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#現代
ぽたお
198
猫塚ルイ

9,478
122
それから一週間、マサシは学校に来ていない。
なんでだろう。
僕、なんかひどいことしたかな。でも思い当たることはない。だって僕、マサシに優しくしてるし。
栞里と一緒に教室へ向かう途中、職員室の前がざわざわしていた。
「一年の山田君が……遺体で見つかったらしいよ」
誰かが小声で言った。
栞里は立ち止まって、ぎゅっと僕の袖を掴んだ。
「また……。うちの学校の生徒ばかり……。」
僕は栞里の顔を覗き込んで、できるだけ明るく言った。
「栞里。笑って元気出して!」
栞里はゆっくり息を吸って、無理に笑った。
「……そうね。前に進まないとね」
でもその笑顔は、なんだか僕の知ってる栞里の笑顔じゃなかった。
授業中、僕はずっとマサシのことを考えていた。
「僕は正直、それよりマサシの方が心配だよ」
そう言ったら、栞里は少しだけ眉をひそめた。
「多分大丈夫よ」
その言い方が、なんだか冷たかった。マサシのことになると、栞里はいつもこうだ。
放課後。
僕は栞里にバレないように、こっそりとマサシの家へ向かうことにした。
「ノートとか渡しに行こうかな。なんかドラマみたいに!」
そう言ったら、栞里は首をかしげた。
「うーん……マサシ頭いいから、いらないんじゃない?」
そっか。でも僕は渡したい。だってマサシは僕の友達第二号だし。嫌われたくない。
だからこっそり行く。
部長には
「僕がトイレにこもってるって言っておいてください!」
って頼んでおいた。
完璧。僕は歩きながら、思わず声に出してしまった。
「僕って天才なのかな!」
僕はマサシの家の前に立った。
いつもは栞里が一緒だったから、一人だとなんだか心臓がドキドキする。でも、友達のためだ。勇気を出さないと。
玄関の前に立って、思い切りチャイムを押した。
「はぁー! どうだ!」
ピーンポーン。
……指がすごく痛い。ちょっと強すぎたのかな。でも、気持ちは伝わったはずだ。
しばらくすると、マサシのお母さんが顔を出した。
「あっ! お母様! ご無沙汰しております。
マサシの友人の翔太であります!」
僕が胸を張ると、お母さんはふふっと笑った。
「翔太君。今日はどうしたの?」
「マサシ、まだ落ち込んでますか?」
「そうねぇ……あれから一週間、ご飯とトイレの時だけ部屋から出てきて、それ以外はずっと部屋にこもってるの。あっ、でも……たまに深夜に一人で外に出てるみたい。外の空気が吸いたいんでしょうね」
「なるほど、これは困りましたね!」
「翔太君、ごめんなさいね。わざわざ来てくれたのに」
「いえいえ! 僕は友達ですから!」
そう言った時、二階からギシッと足音がした。
マサシだ。
僕は思わず笑顔になった。部屋から出てきてくれたんだ!
「マサシ! どうしたの!?」
お母さんが驚いた声を出す。
マサシは階段の途中で立ち止まり、僕を見た。
その目は……なんだか、前よりずっと暗かった。
「……ごめん。心配かけて。少し翔太と外に出て話したい」
「うん! 気をつけてね!」
お母さんは嬉しそうに言った。
マサシは僕の方を向いて、小さくうなずいた。
「翔太、公園で話すか」
「うん!! やったやった!」
僕は嬉しくて、思わずスキップしそうになった。
公園に着いた。夕方の光がオレンジ色で、なんだか映画みたいだった。
でも、マサシはずっと黙ったままだった。
歩いている間、一度も僕の方を見なかった。
いつもみたいに「おはよー!」って笑ってくれない。大丈夫かな……?
ベンチに座り、僕はリュックからノートを取り出した。
「マサシ! ノート!いない間の授業、ちゃんとまとめといた!」
マサシは受け取って、小さく言った。
「……サンキューな」
なんだろう。嬉しくなさそうだ。でも僕は気にせず、本題を聞いた。
「話したいことって?」
マサシは少しだけ空を見て、深く息を吐いた。
「あぁ、それだな。……実は俺は栞里のことが好きなんだ」
「おお! 僕も好きだよ?優しいよね〜。僕の友達第一号!」
「違う違う。友達としてじゃなくて……異性としてだ」
マサシ僕の目を見た。
「お前に分かりやすく言うなら……結婚したいってことだ」
あっ、そういうことか!これはあの有名な青春。アオハル。くぅ〜甘酢っぺぇ!
「すごい! 応援する!栞里と上手くいけるようにサポートする!」
マサシは笑わなかった。
「あぁ……そうか。でも多分無理だろうな。振られたしな」
「ええ! まさか告白してたの!?いつ?」
「一年の頃の春にな」
「はっ!僕たちがまだ友達じゃない頃だ!」
僕は本気で思った。マサシと栞里が幸せにくっついてほしい。
「もう一度チャレンジだ!僕に何かできることある!?何でもする!」
マサシは黙って、僕の顔をじっと見た。
その目は、なんだか泣きそうで、でも怒ってるみたいで、でも諦めてるみたいで……よく分からなかった。
「……何でもだな?」
「うん!」
マサシはゆっくり口を開いた。
「じゃあ……翔太……お前、頼むから消えてくれ」
風の音だけが聞こえた。僕は意味が分からなくて、ただ笑った。
「え? どこに?」
コメント
1件
ぽたおさん、第3話読ませていただきました…!最後の「消えてくれ」には本当に息を呑みました。それまでの翔太くんの無邪気な明るさと、マサシの暗い眼差しの対比が切なくて。しかも「え?どこに?」って返す翔太くんの純粋さがもう…胸がギュッと締め付けられました。栞里さんの冷たい反応も気になります。続きが気になって仕方ないです!