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それでも私は愛されたい

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それでも私は愛されたい

4 - 4.病み維申くんはこちらからどうぞ

♥

574

2023年09月04日

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いちゃいちゃさせたいだけの小説Part4

いちゃ、、いちゃ、?



何も考えてない定期


・えっ、病み、?ですわ

・そうですわ維申君が病んでますわ

・だからなんですの

・維申君の愛されですわ

・強いて言うなら維申×莉愛

・気持ち的にはデスゲームから5年後くらいかなぁー!

デスゲームが終わって平和な暮らしをしてる設定つまりそうパラレルワールドですよろしくっ!



⚠︎自傷表現有


通報荒らし❌






「ヅあっ、、……」



息が切れる。動悸が激しい。汗が止まらない。


手元に置いてあったマウスが机から落下した。

見慣れた部屋だ。自分の服や…かつて目指していた医者になる為の、勉強本がある。電源のついていないパソコンの画面に、自分の顔が反射する。

本当に、酷い顔をしている。

机に突っ伏して眠ってしまっていたのか…時計を確認すれば、深夜3時半。煩くしたら、他の4人にも悪い。早く布団で寝付かなければ。





______コンコン



扉を叩く音がする。こんな深夜に起きている…?いや、音で起こしてしまったのかもしれない。


「…何か音がしたけど、大丈夫?」


葵か。出来る限りの、明るい声で返事をする。幸い扉越しだ。




この部屋を見られることは無い。


「大丈夫!煩かった?ごめんね。」

「ううん、大丈夫。おやすみ。」


去っていく足音がする。

本当に、危なかった。






机の上に置いてあるものを、片付ける。



蒸しタオル。真っ赤に染まっている。

包帯。これで傷付いた腕を覆う。

カッター。凝固した血が刃に付いている。




これだけあれば、分かるだろう。

自傷行為。いわゆる、リストカットの部類。

勿論、誰にも言っていない。



リストカットは痛くない。よく、そんな風に言っている人が居る。本当に苦しい人は、痛くないのかもしれない。けれど、俺は十分痛みを伴っている。

痛いから、他のことを考えなくて良い。痛みに集中するから、何も考えなくて良い。








小さい頃から、親に期待されていた。直ぐにグレた弟とは対照的に。中学の卒業式後の深夜。親を怒らせてしまった。母親に、ナイフで刺された。


高校生の時、大好きだった初恋の女の子が死んだ。殺された。明日香っていう、凄く可愛い女の子だった。精神が崩れた。目の前で殺された辛さ。恐怖。トラウマだった。




ずっと、無気力に、生きていた。明日香が死んでから、莉愛の事を愛して。大切な仲間が出来て。それでも、治らなかった後遺症は多々ある。



それでも、今の生活の為には弱音を吐けない。


発達障害と腕に怪我のある莉愛。

性同一性障害とADHDを持つ美佳。

目に怪我を負っている葵。

左腕が義手で不自由なコノハ。





今はコノハが莉愛と美佳を従えてくれているから手はかからない…けれど。それだって永遠じゃ無い。

これで俺まで崩れたら、どうなる?









