テラーノベル
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自衛は各々でお願いします。私は例のグッズ買いたかったんですけど、戦争に負けました。再販もありですけど、金なしお。
コレは三話ほどで終わらせたいです。私の脳の発想力次第。
お望みのまま聞かせてあげるNaughty Record
「…貴方の手で、貴方だけの音を奏でてみませんか?」
ゲイバーのマスターに売り文句と共に教えてもらった風俗レコード店『Naughty Record』。そのお店を使えるのは合言葉を知っている客のみ、所謂穴場だ。
俺はなぜか長老故、数百年分の溜まりに溜まった財産は数人の人の一生を満足に養えるほどで。風俗店は少し値が張るらしいが、金と顔だけが取り柄の俺に丁度良いもの。自分で言うことではないが…まぁ俺って可愛いし?
カランコロン。
店内に入るとまるで喫茶店で聞くような鈴の音が店内に響いた。軽く深呼吸をしてみると老舗店独特のほろ苦く落ち着く匂いが鼻腔を蕩かす。一見風俗店には思えないダイナー調のインテリアとチカチカ…と眩しく店内を照らすネオンの装飾。だが、視界の端々に見える自慰を行うそういったアダルト系の商品がまるで一種のレコード用の道具のように見えるといった錯覚が起きている。
店員さんがドタドタとよろけながら店奥から出て来た。
この店の店員さんはキャストも兼ねているマルチタスク経営だと人伝に聞いた。風俗と言えばネコかタチか。どんな男の娘、又は益荒雄が来たのかドギマギしていると店員さんの顔は見えなかった。何故なら連なる段ボールを持っていたから。一先ずは安心した。
連なる段ボールの影からはみ出るフワリと揺れる青みがかった銀の髪。ハーフアップで結んである髪がぴょこぴょこんっと宙を舞う。実際ハーフアップで髪のアウトサイドは銀で隠されていてもインナーカラーとして深海みたいな鮮やかな青が入っている。
服も青で揃えてるし、好きなのかな青色。
そんな思考をグルグルと掻き巡らせていた数秒後。相変わらず先程からヨロヨロ、グラグラ…と右から左、また右へとあっちこっち。このまましておくのもなんだしな…と上半分を持ってみる。
体つきからして華奢だから男の娘か…?まあ筋骨隆々な益荒雄よりかはマシかななんて思っていた。
パチッと夜の淡い藍色の水面とまん丸の月と視線が合った。
脳天から爪先の末梢神経、端の端の至るまでビリビリ…ッと雷に打たれる衝撃と似たものが流れた。身体が作り変えられるようにブワッと熱を持って、一瞬にして細胞がディスコのように沸き上がる。
魔性という言葉がなぜあるのか忘れていた。モテる、惹き付ける、視線を集める、いや生温い。
支配する。と表現するのが適当である。
本能がこの人だと叫んだ。
俺達の周りに花弁が舞うように世界が鮮やかに見えた。満月の瞳に思考も行動も何もかも吸い込まれて、何も考えられない。時間が止まってしまったのだろうか。この店員さんも動いてない。ほんとに止まっちゃった?…でも良いやずっと見ていられる。
この綺麗な月を俺はただ眺めることしか出来なかった。
ネオンのライトに照らされてボヤボヤと視界はくすんでいるのにこの店員さんは髪の毛一本一本はっきり見える。凛々しく、どこか幼さを感じさせる整った童顔。日焼けとは無縁の青磁器みたいな白い肌、少し血色が悪く隈もある。睫毛はパチパチと瞬きをする度、扇みたいにフワフワと揺れた。少し吊りがちの鋭い目、への字口は猫のようだ、でも格好良いというより可愛いと思った。
「らっしゃーせー…」
店員さんの声によりハッと体が動き始める。その店員さんの耳を擽るようなこそばゆい低音ボイスで。朝起きて最初に聞くのはこの声が良いな、すぐに起きれそうで。一日の最後に聞くのもこの声が良い。心地良い子守唄になってぐっすりと眠れそう。
俺は、この男に一目惚れをした。
恋心という感情に気付くと急に緊張しだして手に汗を握った。キョドキョドとした俺の不安定な挙動を怪訝そうに睨まれてしまった。なにか弁明をしなければと思っているのに俺にはぁ…ぅ、とくぐもった変な声しか出なかった。こんな時に…!と自分を責めていても、店員さんに一層眉間にしわが寄っていくばかり。
