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翌日。
華と律は、桜坂グループ本社ビルの前に立っていた。
そびえ立つ高層ビル。磨き上げられたガラスの外壁に自分の姿が映り、華は思わず足をすくませる。
「……ここに来るの、久しぶりです」
声は小さく、指先は緊張で冷たかった。
そんな華の横で、律は変わらぬ表情でビルを見上げる。
「大丈夫です。俺が隣にいますから」
その一言に、華の胸の奥で固く結ばれていた不安が少しずつほどけていった。
二人はエントランスをくぐり、会長室へと続く長い廊下を歩き出す。
重厚な扉の前に立った瞬間、華の心臓は激しく鼓動した。
(……逃げない。今度こそ、ちゃんと伝える)
律がそっと華の背に手を添え、軽く頷いた。
ノックの音が、静かな廊下に響いた。