テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第44話 〚“もう偶然じゃない”と確信する回〛
――海翔視点――
偶然だと思っていた。
——いや、
正確に言えば、そう思おうとしていた。
澪が不安そうな日。
視線が合わない瞬間。
背後を気にする癖。
全部、
「気のせい」で片付けられる範囲だと。
でも。
今日、
それが崩れた。
廊下。
澪が一人で先に曲がったあと、
俺は少し遅れて歩いていた。
すると。
——立ち止まる人影。
柱の影。
タイミングが、
あまりにも正確すぎた。
(……またか)
胸の奥が冷える。
そっと距離を詰めると、
その影は、何もなかったように動き出した。
偶然?
……違う。
俺は足を止めたまま、
頭の中で整理する。
・澪が一人になる瞬間
・班が決まった日
・部屋割りの話が出た日
・そして今日
全部、重なっている。
「……はぁ」
小さく息を吐く。
もう、
「気のせい」じゃない。
澪は、
自分でも分からないまま、
何かを感じ取っている。
だから——
あんな目をしていた。
(理由のない不安、か)
理由は、ある。
ただ、
澪にはまだ見えていないだけだ。
放課後。
澪が友達と笑っているのを、
少し離れた場所から確認する。
笑顔は、本物。
でも。
俺が視線を外した瞬間、
空気が一段、変わる。
……来る。
そう思って、
自然に位置を変えた。
案の定。
視界の端で、
誰かが澪の動きを追っている。
(……確定)
拳を、
無意識に握っていた。
怒りじゃない。
焦りだ。
——もう、偶然じゃない。
——様子見でもない。
狙われてる。
それも、
「その時」を計って。
俺は、
澪のところへ行く。
「澪」
「ん?」
「これから、
一人で行動しないで」
はっきり言う。
誤魔化さない。
澪は少し驚いた顔をした。
「……なんで?」
一瞬、
言葉を選ぶ。
全部は言えない。
でも、
曖昧にもできない。
「俺が、そうしたい」
それだけ伝えた。
澪は少し黙って、
それから小さく頷いた。
その仕草を見て、
胸の奥が締まる。
(……気づいてるな)
澪も。
そして、
俺も。
もう、
守るだけじゃ足りない。
——見張る。
——先に動く。
——絶対に近づかせない。
静かに、
決めた。
修学旅行。
それは、
楽しいイベントのはずだ。
でも俺にとっては、
分岐点になった。
(……ここからは、
俺が前に立つ)
澪には、
まだ笑っていてほしいから。
そのためなら、
俺が全部、背負う。
そう、
確信していた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!