そこで救世主か、という人が現れた。実際その人の容姿がまるで天使のようであった。この店員さんよりかは劣るけど…。
「なになにお客さん?」
「あ、かなえさん!そうっす、お客さんみたい」
先輩なのだろう、さん付け…。先ほどのいらっしゃいませのテノールボイスとは少し違う、甘えた高めの声。可愛いと思っていた途端、あの月から突然覗かれ不意にびくっと体が跳ねた。
俺はさっきから二人へ視線を交互させるだけ、店員さんの方が俺の事を不思議に思っているだろう。完全に場違いだ俺。
「…っあ!あ、あの……っ”貴方はどんな音を奏でますか”…!」
「え、あ…え?…俺?」
合言葉を言うと店員さんは二人とも目を丸にした。二人とも信じられないといった顔をしていたから、大袈裟に首をブンブンとヘドバンのように勢いよく縦に振る。
「あらあら、お客さん神秘眼をお持ちだね」
店員さんはじゃあ僕はこれで、と俺達を二人きりにしてくれるように催促してくれた。まるで天使みたいじゃなくてキューピッドだ。
そしてかなえさんという店員さんはパタパタと駆けて行った。店奥に戻るとついでに俺と店員さんが持っていた段ボールをひょいと軽々持ち上げて。
店員さんの方に再び目をやると犬が落ち込むような感じにしゅんとしてしまっていた。見えぬはずの耳と尻尾が見えてる気がする。
ちなみにこの店にはゲイじゃない人、レコード目当ての人が迷い込んだ時のための合言葉がある。それは『貴方はどんな音を奏でますか?』と。風俗店として使いたい時、情事を行いたいと思った店員さんにその合言葉を言うようだ。
レコードと掛けた合言葉。初めて聞いたとき洒落てると思ったっけか。
それにしてもナギって言うんだ。胸元に安全ピンで留めている新品そうなプラスチックのネームプレートがテラテラと輝いている。
勿論、キャストだから仮名だろうけど。どう呼ぼうか。ナギ、ナギさん?ナギくん。急に呼び捨てって距離近すぎか?
俺が呼び方を悩んでいる間、ナギくんは一度店の奥に引っ込み、直ぐに中から一枚の青色のCDを持って戻ってきた。
「ん、じゃ、コレ。渡しとく」
「CD…?」
「え、初めてか?あー、じゃ説明すんね。……このCDは俺だと思って?そんでお前がこのCDをレンタルする。だから俺がレンタルされるってこと。レンタルされてる間、お前は一度だけ俺を呼び出せる。おーけー?」
「…は…ぃ、おっけーです」
「返却期限はそうだな、五日後とかどう?」
「え、結構ある…。そんなに良いんですか?」
「そんなって…ねぇ?」
そして俺の身なりを一瞥した。なんだろう。されるがままになっていたがナギくんにお前なんか童貞そうだし…心の準備的な?と気遣いされた。童貞なのは認めるが少し余計だ。
だけどパートナーが出来ないからゲイバーのオーナーの縋ったのも事実。何も言い返せず。ぐ…と顔をしかめてみるとナギくんはガハハと豪快に笑った。
ひーひーと笑いの余韻が続く中、んじゃ着いてきてとナギくんは服の袖を引っ張った。
その少し変態のようないや変態なのだが…ワイドパンツである分、ボディラインが出ないのだがお尻の部分だけは例外で下着のシャツやら紐が浮き出てきた。一歩一歩と進んでいく度、少しムチ…としたお尻に紐の結び目ような…とても知りたいような、知りたくないようなものが見えた。グリンと90度顔を回転させる。なんとか耐えたぞ俺、ふぅ……Tバッグ…か。
…ピラ、ピラ、ピラリ。なんとズボンの上の方から一本の白い紐が出てきているではないか。
ズボンの紐な訳あるまいし、パンツ…。ビッチそうなのに清楚な白なんだ。少しだけ、ほんの少しだけ下半身がズクリと重く感じた。
そのTバッグに気を取られていると気付けばナギくんはレジのようなカウンターに着いていた。そこで脳内で自分に平手打ちしてその変態じみた思考を奥へ奥へとしまい込む。
引っ張るのをやめたナギくんは俺をジッと見た。瞳孔を細めさせて見つめられる。
もしかして、なんか、試練だったりする…?ここでなにかまた合言葉があるのだろうか。え、俺教えられてないんだけど!
