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東京に行った澪とは、電話や手紙でやり取りは続いていた。
でも、忙しさのせいか、最近は返事が遅くなることも増えた。
「悠斗……ごめん、最近忙しくて」
短いメッセージに、胸がぎゅっとなる。
手紙や電話では、もう昔みたいに笑い合えない。
距離は、想いよりずっと早く広がっていく気がした。
俺は決めた――
夏休み、絶対に会いに行こう、と。
真夏の太陽が照りつけるある日、俺は新幹線で東京へ向かった。
久しぶりの都会に少し圧倒されながらも、心は澪に一直線だった。
駅の改札を抜け、待ち合わせのカフェへ急ぐと――
「悠斗……!」
その声で振り返ると、そこに澪が立っていた。
少し大人っぽくなったけど、やっぱり同じ瞳。
でも、目には涙が滲んでいた。
「……来てくれたんだね」
「もちろん。澪に会うためなら、どこだって!」
二人は立ったまま、ただ見つめ合った。
言葉は要らなかった。距離と時間を越えて、心はつながっていた。
「ちょっと待ってて」
澪はカフェを出て、古いピアノがある小さな音楽室へ案内してくれた。
ここで彼女は、東京での演奏会に向けて練習していたのだ。
「悠斗……聞いて」
澪は座り、鍵盤に指を落とす。
その瞬間、あの日の旧校舎のピアノの音色が戻ってきた。
胸が熱くなり、目から涙が止まらない。
「ずっと、これを聞かせたかったんだ」
音楽に込められた思いが、すべて心に届く。
笑顔の中の切なさ、強さ、そして孤独――すべてを抱きしめたくなった。
演奏が終わった瞬間、俺は澪の手を握った。
「澪……俺、言わなきゃダメだ。
遠くにいても、毎日想ってた。
君のこと、ずっと……好きだ!」
澪の瞳が大きく開かれ、そして涙が溢れる。
「悠斗……私も……ずっと、ずっと好きだった」
二人は抱き合い、溢れる涙が止まらなかった。
遠く離れても、想いは消えなかった。
距離も時間も、二人の気持ちには意味を持たなかった。
その日、海沿いの駅に二人は立ち、未来を見つめた。
夏の風が強く吹き、桜の花びらはもう散ったけれど、
心には新しい花が咲いた。
「これからも、ずっと一緒にいよう」
「うん、絶対に」
遠距離という壁はまだある。
でも、泣いた夏の日の約束が、二人をつなぎ続ける。
――青春は、切なくても、愛しい。
そして、物語はまだ続く。