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夢を見ていた。どこか懐かしくどこか優しい。そんな、夢。
《とある日の想い出》
学校を早退したある日、その日は雨が忌々しく降っていた。そんな中、一人雨の中に佇む少女がいた。少女は目に涙を浮かべ今にも決壊しそうになっていた。
「きみ、そこで何してるの?」
「……」
「傘でもささないと風邪ひくよ?」
「……」
「はぁ…取り敢えず、コレ。」
そう言って私は傘を彼女に差し出した。彼女は少し戸惑いつつ、傘を受け取ると小さく
「ありがとうございます…」
と呟いた。その時だけ煩かった雨の音は一瞬、止んだかのようにハッキリと聞こえた。
《2年後》
2年の、歳月を経て私には一人の彼女ができた。その娘はどこか懐かしい雰囲気を醸し出していた。どこかで会ったことのあるような、そんな感覚。でもそんなことはさほど気にしなかった。ある日、いきなり
「そういえば、コレ。返してなかったね。」
「え…?」
彼女の手には2年前のあの日、少女に渡したはずの傘があった。
「な、なんでそれを?」
「流石に忘れちゃったかな?2年前、あなたが雨が煩く降る日に傘をささずに立っていた私にこの傘を渡してくれたこと。」
「でも、なんで今更…」
「私ね、あの日からあなたを探してたの。この恩を返したくて。」
「恩って…大袈裟だよ。でも、ありがとう。」
彼女は終始にこやかだったが、その瞳の奥は得体の知れないドロドロな何かが見えていた。