは腕の中にすっぽりおさまっている。
その奇跡のような時間を、大切に包むように。すちはみことの小さな背中を、そっと抱きしめた。
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「すち、これなーに?」
朝のキッチンに響く、ちいさな声。
エプロン姿のすちの足元にぴったりくっついて、ちびみことが大きな瞳でフライパンを見つめていた。
「ん? これはパンケーキ。みこちゃん、甘いの好きだったよね?」
「うんっ! すちのつくるのがいちばんおいしいの!」
素直すぎる笑顔に、すちの胸がきゅっと締めつけられる。
「……そんなこと言われたら、何枚でも焼きたくなっちゃうなあ」
「いっぱいたべたいな~」
「じゃあ、今日はおかわり自由ってことで」
「やったー!」
両手をあげて喜ぶ姿がかわいすぎて、すちは思わずしゃがみこみ、
「もう、かわいすぎる……」と呟きながらぎゅっと抱きしめた。
「くすぐったい~!」
「我慢できなかった。ごめん」
「すちはね、ぎゅーするのうまいね」
「はは、それは嬉しいけど……みこと、最近甘えん坊すぎない?」
「だって、ちっちゃいからね?」
「うーん、それは確かに」
でも、それだけじゃない。
たぶん、もとから君は甘えるのが下手で、でも本当は誰かにこうして思いっきり愛されたかったんじゃないかな――
そんなことを思いながら、すちはやさしく頭をなでた。
パンケーキをお腹いっぱい食べた後、ふたりはソファに並んで座っていた。
みことはすちの大きなTシャツに包まれて、すちの膝枕の上でうとうとしている。
ふわふわの髪が太陽の光に透けて、まるで金色の羽のようだった。
「……すち、ねむい」
「寝ていいよ。今日もがんばったもんね」
「すちもいっしょに……いてくれる?」
「もちろん。どこにもいかないよ」
みことはその言葉に安心したのか、すう、と小さく寝息をたてはじめた。
すちはその寝顔を、そっと指先でなぞる。
「……可愛すぎて、罪」
誰にも見せられない顔で、すちはちびみことに頬をすり寄せる。
ちょっとだけ照れて、でも安心しきったような寝顔が、胸をいっぱいにした。
ほんの少し前までは、同じ目線で言葉を交わしていた。
けれど――
小さくなったみことは、どこまでも無垢で、無防備で、すちの愛情を全部受け取ってくれる。
「……元に戻っても、こんなふうに甘えてくれたらいいのになあ」
思わず本音が漏れる。
けれど、それでも。
今はこのちいさな手を守っていけるだけで、幸せだった。
夕暮れ。お昼寝から目覚めたみことは、少しだけ照れた顔ですちに向かって言った。
「……すち、だいすき」
「……っ、みこちゃん……それ、反則……」
「だって……すちに、いっぱいいっぱい……ありがとうって、言いたかったの……」
「……もう、なんでもしてあげたくなっちゃうなあ……」
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ふたりはリビングで、絵本を読みながらのんびりと過ごしていた。
「このウサギさん、すちにちょっと似てるね」
「え? どこが?」
「ふわふわで、やさしいところー!」
「それ、ウサギっていうより俺のこと褒めてない?」
「えへへー、でもほんとだもん」
そう言って、みことはくすくす笑いながら、絵本をぺたんと閉じた。そして、突然――
「えいっ!」
小さな手が、すちのお腹をくすぐるようにつついた。
「うわっ、なにっ、ちょ、ちょっと!?」
「すちー、くすぐったいとこ、みつけた~!」
得意げに笑うみこと。すちは驚きながらも、すぐに反撃の構えをとる。
「みこちゃん、それは……反撃されても知らないからね?」
「えっ……あっ……やだ、こないで~っ!」
逃げようとするみことを、すちはすばやく捕まえて、ふわりと抱きかかえる。
「よし、覚悟ー!」
「うわぁっ! すち! すちー!! くすぐったい~っ!!」
ちいさな体を抱えたまま、すちは指先でこちょこちょとみことの脇やお腹をくすぐる。みことは身をよじって笑い転げる。
「だめぇぇ~~~っ! も、もうやだーっ!!」
「ここかな~~!」
「ふぁっ……!」
再び指が触れた場所、そこはただのわき腹じゃない。
みことがふっと息を呑んで、足をきゅっと閉じた。
「……そこ、なんか……変な感じ、する……」
耳まで真っ赤に染まったみことが、恥ずかしそうに上目遣いで見つめてくる。
その様子があまりに無垢で、すちは息をのんだ。
