テラーノベル
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高等部4年生。世間でいう高校1年生の春がやってきました。
中等部を卒業し、青いネクタイから少し大人びたデザインの制服へと変わった二人は、今日から「高等部棟」での生活をスタートさせます。
高等部棟は中等部とは異なり、個人のプライバシーを尊重した完全個室制。
少し寂しさを感じていた二人でしたが、幸いにも部屋は「401号室:滉斗」と「402号室:元貴」。壁一枚を隔てたお隣さん同士になりました。
入寮初日。元貴は自分の部屋の荷解きを早々に終え、開け放たれたままの隣の部屋のドアをそっと叩きました。
「……ひろと、片付いた?」
部屋の中では、滉斗が段ボールと格闘していました。中等部よりも広くなった一人部屋は、まだ家具も少なく、声が少しだけ反響します。
「ああ、だいたいな。……お前の方は?」
「うん。でも、なんだか広すぎて、まだ落ち着かないかな。……これまでは、ずっと一緒の部屋だったし」
元貴が少し心細そうに言うと、滉斗は作業を止めて立ち上がり、元貴の頭にポンと手を置きました。
「壁一枚あるだけだろ。何かあったら、壁を三回叩け。……いや、叩く前に俺がこっちから行くよ」
二人はさっそく、お互いの部屋のレイアウトを確認し合いました。
実は、ベッドの位置を壁越しにぴったり合わせることで、寝る時に「すぐそこに相手がいる」と感じられるように工夫したのです。
「ここをトントンってしたら、ひろとに聞こえる?」
「ああ。夜、寝付けない時はやってみろ。……あと、ベランダも繋がってるから、どうしても顔が見たくなったら窓を開ければいい」
中等部での「204号室」のような密着感はありませんが、一人で過ごす時間を持てるようになったことで、二人の間にはより成熟した、信頼し合う「パートナー」のような空気が漂い始めていました。
そんな時、元貴のスマホに通知が届きました。大学生になった涼架からの、賑やかなスタンプ付きのメッセージです。
「高等部デビューおめでとう! 一人部屋になったからって、寂しくて泣いてないかな? 滉斗、元貴の隣の部屋を死守したんだから、しっかり守ってあげるんだよ! 近いうちに差し入れ持って突撃するからね〜!」
「……死守したって、やっぱりひろとが先生にお願いしてくれたの?」
「……さあな。運が良かっただけだろ」
耳まで赤くしてそっぽを向く滉斗を見て、元貴はクスクスと笑いました。涼架がいなくなった学園は少し静かになりましたが、彼の「お節介な愛」は今も二人を繋いでいました。
夕食後、元貴がバルコニーの窓を開けると、隣の窓からもスッと滉斗が顔を出しました。
「……夜風、気持ちいいね。ひろと」
「……だな。音がうるさかったら、すぐ窓閉めろよ」
手を伸ばせば届きそうな距離。
一人一部屋という新しい自由を手に入れても、二人の心は以前よりも強く、深く結びついていました。
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コメント
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とうとう高校生か〜