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実里は四日経っても戻って来なかった。
親戚全員帰る様子もなく、明らかに大人達の顔色が悪い。
それに、こそこそと大人だけで何かを話しているようだった。その話のときは決まって『別の部屋にいなさい』と言われた。
夜な夜な聞こえてくる実里の悲鳴や泣き声。
けれど、今日は聞こえない。
「なんでこんなことになんだよ……大人達もなんで見て見ぬ振りなんだよ!」
和葉が苛立をぶつけるように壁を蹴飛ばした。さすがの子どもの俺らも実里が何かされていると気づく。けれど、親達は俺らには教えてくれなかった。
「あのさ……さっき大人達が言ってたの聞こえたんだけど…………み、みのり」
歩が言いにくそうに視線を泳がせながら、怯えた様子で話しだす。嫌な予感しかしなかった。
「暗い部屋に閉じ込められて鞭打ちにされてるって……下手したら死んじゃうんじゃないかって……」
その言葉に俺も和葉も絶句した。
閉じ込められているのは察しがついていたけれど……鞭打ち?死ぬ?実里が?
和葉が苛立った様子で壁を勢いよく叩く。
「行くぞ」
ダメだ。俺は……行く資格なんてない。その光景を見るのが怖い。
「っお前なにしてんだよ! 兄貴だろ! 」
なかなか動かない俺の胸ぐらを和葉が勢い良く掴んだ。目の前で思いっきり睨まれても俺は言葉がでてこない。
なんて言えばいいのかすらわからないんだ。
「和葉!」
歩が俺と和葉を引き離す。その手は少し震えていた。
「ここでもめてる場合じゃないだろ! 早く助けにいかないと……」
「潤!! てめぇ、弟見捨てんのかよ! 」
言い返したくても、動きたくても力が入らない。
実里の元に行くのがどうしようもなく怖い。
そんな俺に呆れた和葉が舌打ちをして背を向けて歩き出す。きっと実里の元に行こうとしているんだ。
でも、ダメだ。やっぱり動けない。
「待ってくれ。ここは俺に任せてほしい 」
つい先程までいなかったはずの武蔵が両手を横にのばして和葉の行く手を塞いだ。
「お前、どこ行ってたんだよ!」
「落ち着け和葉 」
普段のふざけた様子ではなく真剣だというのが、“葉っぱ”ではなく “和葉”という呼び方でわかった。
理由はわからないけど動揺している俺たちとは違い、武蔵は不思議と冷静だ。
「落ち着いてられっかよ! 実里だけがこんな目に遭うのおかしいだろ! 」
和葉の言う通りだ。実里だけがこんな目に遭うなんておかしい。
実里は何も悪くない。俺があの時、声をかけていれば……
「だからだ! みんなで行けば、全員同じ目に遭う」
「このままここにいろってことかよ!」
「俺に任せてほしい。頼む」
武蔵は真剣な面持ちで言うと頭を下げた。
なんで武蔵がこんなに必死なんだよ。俺が兄なのに。なんで俺は動くことも言葉を発することもできないんだよ。
俺、最低だ。
実里、ごめん。
何もできなくて……ごめんな。