ナギくんはジッと俺の様子を伺っている。すると落ち着かない俺の様子にナギくんは「くふ」と口元を綻ばせ笑った。
小悪魔的な笑み、コレ…ナギくんのわざと、悪戯だ。
でももし何かあるのだとしたら俺はナギくんはレンタル出来ないの?と俺には焦りが顕著に滲み出てきた。
そうしているとナギくんの手がゆらりと俺の顔に近づけられる。唐突で目をギュッとつむると耳にスリと手をかけられ、耳朶をふにふにと揉まれる。林檎のように真っ赤に熱くなる耳を見て、「かぁい」と小さな声、だけど俺に届く声で。流れるように首、首筋に爪でつうと撫でて喉仏に到着した。そしてナギくんは俺に追い撃ちをかけるように耳元であれ、もしかしてレンタルしてくんねぇの?…俺かなしいなと誘媚に囁いた。
温い吐息が掛かって耳がこそばゆい。喉の触られた所がジワジワと熱くなっていく感覚がした。目を恐る恐る開けてみると、ピリッとした刺激的な甘い上目遣い、うるうると光って…月が揺れている。
月からの視線もジリジリと身を焦がした。爪は立てられてないものにぐわりと心臓に食い込んでいる。
典型的なえっちなことではないのに、どことなくえっちなことを彷彿とさせる。
「え、します!絶対借ります!!えと…、でも、その、どうやって……」
「…ははっ必死すぎ。そうだよな、初めてだもんな。試してわりぃ笑」
俺を揶うようにプッと吹き出して、ナギくんは再びカウンターのレジに回った。その間もムチムチとしたお尻のせいで浮き出るパンツの形。尻尾のようにヒラヒラと揺らめく紐。もう遅いのに意識しちゃって。
面白い、豪快、優しい、エロい、猫みたい。今のところの感想だった。初対面の人と二人きりになるのは気まずくて苦手なのだが、なんだか…ナギくんといると緊張もしないし警戒もしない。
最初からナギくんが有無を言わさぬタメ口を使ったからあまり言葉を交わぬ内に自然にすんなりと。話してるのがどことなく心地良い。
俺がこういうお店が初めてなばっかりにどんな行動を取っても、豪快に笑い飛ばしてくれる。癖になる。
カランカランと背後から心地好い鈴の音が店内に広がった。パッと後ろナギくんが俺の後ろを嬉しそうに見たから吊られて俺も見てみる。
まず最初に赤色の緩く結んだ髪が目に入った。少しボサボサな髪、着崩した服の隙間から咲き乱れる紅いキスマーク。片手にある一枚の赤色のレコード。ほんのりと漂ったイカのような性行為後の特有の匂い。明らかにさっきまでシてましたと言わんばかりにその人はふあぁお゙ぅ゙、とガラガラの欠伸を一つ。パチ、パチパチ。数回瞬きをすると俺とナギくんはその人の瞳に捉えられた。
「あれ、なんか賑やかだと思ったらナギじゃん!」
「ロアさんっ…!」
「ふぅん、コイツがナギを?お前いい眼してんね…てか結構な色男……」
あらあら、にまにま。ロアさんという人は俺とナギくんへ視線を往復させる。ロアさんを見た瞬間、ナギくんのテンションがぶち上がった。尻尾がブンブンと弧を描いている。
多分さっきのかなえさんと同じでナギくんの先輩なんだろう。ナギくんが食いつくようにキラキラとした目でロアさんに話しかける。俺は会話に混ざれずポツリと棒立ちをしていた。…少し気に食わない。
ナギくんが突然くね、と腰をしならせた。
俺としたことが二人が話していた話題を全く聞いておらず何も文脈が分からない、やめて、そのお尻。その行動が俺を酷く魅惑させた。「絶対逃がすなよ!このエロいケツで!」と、ロアさんがナギくんのお尻をペシリと優しく叩く。ボディタッチ多くて妬きそう。彼氏でもないのに、数分前に初めて会ったのに。でもナギくんが嬉しそうだからいっか。
「あ、てか客放置じゃん。ヘイ!そこの色男くん、メニュー渡すからどのプランが良いか選んで下さーい」
そのメニュー表には、レンタルという文字の下にもし客側がレンタル期間を指定する場合日数に応じて比例する値段の詳細。
キャスト側がレンタル期間を指定する場合、又はキャスト側と客側のレンタル期間の合意による日数によっての料金は掛からないとのこと。
それと店についての説明、キャスト一人一人の自己紹介文とNG行為が書かれている。簡単に纏めるとレンタル期間は常識の範囲内で物事を行うこと(ストーカー行為、日常での束縛行為、等)。キャスト側のNGも理解して、絶対にしないこと。レンタル期間を越えた場合、日数によって手数料が発生するとのこと。
ナギくんの項目を見てみるとNG行為は真っ白、空欄だ。自己紹介文は「貴方の犬にしてください。」面食らった。
分かりやすいメニュー表。緊張しまくって入店した頃から手に汗を握っていた俺にもつるつると頭に入る。
「ロアさん、今回はレンタル期間は合意で五日。んで童貞。俺で初。」
「え?この色男が……え、えーと…ナギだから二!ね」
「に…?あ、代金ですね…!」
「あ…え?十万単位?なにこわ…この金持ち」
「いやいや、俺そんなうん十万なんて価値ねーから」
二と言われたから二万かと浮かんだが、そんなに安くないだろと頭の中でセルフツッコミし、長財布から二十万を取り出した。すると驚いた顔のまま横に振られて十万単位ではないという事が分かった。ということは、十二万円………?十二万を出そうとしても頭を横に振られた。
え、そんな安いの?人の一夜って二万で買えるの?
