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──母の口から葬儀の日程を聞きながら、父は本当にもういないんだろうかと、ぼんやりと思っていた。
それなら、これから迷った時には誰に答えを仰げばいいんだろうか……。
誰に……。
知らずに頬を伝い落ちる涙に、
「一臣さん、」
と、母の声が飛んだ。
「泣いている暇などないと、わかっていますか?」
厳しい口調で言われて、逆らうこともできないまま「はい…」と応える。
「政宗の家の名に恥じない葬儀を出すことだけを、あなたは考えなさい」
なぜ今そんなことを考えなければならないのかと、信じられない気持ちが渦巻く。
せめて父を悼んで、悲しむことさえも許されないんだろうかと、
自らの父親が亡くなった際にも、取り乱すこともなかった母のように、自身も気丈に振る舞う必要を迫られているのだとしたら……、
負わなければならない”家”という荷が、私には重すぎる……。
黙り込んでいると、母が口を開いて、
「家で倒れているのを見つけて、病院へ搬送しましたが、蘇生は叶いませんでした」
父の傍らで、淡々とまるで他人事のようにも話した。
この人は、悲しくはないんだろうかと……
母は、父を、愛してはいなかったんだろうかと……
父は、母を愛していると、そう言っていたのに……と、
最期になってしまった父の言葉が浮かぶと、ただやり切れない想いだけが胸を込み上げた……。