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SNSに投稿された、あの写真。
たった一枚の写真だった。
けれど、康二は何度も見返していた。
――このままで、大丈夫なんかな。
写真には翔太が写っている。
そして、後ろには康二が働いているカフェ。
まだ誰も二人の関係には気づいていない。
ただ「翔太がよく行く店なのでは」と言われているだけ。
それでも。
康二には十分だった。
*
翌日。
いつものように翔太からメッセージが届く。
翔太:おはよ
康二は画面を見つめる。
いつもなら、
「おはよー」
とすぐ返す。
でも今日は。
康二:おはよう
短く返した。
少しして、
翔太:今日、仕事終わったら電話する?
康二は指を止めた。
そして、
康二:ごめん、今日はちょっと用事ある
と送った。
嘘だった。
本当は何もない。
ただ、少しだけ距離を置きたかった。
*
それから数日。
康二は少しずつ変わっていった。
連絡の返信を遅くする。
電話に出ない日を作る。
「会いたい」と言われても、
「また今度な」
と答える。
翔太も最初は気にしていないようだった。
けれど、数日経つと――
翔太:康二、なんか怒ってる?
そのメッセージを見て、胸が苦しくなる。
康二:怒ってないよ
翔太:じゃあ、なんで最近避けるの?
康二はしばらく画面を見つめた。
そして、
こまり:……ちょっと考えたいことがあるだけ
と返した。
すぐに既読がつく。
翔太:何を?
答えられなかった。
*
数日後。
またカフェで撮影が入った。
翔太が店に入ってくる。
「おはようございます」
いつもの翔太。
康二も、
「おはようございます」
と返す。
それだけ。
仕事中だから。
そう自分に言い聞かせる。
でも。
撮影の合間、翔太が康二のところへ来た。
「康二」
「……なに?」
「ちょっと話せる?」
「今、仕事中やから」
「終わったら?」
康二は一瞬迷って、
「……今日は無理」
と答えた。
翔太の表情が変わる。
「なんで?」
「用事あるから」
「……また?」
「……うん」
翔太はしばらくこまりを見る。
「康二」
「ん?」
「俺、何かした?」
その言葉に、胸が痛くなる。
「……違う」
「じゃあ、何?」
康二は唇を噛んだ。
言いたくない。
でも。
これ以上、翔太を不安にさせるのも嫌だった。
はんぎょ
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#ふかこじ
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「……あの写真」
翔太が黙る。
「SNSの写真見て、ちょっと怖くなった」
「……」
「まだ何もバレてない。でも、もしバレたら?」
翔太は何も言わない。
「翔太は芸能人やから、俺と違って、失うものがいっぱいあるやん」
「康二」
「俺は普通の会社員やし。何かあっても、俺が困るだけかもしれへん」
声が少し震える。
「でも翔太は違う」
「……」
「仕事も、ファンも、メンバーも。全部に迷惑かかるかもしれへん」
翔太は静かに康二を見る。
「だから……」
康二は一度、息を吸った。
「少しだけ、距離置いたほうがいいと思う」
その瞬間。
翔太の表情から、笑顔が消えた。
「……俺は嫌だ」
「翔……」
「俺は、康二と距離置きたくない」
「でも――」
「康二が勝手に決めないでよ」
少し強い声だった。
康二が驚いて顔を上げる。
翔太はすぐに目を伏せた。
「……ごめん」
「ううん」
「でも、俺だって考えてる」
翔太は小さく息を吐いた。
「康二を守りたいし、仕事も大事にしたい」
「……うん」
「だからって、康二と離れるのが正解だとは思わない」
康二は何も言えなかった。
「俺、康二のこと好きだから」
その言葉が胸に刺さる。
「……俺も好きやから」
康二は小さく笑った。
「好きやから、怖いねん」
翔太は何も言わなかった。
二人の間に、長い沈黙が流れる。
そして翔太が、
「……少しだけ時間ちょうだい」
と言った。
「俺もちゃんと考える」
「うん」
「でも」
翔太が康二を見る。
「俺、諦めるつもりないから」
そう言って、翔太は撮影へ戻っていった。
康二はその背中を見つめながら、胸の奥が締めつけられるような気がした。
距離を置こうと思ったのは、自分なのに。
離れようとすればするほど――
翔太のことが、もっと好きになっている気がした。