何も知らず、調べようという思考にも至らず、ただ金を握って来たやつじゃん。悪く言えば、成人してるくせに童貞で金だけ取り柄のエロジジイじゃん。やば…恥ずかしくなってきた。
「お前ハジメテ過ぎんだろ」
「うぅっ、だってぇ」
「良かったな、ナギ。期待の新人だぞ、ホープだ」
「ホープて、ここ風俗なんですけど…」
「そんなん気にしねぇの」
「えぇ…、あ領収書貰えます?名前は星を導くって書いて星導です」
「いい名前だな、ほしるべって」
「ありがとうございます」
「…じゃあ五日目の二十四時までにちゃんと”返してな”」
レンタル五日間の内の五日目。俺はやっとナギくんを呼び出した。
俺は暗めの色のカジュアルスーツ。ナギくんはチェーンなどジャラッとした黒とシルバーが基調のストリート系。黒と黒、お揃い。
キョロキョロしてたからナギくん!と呼ぼうとしたが、いきなりナギくんって呼ぶのキモいかな…、と喉でつっかえた。あ、ナギく…さん!なんて不自然な呼び方になってしまったが、まぁ良いだろう。ナギくんは俺の声でやっと俺を見付けてくれた。
「やっと見つけた。てか星導、ナギさんじゃなくて呼び捨てにしてくんない。んなセックス中にさん付けで呼ばれたら萎える、おーけー?」
「おっけーナギくん!」
呼び捨てではなく頭の中で呼んでいたナギくんで答えると、まぁよしと ナギくんは満足げに顔を綻ばせた。
俺はナギくんの手を引っ張る。突然過ぎてぉわっと軽く悲鳴が上がった。俺としては遂に恋人が出来た感覚がして嬉しい。思わず子供みたいにピョンピョンと跳ねていた。
「じゃあ、ナギくんあっち!」
「星導!?そっちホテルじゃねーけど?!」
「良いの!ナギくんは俺の恋人なんだから全部俺が決めるの!」
「え、映画館?なに映画見んの?」
「うんデートっぽいでしょ!」
「ばっ、おまっで、デート?!」
「そうデート!…ナギくん、怖い系平気?」
「…ぉ、おう全然よゆーだわ」
「じゃあこれ見よ!」
「怖いのダメだったら言ってくれれば良かったのに」
「っ別に全然ビビってなかったし」
「いやぁ、怖いシーンのときビクビクしてて可愛かったなぁ。訴えかけるように俺をチラチラ見てさ。目塞ごうとしてたけど、怖いの苦手ってバレなように我慢してて。ほんとかわい…」
「なっ、………星導気付いてたのかよ…」
「反応が面白くて…つい」
「うまそ…」
「…これね、すいませーん。…このベリーのパフェ一つ」
「え、星導いいの?」
「いいの、さっきは意地悪しちゃったからお詫び的な?笑。ナギくん体めっちゃ薄いし…いっぱい思う存分に食べてね。」
「じゃあ遠慮なく、これも…良い……?」
「良いよ」
「やっぱうまぁ~」
心の底から美味しいと言っている顔。こっちもあーんなんてスプーンを差し出せばパクリと小さな口で頬張ってん、コッチも美味いと目を輝かせる。まるで餌付けしてる気分だ。
「俺も食べていい?」
「う…いいよ?」
「じゃあ、あ」
「あ、あーん…」
カパリと口を開けてみるとオズオズとスプーンを口まで持ってきてくれた。さりげなく間接キスしちゃった、やったね。
「っうまぁ!甘さ控えめ、ちょうどいい甘さ!」
砂糖の塊のようなゲロ甘ではなくベリー本来の甘酸っぱさが主として構成されていて、俺でも食べれると言うとだから俺ばっかりに食わせて、あぁと納得した顔でナギくんは苦笑した。
「…お前甘いもの苦手だったんかい」
「俺お腹いっぱい…。」
「ナギくんいっぱい食べてたもんね。リスみたいだったよ?」
