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夏休みのある日。
商店街では、小学生から中学生まで参加できる**「夏のスタンプラリー大会」**が開催されていた。
「ナオトー!!スタンプってさ、全部集めると
“金メダル”もらえるんだって!」
「いや、ただの参加賞の缶バッジって書いてあるけど……」
「ももは金がいいのっ!!」
ーーそうして始まった、
月島もも VS商店街全域の壮絶な戦い。
「次のスタンプは……魚屋さんだっ!」
ももは走る。
額からは汗がダラダラ、手にはグチャグチャになった台紙、
そしてーー
「ひいいいっ、干物くっさあああああ!!!」
魚屋の前で思わず悲鳴。
干物の匂いにノックアウトされて倒れるもも。
「ちょ、おまっ……それ、魚屋の前で言うことかよ!」
直人が慌てて引きずり起こす。
「もも、魚アレルギーかも……たぶん気持ち的な意味で…….」
次のポイントは八百屋。
「スイカ割りチャレンジでスタンプ押します!」
と書かれた看板を読み、ももは自満々で棒を構える。
「任せてナオト!もも、スイカにはめっぽう強いの!!」
ズバッ!!!
「うおっ!?痛ってぇ!俺の足じゃねぇか!!」
「え!?スイカが喋った!?」
「ちげぇよ、俺だ!!」
その後も、パン屋で試食に夢中になりすぎてスタンプもらい忘れたり、
文房具屋で匂い付き消しゴムを全部嗅ぎすぎて気分悪くなったり、
もものスタンプラリーは大荒れ。
でも最終的にはーー
「ふふふ、全部あつめた〜!」
台紙はシワシワ、顔もボロボロ、でも本人は満面の笑み。
「なあ……これ、夏休みの宿題より疲れてない?」
「ナオトー、言っていい?」
「ん?」
「もも、スタンプラリーに向いてないと思う……」
「気づくの遅いよ!!」
そんな感じで、夏の一日が、またドタバタで終わった。
スタンプを全て集め終えたももは、商店街の事務所で参加賞の缶バッジを受け取った。
「じゃーーーんっ!見てナオト!これが”ももの金メダル”!」
「いや、だからそれ…..ただの缶バッジって何度言えば……」
直人がツッコむ間もなく、ももはバッジを胸に貼り付け、誇らしげに背筋を伸ばす。
「この日、この瞬間、ももは伝説になった!!」
「どこのだよ……」
その帰り道。
夏の夕暮れ、まだ明るい空には入道雲がのんびり浮かんでいた。
「ねえ、ナオト」
「ん?」
「夏休みって、まだいっぱいあるよね」
「まあ、あと3週間くらい?」
「もも、この夏で大人になれる気がするんだ……」
「それ、朝からスタンプ追いかけてたやつが言うセリフじゃないと思う」
「うわーんっ、またバカにしたー!もも、バカじゃないもん!!」
「うん、そうだったね。『スタンプの女神』だったよな」
「そう!ももは”スタンプの女神”!!でもさ、願いは1個までね!」
「じゃあ俺は”今日の記憶を消してほしい”って……」
「それ却下ーーー!!!」