「おぇ”ッ、、っ」

駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

貧血か?どうして??今まではこんなに酷くなかったはず。

目眩がする。立ちくらみか?焦点が合わない。


駄目だ。今倒れてはいけない。最悪見られる。せめてカッターだけでも隠さなければ。



や、ば……い






腹の底から何かが込み上げる。

我慢がどうこう言える次元では無い。分かりやすい限界だ。

止めていた息を吸おうとした瞬間。気持ち悪さが頂点に達する。

咄嗟に緊急用のビニール袋に手を伸ばす。







「お”ぇ”“ヅゲホッ」


口の中が酸っぱい味で満たされる。


喉に突っかかったりはしない。突っかかるものが、そもそも無いのだ。胃が、空っぽだから。


食事は喉を通らない。基本的に一斉に食事をする機会には立ち会わないようにしてきた。どうしても食事する時は、少量を口に含むだけ。

身体がおかしいなんて、とっくに分かっている。けれど、病院に行って…コノハ達の負担を増やす訳にはいかない。


何より、俺が我慢すれば…自体は何事もなく収束するんだ。




胃酸を吐いたこともあり、ささっと口を濯ぐ。汚物処理には手馴れている。一時期、莉愛が毎日の様に体調を崩しては嘔吐を繰り返していたから。



眠らなければ。体調が悪化してしまう。立てなくなったら本当の終わりだ。

けれど、、まだリストカットの後処理をしていない。左腕の傷は、放置すればするだけ前日の傷と繋がり、大きく裂けていく。


隠せなくなるほどの傷は、流石にダメだ。



机に仕舞おうとカッターに手を伸ばす。次の瞬間、頭を殴られたかのような痛みが走る。限界のサインの頭痛だ。咄嗟に壁に手を付く、、いや、壁が無い、?俺は今、、何処に手を伸ばしている……?待て、上は何処だ、?壁は何処にある、?俺は今…立っているのか、?

暗闇の眩しさに目が眩む。

何処にぶつかったのかも分からない。物が当たった故の痛みか、限界のサインの痛みなのか分からない激痛が頭を襲う。


体の感覚が失われる。

意識も、直ぐに途絶えた。









……暖かい?明るい。暖かい。


……声がする。



「ぁ……ぅッ」


目が合う。コノハと、目が合う。コノハの顔が一瞬で明るくなる。


「維申君っ、!起きたよ!」


光が眩しい。軽い毛布が掛けられている。

リビングのソファーの上まで、運ばれたようだ。

……左腕が、少し保護されている。




「大丈夫っ、!?維申ッ。!!」


「り、莉愛、?待って今何時、?」


「4時だよ!!、深夜のッ!!!」


「何で起きてるの、!?寝てなきゃ、、駄目でしょ、?莉愛。」


「あんな音がして寝てる方が頭おかしいから!!」


そんなに煩かったか、?1度、マウスを落としただけで、?


「……あ、、そうだ。維申のパソコン……」


「パソコン、?」






「割れたのよ。貴方が倒れた時に巻き込んで。その音で皆も起きちゃったの。」


「葵ッ……」


葵とは、正直対話したくない。嘘をついたばかりだから。大丈夫だと、嘘をついたから。


……それに、パソコンを巻き込んだのか。倒れた時にぶつかったのは机と棚だったのか、?…棚には大事なものが入っているはず。大丈夫だっただろうか。



「話したいことは沢山あるわ。けれど、、」

「後で2人でしましょう。コノハ、2人を頼めるかしら?」



「あ、はい!美佳ちゃん、莉愛ちゃん!寝るよ〜!!」

「うぁぁぁめっちゃ眠いです!葵の姉貴達おやすみですっ!」

「うん…ね、維申……、?朝、また話そうね、?」









「さ、話そうか?維申。」


葵と、目を合わせたくない。



「…そんなに、私と話したく無い、?」

「そういう訳じゃない、!けど、、」


言葉が詰まる。これ以上何を言う?何を言っても、皆に迷惑をかけた事実は変わらない。言い訳に他ならない。



「…何に悩んでたの、?」



口が、開かない。開こうと努力しているのに、、まるで縫われているかのよう。何か言わなければ。



「…私、今ね。いや、私達、ね。」



「すっごく、辛いんだよ。」





…分かっている。

分かっている。分かっている。分かっている。分かっている。分かっている。

障害や怪我、普通の生活にストレスが募るだろう。


でも、、それでも、、、








俺だって…辛いんだから、、な、?


痛いよな、?葵だって。片目が見えないって、本当に苦しいと思うよ、?辛いよね、?


けど、、俺だって、辛くないわけじゃ、、無いんだよ…、?



