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ゆゆゆゆ
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静かに、ピザを食べる。
さっきの出来事のせいで、妙に落ち着かない。
視線を上げると、すぐそこにノスフェラトゥがいる。
近い。
さっきよりも、ほんの少しだけ意識してしまう距離。
「……」
無言。
だが、空気は張りつめているわけじゃない。
奇妙な、静けさ。
そのとき。
ふと――
「……っ」
胸の奥が、引っかかる。
視線が、自然と止まる。
ノスフェラトゥの顔じゃない。
その“距離”。
近くに誰かがいる、という感覚。
それが――
「……あ」
浮かぶ。
誰か。
笑っている。
「……っ」
頭が、じんと痛む。
明るい声。
軽い口調。
「ほら、焦げるぞ」とか言ってくる。
勝手に食べようとして、怒ると笑う。
「……」
息が止まる。
「……なんだよ」
小さく呟く。
映像はある。
感情もある。
――でも。
顔が、ない。
「……っ」
手が、震える。
「……おい」
ノスフェラトゥの声。
「……どうした」
気づいている。
様子が変わったことに。
「……いや」
首を振る。
「……思い出しかけた」
絞り出すように言う。
「……誰か」
目を閉じる。
必死に掴もうとする。
「いつも笑ってて……」
声が、少しだけ柔らかくなる。
「周り、明るくしてて……」
断片は、確かにある。
大切だった。
それだけは、はっきりしている。
「……でも」
目を開ける。
「顔も……名前も、出てこねぇ」
沈黙。
ピザの湯気が、ゆっくりと消えていく。
「……」
ノスフェラトゥは、じっと見ている。
何も言わない。
ただ、観察するように。
「……くそ」
小さく吐き捨てる。
「そこまで出てんのに」
拳を軽く握る。
悔しさ。
苛立ち。
それ以上に――
「……忘れたくねぇのに」
ぽつりと。
本音が、こぼれる。
「……」
ノスフェラトゥの瞳が、わずかに揺れる。
その言葉に。
「……なら」
静かに、口を開く。
「焦るな」
「……は?」
意外な言葉。
「無理に引きずり出すな」
低く、落ち着いた声。
「壊れる」
短いが、確信のある言い方。
「……」
言い返せない。
「……その“感情”は残っている」
続ける。
「なら、いずれ辿り着く」
「……」
数秒、沈黙。
そして。
「……お前に言われると」
少しだけ、笑う。
「妙に説得力あんな」
「……そうか」
短く返る。
だが、その声は――
ほんの少しだけ、柔らかい。
「……」
pizza guyは、ピザを一口かじる。
さっきより、味がする。
「……そいつ、多分さ」
ぽつりと。
「俺のこと、名前で呼んでたんだろうな」
小さく、笑う。
「当たり前か」
自嘲気味に。
だが。
その言葉のあと。
ほんの少しだけ。
空気が、変わる。
「……」
ノスフェラトゥは、何も言わない。
だが。
その沈黙は――
ただの無関心ではなかった。
ふたりの間にある距離。
近いまま。
だが。
さっきまでとは違う意味を持ち始めていた。