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都庁の最上階から放たれた爆炎が、夜空を真っ赤に染め上げた。
瓦礫と共に地上数十メートルへと放り出された俺の視界を、激しい風が叩く。
死を覚悟したその瞬間、強烈な衝撃が身体を突き抜けた。
「……捕まえたぞ、兄貴ッ!!」
山城の声だった。
奴は源蔵と共に、清掃用のゴンドラを強引に操作し、落下する俺を中空で受け止めたのだ。
金属の床に叩きつけられた衝撃で肋骨が悲鳴を上げるが、生きている実感が全身を駆け巡る。
「…馬鹿野郎、間に合いすぎだ……」
「へへ、新宿の野良犬は鼻が利くんでさあ!」
山城が鼻を啜りながら笑う。
見上げれば、崩れゆく都庁の頂から、影山という男の執念が黒煙となって消えていくのが見えた。
◆◇◆◇
数時間後───
新宿の街には、夜明けの光が差し込み始めていた。
地上の包囲網は、志摩がリークした「組織の裏金リスト」によって混乱に陥り、公安の車両は次々と撤退を開始している。
洗脳から解かれた住人たちは、混乱の中で互いの無事を確認し合い
街には再び人間の、不揃いで力強い喧騒が戻りつつあった。
「和貴、見てみろ。…街が、生きてやがる」
源蔵が、汚れきった手でタバコを吹かしながら街を見下ろす。
だが、俺の心は晴れなかった。
影山が最期に遺した言葉――『国全体の再起動』というフレーズが、脳裏にこびりついて離れない。
「志摩……影山が言っていたことは本当か?」
合流した志摩は、いつになく真剣な表情で端末を叩いていた。
「……ああ。影山の死と共に、組織のサーバーから『真の計画書』の断片が送られてきた」
「黒嵜、俺たちが戦っていた『黒い百合』は、巨大な計画のほんの一部……『執行部』に過ぎなかったんだ」
志摩が提示した画面には、新宿だけではなく
東京、そして日本全土の主要都市が、ある「巨大な円」の中にプロットされていた。
「この国を一度、デジタルの管理下で完全に更地にする。新宿はそのための『プロトタイプ(実験場)』だった。…本番は、あと80日後に全国一斉に始まる」
100日後の結末。
それは新宿の消滅ではなく、この国の「意志」そのものを組織が買い叩き、リセットすること。
「……上等じゃねえか。新宿を救えたなら、次は日本を救うだけだ」
俺は傷だらけの身体を起こし、朝日を浴びる新宿の街を睨みつけた。
残された時間は、あと79日。
新宿の野良犬たちの戦いは、ついに国の中枢へと牙を剥く。