「葵ッ、!俺だって、、、ッ」

「俺だって、痛いと思うことはあるし、、辛いんだよ……、どうして、、どうしてそんな風に言うんだよ……ッ!お前らばっかり、痛かった、辛かったみたいな言い回しして、!」


こんなの、八つ当たりだって分かってる。

ごめん、ね。葵、、、、謝らなきゃッ


「…勘違い、してない、?」


「…、?」


「あ、ごめんね、?、維申、辛かったよね。分かってあげてるつもりになってたかも、、」

「あと、さ…勘違いが起きて、るかも、?」



「私たちは、、維申が、相談してくれなかったから辛いんだよ、。維申が倒れて直ぐ、皆維申の事凄く心配してたんだよ、?それと、同時にね?」



「話してくれなかった。相談してくれなかったって言う、事実が。凄く辛いよねって。」



「……でも、相談するほどの事じゃなかったし、!皆が気に追う必要は、、!」


「無いわけないでしょ!?そんなに自分の身体を傷つけて、、倒れるまで追い詰められてて……ッ、!、!」


「なんでもない訳、、無いじゃない……」



これ以上口は開けない。紛れもない、俺の自業自得なんだ。葵を、泣かせた。俺の勘違い、いや、元を辿れば最初からバレて無ければ、、



「2人とも、声を落としてください。莉愛ちゃんが凄く心配してましたよ。」


「ッ、、コノハ、ありがとうね。2人のこと。貴方が居てくれて本当に助かるわ、、ッ」


「葵さん、!、どうして泣いてるんです、?」


「……俺が悪かった。」



その一言だけを残し、制止の声を無視してリビングから出る。なんなら、家から出る。

本当に…自分勝手だな。






向かう先なんて決まっていない。

何も考えずに足だけを動かす。

少しでも、アイツらから離れたかった。




「…うぇ”ッ」


貧血、という感覚は無い。ただ気持ち悪いだけ。目眩が収まるまで駅前で時間を潰すか?



