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黒尾と🌸の話

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黒尾と🌸の話

8 - 「結婚する」宣言⚠︎子供有

♥

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2026年01月08日

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夕飯後のリビング。テレビはついているのに、誰もちゃんと見ていなかった。


黒尾鉄朗は床に座り、背もたれ代わりにソファにもたれている。

その胸元に、娘の🌷がすっぽり収まっていた。


「パパ、きょうね」


「んー?」


「ようちえんでね、けっこんのはなししたの!!」


黒尾の眉がぴくっと動く。


「……結婚?」


「うん!!」


「……うん?」


何気ない会話のはずだった。

この時までは。


「🌷ね、きめたの」


黒尾は娘の頭を撫でながら、軽い気持ちで聞いた。


「何を?」


次の瞬間。


「パパとけっこんする!!!」


……時間が止まった。


「…………は?」


隣で聞いていた私は、吹き出すのを必死で堪える。

黒尾は完全に固まっていた。


「え、ちょ、待て待て

🌷、それはな」


言葉を探す黒尾の胸に、🌷がぎゅっとしがみつく。


「だって、パパやさしいし

つよいし、だっこしてくれるし」


一個一個、理由を指折り数えるたびに、

黒尾の耳は赤く、顔はどんどん真剣になっていく。


「それにね」


🌷は顔を上げて、まっすぐ黒尾を見る。


「パパが、🌷のこと、いちばんすきでしょ?」


私は我慢できずに吹き出してしまった。


……致命傷。


「……それは、そうだけどな」


黒尾は私の方をちらっと見る。

助けを求める目。


私はにこにこしながら言った。


「おめでとう、てつくん」


「祝うな!!」


即ツッコミ。


「いや、違うだろ!いや違くはないんだけど…

…これはちゃんと説明するやつだろ!」


黒尾は真面目な顔で、🌷と向き合う。


「🌷、よく聞け」


「うん」


「パパはな、ママと結婚してる」


「しってる」


「でな、🌷はいつか、🌷が大好きな人と結婚するんだ」


🌷は少し考え込んだあと、首を傾げた。


「じゃあね」


嫌な予感しかしない。


「🌷がおおきくなってもパパが寂しくないように、ママとパパと、いっしょにすむ」


黒尾、崩れ落ちる。


「……お前、それ最強の答え出すな」


私はとうとう声を出して笑ってしまった。


「だってね」


🌷は無邪気に続ける。


「パパがいないと、さみしいし

ママがいないのも、やだ」


黒尾は娘をぎゅっと抱きしめる。


「……ずりぃな」


低い声で、ぽつりと。


「そんなこと言われたら、

 パパ、何も言えないじゃん」


🌷は満足そうに、黒尾の胸に顔を埋める。


その頭を撫でながら、黒尾は私に小さく言った。


「……なぁ」


「なに?」


「🌷が結婚する日、俺、耐えられる気しないんだけど…。

てか結婚しないで欲しいんだけど…」


「今から言う?」


「こんなこと言われたらサ…」


少し間を置いて、真剣な声で。


「……絶対泣く」


私は笑いながら、黒尾の肩に寄りかかる。


「覚悟しといて」


黒尾は大きく息を吐いて、もう一度娘を抱き直した。


「🌷」


「なあに?」


「パパはな、

🌷が誰と結婚しても、

一生、🌷のパパだからな」


「うん!」


「でもな」


少しだけ、声が柔らかくなる。


「今はパパのこと大好きでいて」


娘の「今」は、全部ここにある。


その夜、布団に入ったあと。


「ねぇ、パパ」


「まだ起きてんのか」


「やっぱりね」


眠そうな声で。


「パパとけっこんする」


黒尾は天井を見つめたまま、小さく笑った。


「……はいはい」


私には聞こえないような声で。


「それ言われるうちは、

 パパ、世界一幸せだわ」


🌷の寝息が静かに響く部屋で、

黒尾鉄朗は、娘に一生勝てない父親になった。

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