テラーノベル
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高等部へと進学し、制服のネクタイの色が変わっても、二人の「距離感」だけは中等部の頃から何一つ変わりませんでした。
一人一部屋という贅沢な環境を与えられたはずの二人でしたが、放課後になればどちらかの部屋に集まり、予習復習をしたり、元貴が滉斗の肩に頭を乗せてうたた寝したりするのが日常茶飯事。
その徹底ぶりは、ついに同級生たちの間で「204号室の鉄則(高等部編)」として語り継がれることになります。
ある日の放課後、クラスメイトの男子が数学のノートを借りに、滉斗の401号室の前にやってきました。
(コンコン!)
「若井ー、いるか? 数学の課題、ちょっと見せてほしいんだけど……」
返事はありません。しかし、彼は全く動じることなく、そのまま右隣の402号室(元貴の部屋)へと移動し、迷わずドアを叩きました。
(コンコン!)
「……はい、どうぞ」
中から聞こえてきたのは、元貴の穏やかな声。扉を開けると、そこには案の定、元貴のベッドの端に座って参考書を広げる滉斗と、その横でクッションを抱えてくつろぐ元貴の姿がありました。
「やっぱりいた。若井、お前自分の部屋の家賃払う必要ないんじゃないか?」
「……うるさい。元貴に教えてただけだ」
滉斗は平然と答えますが、机の上には二人分のマグカップと、涼架から送られてきたであろう大量のクッキーが並んでおり、明らかに「定住」している雰囲気です。
この現象は瞬く間に広まり、今では高等部4年生の間でこんな風に言われるようになりました。
【藍林檎学園 高等部棟4階の歩き方】
事象: 401号室(滉斗)が不在の場合。
対策: 1.5メートル横の402号室(元貴)を叩け。
結果: 99%の確率で二人セットで発見される。
備考: 逆もまた然り。
「ねえ、ひろと。またみんなに言われちゃったね」
「気にするな。効率がいいだけだ。……お前の部屋の方が、日当たりがいいしな」
「僕の部屋、ひろとの部屋と向き同じだよ?」
「…………。……コーヒー、淹れ直してくる」
理屈にならない言い訳をして立ち上がる滉斗の後ろ姿を、元貴はクスクスと笑いながら見守ります。
一人部屋という「壁」すらも、二人の強い絆を遮ることはできず、むしろ「隣にいる」という安心感を確認するためのスパイスになっているようでした。
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コメント
4件
2人ずっと一緒でかわいい…! 対策もあるのすご!
元貴の部屋までの距離まで正確とは笑