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その日の俺はゴア王国を1人で歩いていた。
理由としては……ただ単純に買い物だ。とはいえ買うのは服だとか食料だとかではない。必要ないかもしれないが、でもほら、備えあれば患いなしとかいうだろ?
俺が今いるのは骨董屋。いろんなところをずーっと回って歩いているが全然いいのが見つからなんだ。ここらで見つかってほしいんだけどな。骨董屋の店内で俺は棚に置かれた商品を見て回る。どれもこれも古そうなものばかりで価値なんて全くわからない。
「何をお探しだい?」
店主に声を掛けられ、俺は立ち止まる。
「あぁ、何か顔を隠せるもの……仮面のようなものはないか?」
俺がそう聞くと、彼は顎髭を撫でながら考え込む。そして思いついたかのように声を上げた。
彼の案内で奥の部屋へと入ると、そこには様々な種類の仮面があった。目元だけ隠れるものもあれば、顔のすべてを覆うようなものまで様々ある。この中からひとつか、どれにするかな……。
俺が悩んでいると、店主が俺の肩を軽く叩く。振り返ると、彼が手に持っていたのは赤い狐面。口を大きく開けて笑っている面。こういう面って白が無難じゃないか? 白い狐は神様の使いだとかなんとかで……。ああでも、そうなるとこの赤い狐は神の使いじゃないってことになるよな。
「それならまぁ……多少血生臭いことやっても大丈夫そうだな」
俺がそう呟くと、店主が目を丸くして驚いている。俺は苦笑いを浮かべ、それから店主の手にある狐面を受け取った。
「ありがとう、これ貰うよ。いくらだ?」
「500ベリーでございます」
「……安くね? 手に取ってわかったんだけど、これ結構丈夫なやつじゃん。そんな額でいいのか……?」
これは適当な材料で作られたんじゃない。木製……張り子、だったかな。和紙を何重にも貼って、乾かして、貼って……。狐の表情も、模様も、全て丁寧に作られている。
「……少々曰く付きでして……」
「だろうなぁ。どんなだ? これの持ち主になるんだ。聞かせてほしい」
「はい……。この狐面を作った者は女で、どこかの海賊船に乗っていたらしいです。どこの船か、女の名前がなんなのかは、すみません。私にもわからず……」
「いいよ、そんくらいは。それで、続きは?」
「…彼女はどんな時でもこの面をつけ、素顔を見せなかったと聞いています。ですがある日、この狐面だけを残して、彼女は忽然と姿を消したのです」
「それだけか?」
店主はふるふると首を横に振った。
「彼女がいなくなってからもこの狐面はいろんな人の手に渡りました。しかし、その誰もが皆……突然消えてしまうんです。まるで神隠しにあったかのように」
「は~……まるで食ってるみたいだな」
手元にある狐の面を見つめながら、俺はぽつりとそう零す。
「……いかがしますか?」
「ん? さっき言ったろ。貰うよ。500ベリーだったな?」
俺は店主に500ベリーを支払い、店の扉に手をかける。
「あ、聞くの忘れてた。この狐面、名前はあんの?」
「えぇ。その狐面の名は〝緋の狐舞〟-あけのこぶ-でございます」
「へえ、いい名前だな。ありがとう、店主さん。いい面紹介してもらっちゃって。それじゃあ」
俺はそう言って店を後にした。
外に出て俺は早速狐の面をつけてみる。赤い面とは別に、浅葱色の紐が括り付けられた狐のお面。思っていたよりも視界は広い。うんうん、めちゃめちゃいい買い物したな、俺。
顔バレ防止の面も買ったし、これで将来俺がこのままの顔でお尋ね者になることはなさそうだな。……いや、お尋ね者になる気はないんだが。原作に首突っ込んだらもしかしたらもしかするからな……。
「ついでに飯食ってから帰るか」
俺は近くにあるレストランに入って昼食をとることにした。