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孤独な翼

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孤独な翼

12 - 隣を歩く勇気

♥

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2026年01月24日

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訓練を終え、剣を納めたとき、少年は自分の指先がわずかに震えていることに気づいた。

汗のせいではない。呼吸も、整っている。

それでも胸の奥だけが、まだ騒がしい。

「…アゼリア。」

呼ばれて振り向くと、少し離れた場所にガブリエラが立っていた。

いつもと変わらぬ姿勢。変わらぬ表情。

「はい。」

声が硬くなるのを、自覚する。

「今日の動きは悪くない。」

淡々と告げてから、一拍置く。

「だが、剣先が迷っていた。」

胸を衝かれたような感覚。

視線が、思わず落ちる。

「…申し訳ありません。」

「謝罪はいらない。ゆっくり休んむといい。君はいつ前線に出てもおかしくないのだから。その迷いのせいで、仲間をも傷つけてしまうことがないように。」

「…はい。」

返事をしながらも、言葉が胸に引っかかる。

理解したいのに、うまく噛み砕けない。

ガブリエラはそれ以上何も言わず去っていった。

その背中を見送りながら、少年はしばらく立ち尽くしていた。

「…リア。」

今度は、柔らかい声だった。

「セリス…」

同じ心配そうにこちらを見ている。

「今の、見てた。」

「顔、真っ青。」

「…そんなことは。」

「ある。やっぱり、朝も全然大丈夫じゃ無かったでしょ。」

即答され、言葉に詰まる。

セリスは一歩近づき、声を落とした。

「ねえ。少し、外出ようよ。」

その一言に、胸が跳ねる。

「…外?」

「中庭でも、回廊でもいいから。」

軽く肩をすくめる。

「今のまま寮に戻る顔じゃない。」

少年は答えられず、唇を噛む。

昨夜のこと。

ガブリエラの言葉。

飲み込めなかった感情。

「…言えないこと、ある。」

正直に言うと、セリスは頷いた。

「別にいいよ。言わなくて。」

驚いて見つめると、少し笑う。

「でもさ、一人で抱える必要はないよ。」

その言葉に、張り詰めていたものが少しだけ緩んだ。

二人並んで歩き出す。

建物を離れると、空気が変わったように感じられた。

「ねえ、リア。」

歩きながら、セリスが言う。

「君は、あの悪魔の捕虜のことどう思ってるの?」

不意の問いに、足が止まりそうになる。

「…わからない。」

「そっか。」

少年は、自分の迷いのことがバレないか怖かった。友人に否定されたらーー

「迷ってる人はさ。」

セリスは前を向いたまま言う。

「ちゃんと自分と向き合ってるってことだよ。」

「…迷うのは、弱さだって。」

「誰が決めたの?」

少しだけ、強い口調。

少年は答えられなかった。

言葉が、また喉で詰まる。

「大丈夫。」

セリスは歩調を緩める。

「飲み込めない言葉があるなら、それはまだ終わってないだけ。」

胸の奥が、じんわりと熱を帯びた。

答えは出ない。

剣の意味も、正義の形も。

それでも――

セリスに勇気を与えてもらった気がして、心が暖かかった。

少年は息を吐き、隣を歩くセリスを見た。

「…なんで。」

「そりゃ、リアをほっとけないでしょ。…親友、 なんだから…」

セリスは、少し照れくさそうに言った。

「…ありがとう。」

こっちも恥ずかしくなってくる。

「どういたしまして。 ほら、もう少し歩こう。」

二人は並んで歩き続ける。

その背後で、寮はいつも通り静かに佇んでいた。

少年には、自分を理解しようとして寄り添ってくれる人が2人もいる。そのことが嬉しくてつい笑みがこぼれ落ちた。

太陽が沈み掛けていて、建物に明かりがつき始めた。

ーーそして、少年はもう一度サリエルに会う決意をした。


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