「リスぅ?そんなにかわいくないだろ、おれ」
「可愛かったよ?目に入れても痛くないくらい」
「………そーかよ」
口に広がる甘酸っぱい甘さと口の回りにクリームを付けていたナギくんの姿を思い出しながら、恥ずかしそうに頬を赤らませながらぷいとそっぽを向く一目惚れの彼の愛らしさを享受する。
「もう六時…じゃあ行こっか。」
手を差し出すと葛藤しながらも潔く手を掴んでくれた。今日はいっぱい手を繋いだのに。その華奢な手を壊さないように丁寧に握り返す。
ナギくんは先程から俯いてばかり。時折俺を見て、見られていることに気付いてまた顔を背けるの繰り返し。でも耳は真っ赤に染めていた。ナギくんもナギくんでいっぱいいっぱいらしい。
可愛い、って言ったらなんて返してくれるんだろう
例の物を見せるとナギくんは三歩綺麗に後ずさりをした。俺も体力的に無理だと思うが、今日じゃなきゃ意味がない。
「これを、今から…俺が……っ? むりむりむり!絶対にむり!」
「ほしるべっ!まってっ!」
ナギくんが嫌だと必死に抵抗するが、手を強く掴んで引っ張ってごめんもうちょっと我慢してと懇願するように言ってみる。すると涙目になりながら俺のされるがままになっていた。
「っ…この体力ばか!おれ、も…つかれた…っ」
ナギくんが嫌だって言っても俺は止まれなかった。どうしても、どうしてもナギくんとイきたくて、それに時間だってギリギリだ。ごめんが待ってあげられない。
「だからっ…!むりっていった……!! とまれっとまれ!むり…だってぇ!」
カランコロンと鈴の音が店内に響く、閉店間際ナギ達が来ないかとレジの椅子にもたれていたので来店客は誰か直ぐに分かった。ナギと星導くんだ。
二人して息が荒く崩れた服、上気する頬、ナギが腰を押さえる仕草。あらあら、とわざとらしく煽ってみる。するとギロリと鋭いナギの視線が飛んできた気がするが、一旦無視だ。
「いらっしゃーい、ちゃんと返しに来たね~。どうハジメテは楽しめた?」
「っはい!とても楽しかったです。そしてかなえさん、また五日間ナギくんレンタルで!」
「いーよー、初回サービスはこれで終了。んで五日間だからプラ一万で合計三万でーす。」
「はい!!」
はした金だ!とでも言うように財布から当たり前のように大金を取り出し、カウンターに叩き込む。おぉ、金持ち。CDが返されて数秒後またレンタルされた。僕が知ってる中で最速記録だ。
「じゃあまた五日目の二十四時までに”返してね” 」
「じゃあナギくんまた五日後に!! 」
嵐が去って行った。
バタンッと勢い良く扉が閉められる。完全に帰ったのを確認するとナギは仰け反るようにしてカウンターにもたれ掛かる。そしてハァーと溜息を漏らした。
ひとしきり息を吐き終えるとみ、水と呻くので急いでコップを持って行った。するとゴクゴクと勢いよく飲み干すと俺もう上がります…、とぺっしょぺしょになりながら弱々しく立ち上がった。
「どぉだった?彼、ナギとピッタリなんじゃない?”処女童貞同士”でさ」
ナギがあまりにも疲れきっていたから、傍に行き目線を合わせるようにしゃがむ。ギクリと怯えるように肩が震えた。何か隠してるなと勘が働き、何?なんかあった?と聞いてみるとブツブツと念仏のような何かを唱えはじめた。
「……………ない」
「え?」
「おれ手ぇ出されてない!!」
コメント
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wow…流石にシチュが好すぎます…😭💗