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#UndertaleAU
生ハム酸
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生ハム酸
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フルーツタルト🍇🍓🍑🍉
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鬱陶しいくらいに蝉が鳴いている。雲ひとつない空にはオレたちを焼き殺さんとするようにギラつく太陽が浮かんでいた。日陰は梅雨の名残を表すようにじめついていて、どこへ行こうにも不快感が消えない。
「あ”ッぢぃ……」
漸くマスタードが不満を漏らしたかと思えば、既にその身体には汗がびっしりと浮かんでいた。黒いタンクトップにあちこちシミを作っている。
目のやり場に困ると言えばそれまでだが、オレにはそんな浮ついた小言を喋る口もないし、この暑さを理解できないほど鈍い身体でもなかった。
「そろそろ新しい扇風機買わないとな。あ、この機にクーラーでも……」
「クーラーがいい」
「即答だな、分かったよ。まぁ機会があったらだけど」
特に行くあてがあるわけでもない。しかしこうしてふたりで地獄のような暑さの中を歩くのも悪くはない。第一、壊れた扇風機が佇むだけの部屋の方が暑いし。
「マジであちぃ、どっかコンビニでも……」
言葉を止めたマスタードの目線を追った先には、一台の自動販売機。それもドリンクではなくアイスを売ってるやつ。
「負けた方の奢りな」
どちらともなく握った片手を出し、馬鹿みたいに真剣な顔して勝負を持ち出した。
「っし、オイラの勝ち」
「チッ。今度はテメェが奢れよ」
「へいへい、今度があったらな」
適当な相槌を打ちながら、自動販売機の方へ向かうマスタードの後ろを歩く。
文句をこぼしながらジーパンのポケットから財布を取り出す様子が背中越しに見えた。
それにしても、あんな柄の財布はいったいどこで買ってくるんだ?
アイスのお返しと言ってはなんだが、次のホリデーシーズンに新しいのをプレゼントしてやろうかとぼんやり考えた。
「おー、いろいろあるんだな。ケチャップ味とかある?」
「あるわけねェだろ。早く選べ」
「んー……じゃあこれ」
「なんだよシークレットって……」
カコン、という乾いた音と共にアイスが取り出し口に落ちてきた。クエスチョンマークが書かれた黒い包装紙の棒アイス。本当に食べるまでのお楽しみってやつみたいだ。
「アンタは何にすんの?」
「……コレとか?」
「へー。アンタって意外と冒険しないタイプだよな」
「意外とってなんだよ……」
「ま、さっさと食べようぜ。この暑さじゃすぐに溶けちまう」
近くにあったベンチに腰を下ろす。アイスの黒い包装紙をぺりぺり破ると、中からはなんとも形容しがたいマーブル色のアイスが出てきた。味が全く想像できない。
見なくてもわかる、隣の男は間違いなく今このアイスを見てドン引きしていることだろう。
「……それ本当に食いもん?」
「たぶん?」
目が痛くなるような鮮やかな色に少し気が引けたが、思い切って一口目を食べた。
「……あ、美味い」
「…………マジで?」
何味かとは表現できないが、とにかく不味くはない。濃厚な甘さと、少し酸味のあるさっぱりした後味。なんか「夏」って感じだ。わかんないけど。
それよりも、アイス特有のシャリシャリとした冷たい食感が暑さに蝕まれた体を癒してくれて心地良い。
「アンタも早く食べなよ」
「……おう」
ぱん、と包装紙が勢いよく開かれる音がした。アイスを口に運んでいると、隣から時折向けられる視線に気づく。何度目かの少しそわそわしたそれを感じたところで、思わず口を開いた。
「……食べるか?」
「……美味ぇつったよな」
「まぁ、うん」
返事をすると、マスタードは恐る恐るというようにオレが差し出したアイスを一口齧る。彼はなんとも微妙な顔をしながら咀嚼し、それを飲み込んだ。
「……不味くはねぇ」
「だろ?アンタのも一口くれよ」
「……まァいいけど」
すっと目の前にキャラメル色のアイスが差し出される。齧られた断面から中のバニラが覗いていた。
「ん、美味いな」
「その食べ物かも疑っちまうようなヤツよりかはよっぽどな」
こうやって何かを分け合うのって、なんだか。……一つ冗談を思いついた。
「へへ、なんかさ、こういうのって……コイビトみたいだよな」
口にしてみて、やはり自分でも可笑しいと思う。オレたちみたいなヤツらが世間一般的な『恋人』という枠に分類されるのかと。けれど隣から返ってきたのは笑い声ではなかった。
「…………なァ、もう一口くれよ」
脈絡のない返しに困惑した。紅いひとみがタマシイを射抜くようにこちらを見ている。この眼は知ってる。つい昨晩も見たから。
「あ、すまんもう食べきっちまった」
「いや、ソレでいい」
ふと距離が縮まった。投げかけようとしたはずの疑問の言葉ごと食べられ、口内に佇む温く柔いそれをまるで御馳走かのように嬲られる。つい手に持ったアイスの棒を落としてしまいそうになった。
一瞬止んだかのように思えた蝉の声がまた聞こえ出した。息遣いが夏の喧騒に飲まれる。
「……帰るか」
「…………そうだな」
アイスの残骸をゴミ箱に投げ捨てて、マスタードの背中を追うように歩き出した。
熱がからだを内側から燻る。あつくてあつくて堪らない。……やっぱり早くクーラーを買った方が良さそうだ。
コメント
1件
わあ、すごく素敵なエピソードでした……! 夏の嫌な暑さが、ふたりの距離の近さでちょっと甘く感じられるのが良かったです。アイスを分け合うシーンでの「恋人みたいだよな」って軽口に、まっすぐ見つめられて「もう一口くれよ」って返すマスタードの視線がたまらなかったな。何も言わないけど全部伝わってくる感じ、すごく好きです。 次も絶対読みたい……!🌷