僅かに雪が積もった窓の外に、またゆっくりと雪の結晶が舞い落ちる。
そんな季節に、日々が終わりを告げた。
ある日、眠っている蓮の呼吸音が聞こえてこないことに気づいた。
💚蓮…?蓮?
🖤…
肩を叩いて呼び掛けても、返事は返ってこない。
急いで病院に連絡をし、岩本たちが駆けつけてくれた。脈や瞳孔の開き加減をみて、岩本は悲しそうな、それでいて穏やかな表情で告げた。
💛残念ですが…心臓が止まっています。死亡推定時刻は、数十分くらい前かと。
言葉が出なかった。
震える指で蓮の手を握る。まだ少しだけ温かい。
蓮の顔は、まるで眠っているかのように穏やかで、揺り起こせばまた目を覚ましそうなほどだった。
きっと、蓮は幸せだったんだね。
俺も、蓮と一緒に居られて幸せだった。
💚蓮…ありがとう…
俺の目から零れた大粒の涙が、蓮の頬を叩く。岩本と佐久間はそっと隣に来て、背中を擦ってくれた。
しばらく、俺は動けないでいた。
それからのことは記憶から抜け落ちているが、通夜や葬式に向井や深澤が来てくれたのは覚えている。
本当に怒涛の日々だった。しばらく休んでいた仕事に復帰して、蓮の家族に会いに行って。独り暮らしにはどうしても慣れなくて、夜はいつも独りで泣いていた。
蓮にはもう会えない。それでも、彼が遺してくれた愛を、俺は何かしらの形で受け継がなきゃいけないんだ。そんな使命感にも似た想いは、日々を重ねるごとに増えていった。
ある日、雨の中買い物に出掛けると、ひとりの少年が傘も差さずに佇んでいた。
💚どうしたの?
俺が傘を差し出すと、少年は泣き出してしまった。
取り敢えず家に招いて、事情を聞く。少年は、ラウールと名乗った。
🤍僕、お家に居場所がなくて。小学校も、お休みしてるから、誰も助けてくれない…
また泣き出してしまったラウールを、俺はそっと抱き締めた。
💚そしたらさ、ここにおいで。いつでも話し相手になるよ。
顔を覆って泣くラウールの腕には、大きな痣がたくさん散りばめられていた。
🤍お兄さん、僕、ここにいてもいいの?
震える声で尋ねるラウールは、病気を患っていた頃の蓮の姿に重なった。
この子を、守ってあげたい。
💚うん!もちろん。寂しいときは、誰かと一緒の方がいいでしょ?
🤍うん…!
そうして、両親に親権を放棄されたラウールは、里親として俺と暮らすことを選んだ。
今は、ふたりだけで暮らしている。
ラウールは可愛くて優しくて、自慢の息子だ。俺のことをパパと呼んで懐いてくれている。お陰でとても幸せな暮らしが出来ている。
たまに向井や深澤が家に遊びに来たり、翔太と舘さんのお店に行ったりと、友達付き合いは大事にしている。
虐待されていたラウールの治療のため、あの病院には今も通っている。佐久間と岩本とは毎日のように顔を合わせるから、あの頃の日々がまだ続いているような感覚だ。
そんなラウールは、仏壇に飾ってある蓮の写真を、ずっと不思議がって眺めている。そろそろその話をしなきゃなぁと思っている頃合いだ。
窓の外に、雪が舞い散る。またこの季節がやって来た。
蓮、見ているかな。俺は元気にやってるよ。ラウールっていう子が一緒に居てくれてね、今すごく幸せなんだ。今まで蓮がくれた愛のお陰だよ。ありがとう。そっちに行くのは、だいぶ後になると思う。蓮、ずっとずっと愛してるよ。
そっと祈ると、写真立ての中の蓮が優しく微笑んだような気がした。
🖤💚End
最後まで私のお話を読んでくださった皆様、本当にありがとうございます‼️✨️応援してくれた方々のお陰で、無事にこのお話を完結させることができました。
さて、「余命、半年」はどうだったでしょうか。悲しい描写もたくさんありましたが、最終的には心暖まる結末にできたんじゃないかなぁと思ってます!
コメントで感想など頂けると、作者はとても喜びます💖ぜひぜひ気軽にコメントしてくださいね!
ゆきりんごの次回作にもご期待ください!!
ではまた👋
コメント
5件

少し見るの遅れました… 愛して愛された🖤💚…!!!!!(泣)幸せエンド?で良かったですっ!!バットエンドじゃなくて、2人とも幸せなの最高です!!(途中、バッドエンドか?!と思ってましたよ…)

本当にめめあべ最高です😢

悲しいけど😭 やりたい事やれて 穏やかに… その後幸せになれたのなら良かったと やっぱりめめあべ最高です。