…駄目だ。駅まで歩ける自信が無い。

何処か……この辺りに落ち着ける場所は…











「……落ち着く時間が必要なのかもしれないですよ、?」


「あんな怪我してフラフラのまま、、何かあったら…私のせい、ッ」


……維申君のこと…追いかけるべきだったのだろうか。葵さんの言う通り。あの身体で、こんな時間に1人で居ては危ない。けれど、維申君が行く宛てなどは分からない。



「朝になったら電話してみましょう。莉愛ちゃんも居る時に話すのが1番合理的だと思います…」



正直困惑している。

……さっき莉愛ちゃんと美佳ちゃんを寝付かせたとき。莉愛ちゃんの部屋に居てもはっきり聞こえるくらい、、聞いた事のない声が響いたから。

維申君の、あんな怒鳴り声、初めて聞いたから。莉愛ちゃんの震えが酷かった。美佳ちゃんはいつも通り…だったけれど。何処かいつもより元気が無かったのは分かった。



「葵さん、気に負わないでください。きっと維申君にも葵さんの心配は伝わりますよ。」


「コノハッ…っぅぐヅ、、」


「泣かないでください、大丈夫です。私がここに居ますよ。葵さん、大丈夫。落ち着いてください。」


「コノハぁ、、ッ、、ぅッ、、私って、、ッ、そんなに、、維申にとって、ッ、、邪魔かなぁッ……ぅッ」


「そんな訳ないじゃないですか!私達みんな、どれだけ葵さんに助けられているか、、!」


「私、、ッ、、っぅ、ぐッ、」

「少しだけで、、いい、ッ、から……ぁ」


「維申に、、頼って、ッ、、貰いたかった、

ぅッ、、だけ、、。なの、ッ。」


「葵さんの気持ち、絶対維申君も真摯に向き合ってくれるはずです。」


「維申が苦しんでるって、、分かってたのにッ、、、助けてあげられなくて、、ッ」

「寧ろ、、負担を増やして、、本当ッ」


「大丈夫、、大丈夫。泣かないで、大丈夫です。少なくとも私には葵さんの優しさが十分伝わってきましたよ。」


「私達も一旦仮眠を取りましょう…?葵さん、寝てないですよね、?」


「……コノハ、ッ本当にありがとう…ね、、?おやすみなさい。」


「はい、おやすみなさいっ、!」







「維申の兄貴ぃぃぃい?」



「…お部屋入りますよーー」



「部屋の物色しますねーーー」




「…パソコン。バッキバキですね。後で僕が直してやりますかー。」



「何でこんな所に落ちてるんですか……こういう袋って開けて大丈夫ですかね?」




………これ、は、、









「うぇ、、?!美佳が居ないの、?維申が出てったって、、どういうこと、?」



理解が追いつかない。私が眠る前後…この半日で何が起きた、?維申が倒れて、、皆喧嘩しちゃって、、維申と美佳が居なくなった、?


「ごめんなさいッ、、本当に、、私が怒らせたせいだわ…ごめんなさいっ、、、!」


「葵さんのせいじゃないです、!美佳ちゃんなら直ぐに帰ってくると思います。今は維申君に集中しましょう、?」



…どうしたらいい、?維申が何処に行ったかも分からない。最悪の事態を想定してしまう。大丈夫、きっと、大丈夫。維申が…いや、これ以上は何も考えない。






電話の不在着信だけが増えていく。繋がる気配は無い。相手は出る気もないのだろう。何をするのが正解なのだろうか。探しに行く、?何処へ、??












フラフラな身体に軽く風が当たる。それだけで倒れてしまいそうなくらい足元が覚束無い。久しぶりに見る景色。

冷たいタイルの上に腰を降ろす。少し不思議な感覚だ。今までここに来る時は、、いつも隣に誰かが居たから。

明日香が、居たから。






かろうじて、まだ少しだけ歩けそうな足で。乗っては行けない箇所に足を乗せる。当たる風の量が、少しだけ多くなる。


前に倒れれば、30mは有るだろう高さから、車道に真っ逆さま。

別に前に倒れる気は無い。少しだけ、こうしたかった。


此処で待っていれば、、明日香にまた会えるかもしれない。




馬鹿な考えだ。死んだ人間は蘇らない。けれど、、それに縋るしかないほど、、もう、限界を迎えている。



昔はよく、此処で明日香と話してたなぁ…

苦しいこと、ちょっとした愚痴、何でも話して慰め合って、、最後に笑って終わる毎日だったら……

いくら日々が苦しくても、、頑張れたのかなぁ。








「…見つけましたよっ!維申の兄貴!」



…、!?

「美佳っ、!?な、、何で、?ここ、分かったの、?」


「てめーの部屋にあった写真です!袋に包まれてました!」


「…それが、どうかしたの、?」


多分、、学校帰りに撮った明日香との写真の事を言っている。大事な大事な写真。それが此処を特定出来た理由とどう繋がる?


「…あの写真、そこの公園で撮りましたよね、?公園から見渡してたらこのマンションの玄関のオート電気が反応してたみたいだったので!誰か通ったのかなと思って、、この屋上まで来てみました!」


