フィリピンの夕焼けの中、佐藤亮と冥王は向き合った。篠田と鋼谷は戦いで疲れ果て、一時的に退いている。目の前に立つのは、絶対的な異能を持つ冥王。しかし、佐藤亮は一歩も引かない。その理由は彼自身が隠していた能力にあった。
「お前の“虚無の手”、確かに強力だ。でも、この場では俺の異能が優先される。」佐藤は冷静に言葉を紡いだ。
冥王は眉をひそめた。「貴様の異能だと? 僕の“虚無の手”に対抗するとは、面白い冗談だな。」
亮は微笑みながら、手を一振りした。「俺の異能、『問題解決領域』。これが発動されている間、互いに高校や大学レベルの数学の問題を解かなければ、攻撃ができない。ルールは絶対だ。」
冥王は思わず笑い声を上げた。「馬鹿げている。だがいいだろう。お前の遊びに付き合ってやる。」
数学のバトル開始
二人の間に目に見えない結界が生まれる。その中では、すべての物理法則が変化し、攻撃も防御も「問題を解く」ことでしか成立しない。
「まずは俺からだ。」亮が言うと、空間に数式が浮かび上がった。
問題1:
を求めよ。
冥王の目が鋭く光る。「この程度、簡単だ。」彼は素早く計算を開始し、瞬く間に答えを導き出した。
「答えは −*π*。さあ、行くぞ!」
冥王の正解により、虚無の手が亮に向かって伸びる。だが、亮はその直前に防御問題を発動する。
防御問題:
の解を求めよ。
亮は即座に解き、答えを叫ぶ。「x\=2,3!」
冥王の攻撃は数式に阻まれ、虚無の手が霧散する。
次に亮の攻撃ターンだ。彼はより難解な問題を設定する。
問題2:
無限級数 ∑n=1∞1/n2
の値を求めよ。
冥王はしばらく考え込む。「これは…解析学の問題か。」だが彼の天才的な頭脳も、この問題の正解を瞬時に導くことは難しい。
亮は微笑みながら言った。「時間は有限だ。どうした、天才冥王さんよ。」
冥王は苛立ちを隠せない。「くそ…π2/6だ!」
正解を叫ぶと同時に、冥王は再び虚無の手を放つ。亮は防御問題で対抗する。
防御問題:
f(x)=*ex*のテイラー展開を、x\=0 を中心として求めよ。
「」 亮の迅速な回答により、攻撃はまたしても防がれる・
知性の戦いは熾烈を極めた。攻撃と防御を繰り返す中で、冥王の顔には焦りが見え始める。「お前の異能はまさに最悪だな。だが、僕はこの世界の冥王だ。負けるわけがない!」冥王は叫びながら次々と問題を解くが、亮はその都度的確に対処していく。
亮は攻撃問題をさらに難解なものに変える。
問題3:
行列 A=(1234)
行列A\=(1 3 2 4) の逆行列を求めよ。
冥王は疲労に満ちた顔で計算を始めるが、その指先は震えていた。「こんな問題…くだらない。」
だが、亮は冷酷に追い詰める。「くだらないと言うなら、早く答えを出してみろ。」
冥王はようやく答えを叫ぶ。「A−1=(−2132−12)
だがその瞬間、亮は新たな問題を放つ。冥王の疲労は頂点に達し、ついに彼の計算が追いつかなくなる。
亮は冷たく言い放つ。「君のギャンブルはもう終わりだ。」
最後の攻撃問題が発動され、冥王は答えられず、その身は虚無に呑まれるようにして消滅していった。
亮は静かにため息をつきながら言う。「数学の力は、ギャンブルを超える。これが答えだ。」
冥王との戦いに終止符が打たれた瞬間、フィリピンの夜空には、再び穏やかな星々が輝き始めていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!