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{分かりました。 }
たらいからのメールに返信する。焦りを落ち着かせるため秋の紅葉を見上げ自然の香りを浴びる。歩けば数十分で着くセラ夫の家までわざわざタクシーで向かった。最近は疲れているのだろうか。朝5時半に起きて深夜1時に就寝。これを半年以上続けていれば疲れるのも当然か。と鼻で笑う。車内のどうも気分が上がらないオルゴール音楽から耳を遠ざけるために瞼を閉じ我々のデビュー曲を口ずさんだ。これを歌ったのはいつ頃だっただろうか。今は関係のないことを考えているうちにセラ夫の家に着いてしまった。
合鍵で入ろうとしたが既に鍵は開いていて、中から言い合いのような声が聞こえた。
「なんで分かんないの。僕が悪かったんだよ!」
「違う。奏斗は悪くない!俺が…俺のせいで!」
静かなはずだった朝焼けに、2つの甲高い声が鳴り響く。何事かと寝室に駆け込んだ。否、駆け込もうとした。が正しいだろうか。私が部屋に入ろうとドアノブに手を掛けたとほぼ同時に扉が開き誰かとぶつかった。
「っ!、凪ちゃん…」
「………セラ夫、大丈夫です。一度落ち着きましょう。」
前とは比べものにならないほどに筋肉の発達した背中を撫でると、安心したのか泣き疲れた赤子のように私に体重をかけて眠ってしまった。セラ夫のあとを追うようについてきた奏斗は状況が理解出来ずに困惑しているようだった。私が来る前に何があったのかは知らないが、もう一度真面目に話し合うようにだけ伝えていおいた。というのも 2人への信頼も込めての発言だ。それにそこまで大事にはならなそうなため、奏斗を信用し家を後にした。
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アキラが帰ってから約30分は経った。真面目に話し合うとしても何と言えば良いのだろうかと考えを巡らせていると、目の前のベッドで規則正しく寝息をたてる人物の瞳と目が合った。まずは起きたことの確認をしようと口を開く僕よりも先に言葉を走らせる。
「お互い様だね。」
呂律の回らない口振りで言葉を繋ぐ。
「俺も奏斗も悪い。でも悪くない!」
どういう意味合いなのだろうか。そのままなのか。それともまた別の意味があるのだろうか。分からない。
「どういう意味。」
「…そーゆーこと。 」
…なんとなくだけど、分かった気がする。
「…お互いに悪いのも、たまには良いよねってこと?」
「さぁ。どうだろうね。」
曖昧な返事ばかりするセラの心情がまた心配になってきてしまった。それと同時に、
「なにそれ。笑」
どこか、久し振りに感じる感情があった気がした。