…驚くほど頭良い奴ばっかりでムカついてくる。美佳らしいな、本当に。



「フェンスから降りろください!僕、見下ろされるのは嫌いです!」


「…そうだね、ごめん。」






「このマンションのオートロック、どうやって取ったわけ、??美佳は知らないよね、?番号。」


「簡単です!あれくらいのロックなら僕特性のピック使って開けることが出来ますよ?あ、でも流石にそれはしてません!ロックの所の指紋を読んできました!」

「僕が知りたいですっ!ここは誰の家です?何でここに来たんですか?」



…此処、は


「……写真に写ってた女の子が、生前ここのマンションに住んでたんだよ。疲れた時とか、よく此処で話聞いてもらってたんだ。」



「…その話!詳しく聞かせやがれください!」


「……そんな、話すような事じゃないよ。」


「じゃあその話じゃなくていいです!僕が気になるのはてめーが倒れた理由です!」



「…凄く、悲しんでましたよ。莉愛の野郎も葵の姉貴も。コノハの負担をこれ以上増やしたら殺しますよ。」


「……ん、そっか。謝らないとね。」


「、、これ以上の心配事を増やさないでください。何に悩んでるんですか?」


「…悪夢だよ。」


「……ん?悪夢、ですか?」


「そうそう笑、ただの夢だよ。情けないって想われた?」


「……別に思いません。あっ、そうだ。それなら病院行きましょう!僕は行きませんけど!!」


「…病院、?何で、?」


「精神科、僕は嫌いです。心に土足で踏み入られる感じが特に!!でも、、」




「…それくらいしか、僕からアドバイスとか、、出来ることはありませんから。」


「……そうだね、行ってくるよ。」

「帰ろう。葵達に謝らなきゃ。」
















「痛”ツ…ッ!?!」


「腕、動かさないでね。バイ菌が入って病気になっちゃうかもしれないからね。」


「は…い……ツ」


「…苦しかったね。大丈夫。今日は誰かと来た、?」


「一応、、彼女が来てます、、」


「そう。少し、彼女さんと二人で話してくるから包帯巻いてもらっててね。」






「あのっ、維申、は、大丈夫ですか、?」


「……少し、怪我が酷いですね。自傷行為を辞めてもらう事を第一に考えていきましょう。なるべくストレスを与えないようにして、。悪夢まで訴えていますね。彼女さんに悪夢の対処をお任せしたいです。改善の余地が無さそうでしたらまたご相談頂く方針で。」


「…分かりました。」


「弱音を吐かない様な人は、救える人も限られてきます。私達も尽力しますが、彼女さん。貴方も、メンタルケアに御協力願います。」


「勿論ですっ、!!私に出来ることは何でもします!」











第1回(2回は未定)

莉愛ちゃんによるメンタルケア講座


ポイントの説明です。

今回防ぐのは「自傷行為」「悪夢」になります。


自傷行為の対策は簡単です。

自傷行為させる時間を奪うのです。

一日中纏わりつきましょう。

御手洗や入浴時は物を持ち込ませないように監視しておくのも大切です。

相手が嫌がろうと性懲りも無くついて行く精神力が必要です。




はい。そうですね。そう、悪夢の対策ですよね?問題は。









「分かんないよおおおおおおおぉぉ」




対策講座 終了



「お疲れ様、莉愛ちゃん…」


「どうしたらいいのぉぉコノハぁぁあ」


悪夢にどう干渉しろと?無理に起こして睡眠不足にさせてはいけない。けれど、夢なんてどうしようも無い。枕の下に幸せな絵でも差し込んでおいてやろうか?

どうしたら良いか全く思いつかない。こういう時は美佳の真似をして床をのたうち回る。ちなみに特に意味は無い。コノハの苦笑いは気にしない方向性で。


「莉愛ぁー風呂上がったよ、」


うっ、、解決法が思い浮かばないまま夜になってしまった……いっその事、本人に聞いてみるか?嫌でも、どうやって、?




「あツ…あのツ、、維申……さん、」


「…大丈夫?莉愛?疲れてる?」


疲れてるに決まってんだろとツッコミたくなるが病んでるタイプの人にそんなことを言ってはいけない。

どうした莉愛、落ち着け。そう、落ち着け莉愛。私は完璧な莉愛。弱音は吐かない。落ち着きを取り戻せ、莉愛。

頭のバグが起きている。思考力が限界に達し た。

「……はぁ、維申、、ねぇ、夢…って、どうしたらいいの?莉愛に出来ること、ある?」



「……夢、か。そうだなぁ…」

「もし、莉愛が嫌じゃなければ、、俺が寝るまで、部屋に居て欲しい。」



…なんだその可愛いお願いは。


「勿論!!誠心誠意承らせて頂きますっ、!、!、」


「……莉愛、やっぱり疲れてるならいいよ、?他の人に頼むし…」


「いいぃぃぃぃやぁぁぁぁだぁぁぁぁ!!!!!莉愛がやる莉愛が隣に居るもんっっっ!」



5歳児になったレベルで叫び、また床をのたうち回る。維申は驚いた目で見ていたけれど、通りすがりの美佳には引かれた目で見られる。いや本当にお前にだけは引かれたくないね。


