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こういうのだいっっっっすきです、😌😌
定時を過ぎた帰宅ラッシュの駅前、時計台の下でほうっと白く息を吐きながらスタジャンのポケットに両手を突っ込んだ。
俺と同じようにソワソワと誰かを待っているであろう女の子たちが数人目に入る。寒いのに短いスカートを履いている子ばかりで、こんな時まで女の子はおしゃれをして大変だなぁとつくづく思う。
しかしそれも束の間。鼻をほんのり赤くして待っていた女の子たちに男の子のお迎えが次々とやってくる。ひとつのポケットで繋ぎあった手を暖めていたり、顔を合わせるや否や男の子にすっぽりと包み込まれていたり。それはそれは、見ているこっちが恥ずかしくなってくるほどで。
そして気がついたら、ぽつんとひとり、俺だけがここに残っていた。
仕事長引いてんのかなとか、渋滞に巻き込まれたんかなとか色々考えて連絡が来ていないかとスマホでメッセージを確認しようとすると、
『もうちょいで着く!』
とちょうど通知が来ていた。
この一言で今までの寒さも心細さもどうでも良くなって口角が上がってしまう俺はなんて単純なんだろう。
スマホをしまって、まだかなまだかな、と少しキョロキョロしてみる。
そんな時、急に冷たい風がびゅん、と吹いた。
「…っくしゅ、」
思わずくしゃみをして身震いしていたら、頬に温かい何かが触れる感触。
「ごめん、遅くなった」
お詫び、と渡されたそれの正体は某カフェでテイクアウトしたであろうホットコーヒー。
「ん、許す」
「…鼻真っ赤。どっか入っててよかったのに」
「だってなんか、外で待ちたい気分だったの」
「ったくもう、ほれ、首」
「んぇ、」
「……よし、おっけい。」
「あり、がと。でも勇斗が…」
「俺は別に大丈夫、仁人はすぐ風邪引くやん」
「う…、返す言葉もございません…」
「ふはっ、だろ」
「…なあ、勇斗」
「ん?なに」
「…手、…つなぎたい…かも」
「かも、なら繋いでやんないけど?」
「……つなぎたいです、」
「よくできましたぁ」
「…なんか今日の勇斗、……」
「…え、なに、なんつったの今」
「っ…ムカつく!もう腹減った!はよ行くぞ!」
「ははっ、はいはいそんな引っ張んなって」
寒がってる俺に自分のマフラー巻いてくれたり、手繋ぎたいって言わせてくる割に俺よりも強い力で握ってきたり、おまけに俺に向ける視線は蕩けるほど優しくて、なんか、なんか…
かっこいい、とか、本人には絶対言ってやらない。