千秋と美奈子がLINで繋がってから1ヶ月が過ぎていた。
美奈子も千秋にならなんでも話せるようになり、裕介の事を相談してみようかと思った。
【おはよう。変なこと、聞いても良い?】
週明けの月曜日の、美奈子からのLINの始まりがいつもと違い、千秋は何があったのかと思う。
【おはよう。どうしたの?】
通勤途中だったので、千秋は直ぐに返事を返した。
【男の人って、1年以上もエッチができなくなるものなの?もう、私、どうすれば良いかわかんないの。病院に行ってもらったほうが良いのかな】
朝からどうしたのかと千秋は驚きながらも、美奈子の深刻そうな文章に夫と何があったのか気になってしまう。
【旦那さんと何があった?1年以上って、もしかして旦那さんEDとか?】
【EDなのかな。この1年でずっと仕事が忙しくなって、夫婦の時間が全くないの。私、もう女に見られてないのかな。もう、ずっとこのまま歳だけとっていくのかな】
美奈子は涙が出てきた。
悲しくて悔しくて。
土曜日は一緒に手を繋いで渋谷でランチ。
夜もアルコールは飲まなかった。
軽めの夕飯に、温かいお風呂で裕介をリラックスさせた。
それでもいざ挿入となると、裕介は萎えてしまって美奈子を抱けなかった。
【落ち着いて。美奈子は素敵だよ。きっと旦那さんだってそう思ってる。もし旦那さんも悩んでるなら、話し合うとか無理?旦那さん、いくつだっけ?】
【32よ。話し合うのは恥ずかしくて言えない。元々が淡白な人だったから、私からそんな事言えないよ】
32じゃ、まだまだ若いだろうと千秋は思う。
だが美奈子の様子から、想像以上に深刻な問題だと分かった。
岡崎の結婚式での寂しそうな顔も、これが原因だったのかと思った。
【でも、1人ではシたみたい。今朝燃えるゴミの日だったんだけど、ビニール袋に入ったゴミを捨ててた。たまにそうやって捨ててる。自分ではできるけど、私には無理ってもう意味がわからない】
美奈子は涙が零れていた。
千秋に愚痴ったところで、何も解決しないのは分かっている。
でも、誰かに聞いてほしい。
1人でもう抱えられないと思った。
【話し合えないのはなぜ?2人の問題だろ?恥ずかしいってそれで自分を追い詰めていたら、美奈子も病んじゃうんじゃない?】
【アクションはさりげなく起こしてる。だからそう言う雰囲気にもなってる。だけど最後までできないんだもん。私だってシたいよ。もう、いつまで我慢すれば良いの?このままじゃ、私、誰かと浮気しちゃいそう】
千秋は胸がドクンと音を鳴らした。
【あ、嘘ッ!ごめん、変なこと感情的にLINしちゃった。忘れて!今日も仕事頑張ってね!朝から変な話して、本当にごめんなさい!】
【大丈夫だよ。なんでも話してくれて良い。それで少しでも美奈子が楽になるなら、いくらでも愚痴ってくれて構わない】
千秋が送信した返事は、その日はもう無かった。
感情的に、あまりにも赤裸々に千秋に吐き出してしまって、美奈子は恥ずかしくて自己嫌悪に陥った。
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