「変な感じって……どんな?」
「むずむずして……さっきより、もっと触ってほしくなっちゃう……」
「……そっか。じゃあ、もうちょっとだけ……やさしく、ね」
すちはみことの体にそっと寄り添いながら、今度はゆっくりと、優しくその“感じてしまう場所”に触れた。
みことは瞼を震わせて、小さく声を漏らす。
「すち……おねがい、もっと……」
その一言が、すちの胸をじんわりと温かくした。
甘えるような声、潤んだ瞳。無垢なみことが、自分にだけ見せる姿。
それがたまらなく愛しい。
「……ほんと、かわいいな」
すちはそっと、みことの頬に触れる。
ぬくもりを確認するように指をなぞらせると、みことは目を閉じて微かに身をゆだねた。
「さっき触ったとこ……ここかな?」
すちはみことの腰のあたりに手を滑らせ、ゆっくりとくすぐるように撫でた。
敏感なその場所に触れられるたびに、みことの身体がびくっと跳ねる。
「……あっ、や、そこ……すちぃ……っ」
「力抜いて。怖いことなんてしないから」
すちは囁くように言いながら、みことの足の間に手を伸ばす。
まだ洋服の上からだというのに、そこがじんわりと熱を帯びているのがわかる。
「ねえ、みこちゃん。ここ……もう、気持ち良い?」
「んっ……う、ん……すちに、触られると……変になるの……」
みことは小さく震えながら、すちの胸に顔を埋めた。
頬まで熱を帯びて、息がうわずっている。
「……じゃあ、服の上から……いい?」
「う、うん……すちになら、なんでも……」
すちがゆっくりと手を下に滑らせると、みことの太ももがぴくりと震えた。
やがて手は柔らかな布の上にたどり着き、その奥に潜む熱と、かすかな硬さに触れる。
すちは布越しに、そっと撫でる。指先に伝わる熱と形に、思わず息を呑んだ。
やわらかく、でも確かに反応していて、まるですちの手を待っていたかのようだった。
「……すごく、敏感になってるね。ここ、撫でるとどうなるの?」
「……んぅ、あっ……!」
布越しにゆっくりと上下に指をなぞるたびに、みことの腰が小さく跳ねた。
熱を帯びた吐息が、すちの首元にかかる。
「はずかしい……けど……もっと、してほしい……っ」
「うん……みことが求めてくれるなら、何度でも触ってあげるよ」
すちは包み込むようにやさしく手のひらで撫でながら、時折、指先で先端の形をなぞる。
そのたびにみことは小さく声を漏らし、脚の間に力を込めて震える。
「ね、気持ちいい?」
「……んっ、すち……もう、なんか……へん……」
布越しにすちの指が触れ続けるたびに、みことの身体は熱を増していく。
呼吸は浅くなり、脚の間にぎゅっと力が入る。
くすぐったさと快感が混ざり合って、もうどこに力を入れていいのかもわからない。
「ゆっくりでいいよ。みことの感じるままに……」
すちの声は低くて、落ち着いていて。
その音に安心しながら、みことはそっと目を閉じた。
指先は、焦らすように先端をなぞる。ときには円を描くように、優しく撫でて。
布越しだというのに、そこだけがびしょ濡れになっているのが、自分でもわかる。
「すち……なんか、なんか……へんになりそう……っ」
「いいよ、変になって。全部俺に見せて」
「んぅ……ぁ……!」
限界は、すぐそこにあった。
指が少し強めに、ぴたりと一点を押し上げたその瞬間――
「っ……!!?」
ビリッ、とした衝撃がみことの身体を走り抜けた。
足先から頭のてっぺんまで、まるで電流のような感覚。
そのあまりの鋭さに、みことは身体をびくんと跳ねさせ、すちの胸にしがみついた。
「みことっ、大丈夫?」
「……っ……い、いま……なに、これ……すごいの、きた……」
みことの瞳は涙で潤み、唇はかすかに震えていた。
呼吸は乱れたままで、けれどどこか、満たされたような表情を浮かべている。
「……な、なんか……でちゃった……?」
「うん。すごく気持ちよかったんだね……がんばったね、みこと」
すちはみことの髪を優しく撫でながら、そっとその額に口づけを落とした。
恥ずかしさに顔を赤く染めながら、みことはすちの胸に身を預けた。
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リクエストありがとうございました!
コメント
2件
もしかして私のリクエストだったりしますか… 小さくなった黄さんもかわいすぎますし緑さんもかっこよすぎますし最高です! おにしょた大好きなので何回も読みます()