テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
蜂蜜きな子
16
#犬
ここと🌹🫶 @低浮
203
みみ
49
16章目行きます
「あ、司、待ちなさい……。!」
寧々ちゃんが叫ぶけれど、司は私を抱きしめたままケラケラと笑っている。
その混沌とした状況の中、床に落ちた「柚木普・泡沫路業』とかれた黒い本が、まるで2人の霊力に導かれるように、バサバサと自らページをめくり始めた。
本から溢れ出したい過去の記憶の光が、書庫全体を包み込んでいく。
「ニーっ、これは、過去の、映像…..?」
離先輩が目を細め、光くんや霊々ちゃんも光の中に浮かび上がる光景を息を呑んで見つめた。そこには、生きていた頃の、まだ幼い普と露葉ちゃんの姿が映し出されていた。
◆
「あまね、また怪我してる……。どうしたの、その包帯…..」本の中に映る、生前の葉ちゃんが、泣きそうな顔で普の傷だらけの腕に触れていた。
薄青い髪を揺らし、黒と白のオッドアイを潤ませて、今にも消えてしまいそうなほど儚く佇む過去の露葉ちゃん。
『….なんでもないよ、露葉。大丈夫だから、泣かないで」
普は無理に笑ってみせるけれど、その首元や腕には痛々しい包帯が巻かれている。
音は露葉ちゃんの細い手首一ーあの月のブレスレットが巻かれた場所を、ぎゅっと、壊れ物を扱うように愛おしそうに握りしめた。
『ねえ、露葉。僕はね、たとえ自分がどうなったっていい。君が明日も、明後日も、ずっと僕のそばで笑っててくれれば、それだけでいいんだ……」
それは、未来の自分の命と引き換えにしてでも、露菜ちゃんというい存在をこの世界に繋ぎ止めようとする、普のあまりにも重くて切ない、生前の「願い」だった。
◆
「……あまね…….」
現在の花子くんが、過去の自分の声を聴いて、耳まで真っ赤に染めながら帽子を深く被り直した。
「見ないでって言ったのに……」と消え入るような声で呟く花子くんの色の瞳は、激しい差恥と、今でも変わらない露葉ちゃんへの執着でうるんでいる。
「な、なんだよこれ……。花子の奴、生前の時から露葉さんにこんな…..こんな激重な愛をぶつけてたのかよ……つ!」
光くんが顔を真っ赤にして、ジェラシーで霊刀を握る手をガタガタと震わせている。「まあ、なんて一途で切ないの…….!でも花子くん、昔から露葉ちゃんへの独占欲が凄かったのね!」
寧々ちゃんが両手を頬に当てて大興奮し、葵ちゃんも「お伽話の騎士様みたいね」と目を輝かせている。
「おい、七番。お前、生前の時から俺の目の届かないところで、こんな大層な約束を泡沫と交わしてやがったのか」
土籠先生がパイプを噛み締めながら、あからさまに不機嫌な目で花子くんを睨みつけた。
「俺の知らない泡沫の過去が、こんなに載ってやがるとはな…..」と、大人の男としての激しい嫉妬を滲ませ、私を司の腕から強引に引き剥がして自分の背中に隠し直す。
「あはは!あまねのページは退屈だね!ねあねあ、次は俺と露葉のページを見ようよ!俺が露業をベッドに押し倒してさーー」
「司、それ以上喋ったらマジで消滅させるよ?」
花子くんが過去最高に冷たい、ガチの殺気を宿した目で包丁を構え、司の言葉を遮った。
輝先輩も「なるほど、これ以上悪霊どもに露葉ちゃんを任せておくのは危険ですね。今すぐ僕の家で保護します」と笑顔の背後に凄まじい雷を背負っている。
花子くんの過去が暴かれたことで、男たちの露葉ちゃんへの独占欲とヤキモチがさらに限界突破し、16時の書庫は崩壊寸前の大騒ぎになっていくーー。
コメント
1件
第16話、読み終わりました!黒い本が霊力に導かれて自らページをめくっていく仕掛け、すごく好きです。あの「過去の記憶の映像」が浮かび上がる表現、幻想的で美しかった。 特に胸に来たのは、生前の普くんが露葉ちゃんに「君が笑っててくれればそれでいい」って言う場面。未来の自分の命と引き換えにしても守りたいっていう、重くて切ない願いがひしひしと伝わってきました。花子くんがその過去を暴露されて耳まで真っ赤にして帽子を被り直す姿、可愛いやら切ないやら……。男たち全員のヤキモチが爆発してカオスになってるのも笑いました。続き、どうなるんだろう……!