コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
冥王の存在は、空気を圧倒的に支配していた。冥王、すなわち彼の名の通り、世界の死と再生を握る者。その異能、「虚無の手」は、無限の力を操り、物体を霊体すら無に帰す。だが、彼が持っているのはそれだけではない。冥王の真の力は、すべてを賭けたギャンブルにこそあった。
冥王は、かつて神のような力を求め、そしてその力を得た者だ。しかし、彼の心に常にあったのは、力そのものへの渇望ではない。何よりも、勝つこと、絶対に勝つことにこだわっていた。ギャンブル、それこそが冥王の本質であり、彼が長年戦い続けてきた理由だった。
そして、今、目の前に現れるのは、彼にとって最大の「賭け」だった。
篠田と鋼谷、そして佐藤亮――この三人が揃う時、冥王の無敵の力をどう打破するか。その答えは誰も知らない。しかし、彼らには互いに欠けていたものを補い合う力があった。
「お前の力、虚無の手だか何だか知らないが、俺たちにはお前に勝つための手がある。」篠田は言った。その目は決して揺るがず、冥王に対してまっすぐに向けられていた。
鋼谷はその背後で静かに構えていた。異能を持たぬ彼は、力に頼ることなく、勝利のための戦術を描いていた。彼が持っているのは、頭脳と直感、そしてこれまでの戦いで鍛え上げた肉体だ。
「この戦い、確かに簡単じゃない。でも、お前のギャンブルには乗らない。俺たちは、確実にお前を倒す。」鋼谷は、低く冷徹な声で冥王を挑発した。
佐藤亮は、二人の言葉を聞いて静かに頷いた。「冥王の異能を無効化するには、ただの力ではなく、完全な計算が必要だ。僕が理論的に導く。」亮は手を伸ばすと、その指先から光る数学的な計算式が現れ、空間を歪め始めた。数式が組み合わさり、冥王の能力を無効化する方法が、徐々に形を成していく。
冥王は笑みを浮かべながら、その全身に力を集めていた。「なるほど…お前たち、僕に挑んでくるわけか。」彼は手を掲げ、虚無の手が広がり、世界の一部が崩れ始める。
「だが、どれだけ計算しても、ギャンブルの運命を超えることはできない。」冥王はその言葉を発しながら、空間を消し去り、物質を無に帰す力を放った。
その瞬間、空気が重くなり、三人の周囲に異常な気圧がかかる。篠田は素早く身をかがめて動き、鋼谷は前方に立ち、亮はその計算式を加速させた。
「君の力は虚無に等しい。だが、僕たちの力もまた、無限に広がっている。」亮が言葉とともに手をかざすと、空間に浮かぶ数式が冥王の手を打ち破るように膨れ上がり、異能を次々と無効化していく。
冥王はその力に驚きつつも、さらにギャンブルをかけた。「そうだ、君たちの力も計算できる。しかし、計算できるものだけでは勝てない!」冥王は一気に全力で攻撃を繰り出すと、虚無の手が鋼谷に迫った
篠田は冥王の攻撃をかわし、鋼谷は瞬時にその隙を突く。鋼谷は冥王が一瞬気を取られている隙に、その背後に回り込んだ。そして、篠田がその間に一気に近づき、冥王に一撃を加える。
「これが…最後の一手だ!」篠田は叫び、鋼谷はその攻撃の隙間に全力の一撃を加えた。
冥王はその衝撃を受け、ついに足を踏み外し、地面に膝をつく。「――――ッ!」彼は絶叫し、虚無の手を発動しようとするが、篠田と鋼谷の攻撃によってその動きは鈍くなり、最後の力を使い果たす
冥王が地面に倒れ、姿が徐々に崩れていく。虚無の手がその体を包み込み、彼の存在が完全に消失する瞬間、三人はその場に立ち尽くしていた。
「…終わった?。」鋼谷がつぶやいた。
篠田は深く息をつきながら、亮を見た。「お前、言っていたことは本当だったんだな。君の計算、確かに冥王を超えた。」
亮は穏やかな笑みを浮かべながら言う。「確かに、計算は大事だけど、最後に必要なのは、信じる力だ。」
その言葉に、篠田と鋼谷はそれぞれ静かに頷いた。冥王のギャンブルに打ち勝ったのは、ただの力ではない。彼らの持つ覚悟と信念、それが最後に勝利を呼び込んだのだった。