第11話:壊れかけた心、繋がる体
先輩の手がオレの体を撫でるたび、
胸の奥で何かが壊れそうになる。
今のオレには、先輩が必要だと感じる反面、
その支配が怖くて仕方なかった。
「葵、目を見ろよ」
先輩の指がオレの顎を持ち上げ、無理矢理に視線を合わせさせる。
「……俺が怖いか?」
その問いに、オレは必死に首を振った。
でも、心の中では少しだけ怖いと思っている自分がいた。
先輩が優しくしてくれるのは、あくまで支配するためだと、
どこかでわかっていたから。
「怖いなら、もっと触らせてみろよ」
そう言って、先輩はオレの胸に手を伸ばす。
その手のひらがオレを探るように、あらゆる場所をなぞってくる。
「先輩、や、だ、やめて……」
言葉では拒んでも、体は無意識に反応してしまう。
その瞬間、先輩はにやりと笑った。
「やめないよ。お前が言うこと聞かなかったら、もっとしてやる」
その言葉が胸を締めつける。
でも、その言葉の中に含まれた“欲しがっている”という意味が、
どこかでオレを逆に求めさせているのも事実だった。
「お願い、先輩……」
もう、何を言っているのか分からない。
ただ先輩にもっと触れてほしい、感じさせてほしい、
その一心で体が震えていた。
「お前のその顔、可愛いな。俺が好きだ、葵」
先輩がそう言ってオレを抱き寄せると、
心の中でまた一つ、何かが壊れた気がした。
「もう、逃げられないよ」
その言葉を聞いた瞬間、オレはすべてを悟った。
先輩の手が深くオレの中に入ってくるとき、
オレは完全に支配され、今度こそ戻れない場所に堕ちた。
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