……ちなみに多分これは私史上中々の黒歴史になる。




「…莉愛ちゃん、?落ち着こうね。」


「コノハぁ、、維申が意地悪してくるからぁ……」


「…俺悪い?」


多分悪くない。けど、何だか虚無に向かってキレるのも変なので八つ当たりで維申を悪者に仕立てておこう。


「もぅ…莉愛寝るから維申、早く寝て!」


「……えぇ、うん、、まぁ、そう、か?分かったから押すな、!」



「おやすみっ、!コノハ!」

「おやすみ。コノハ。」



「おやすみなさい、2人とも。維申君、何かあったら迷わずに呼んでくださいね。」













「はい、寝ろ。」


「…え、?莉愛、?そんなガン見されてると寝付けないんだけど。」


「……だって、、足の踏み場がないんだけど。」



維申が体調を崩したあの日、棚のものやパソコンを巻き込んで倒れたため多くの機械が美佳の修理行きになった…けれど、美佳の部屋は美佳のよく分からない発明だらけで足の踏み場が無い。よって、維申の部屋に美佳が入って修理する形になっていた。

床には触れていいのか不安な装置だらけ、、あいつの事だ。触れたら爆発するものを平気で人の部屋に放置しているかもしれない。

……この間私の部屋も少し焦げた。


「……寝れない、?」


「…視線が気になる。」


「……改善方法が見つからないんだけど。」



「…入って。」



維申が布団を捲る。入れ、って…一緒に寝ようと言う意味か。特に嫌でもなんでもないし、そのくらいで彼が落ち着くならやってあげない事もない。



「……狭い。」


考えてみれば当たり前だ、1人用ベッドだし。



「…こっち来て。」

「あと、俺が魘されてても起こさないでね。大丈夫だから。」


抱きしめられる、と言うよりかは抱き抱えられる。私は抱き枕じゃ無いんですけど。…でも、居心地は悪くない。このまま寝てやらないことも無い、。



「……維申はこの体制キツくないの、?」



…返事が返ってこない。疲れたせいなのか?彼はこの一瞬で眠りについている。取り敢えずは眠れるくらいには快適だ……ということ、?にしておこう。





……眠気が襲ってきた頃。急に私の眠気が冷めた。


彼が私を抱き締める力が、急に強くなったから。



「……維申?」




また返事は無い。が、荒れた呼吸音が聞こえる。


そうか。これが、悪夢を見ているという状況か。きっと、維申は今。夢で凄く苦しんでいる。私がこうするだけじゃ、駄目か。

起こすべきか?流石に酷く魘されている。これ以上苦しませたくない。けれど、維申は起こして欲しくないと言った。




好きな人だから、お願いを聞くべきか?

好きな人だから、お願いを聞かないべきか?



…もう少しだけ、様子を見よう。それでも酷くなり続けたら、起こす。

今出来ること、は、、、


維申に抱き抱えられていたが、ふっと布団から抜け出す。こういう時、この小さい体は便利なものだ。

立って改めて確認するだけでも、酷い汗に酷い魘され具合。これを毎日していたのか。気づけなかった私が憎い。


少しでも、役に立てれば。




維申の震える手に、自分の手を重ねる。

これは、私が昔苦しんでいた時によく、、維申がこうしてくれた、もの。


気持ち程度だが、維申の震えが少し収まってくれる。莉愛なんかで、、維申の傷を癒せるならいくらでも利用して欲しい。




維申の手に、あやす様に触れる。これで、落ち着けることを私は知っていたから。

これは莉愛の恩返し。鶴みたいに何かを形には残せないし、ウミガメのように竜宮城に連れ行ってあげることは出来ないけれど。




苦しい時にこうしてくれたら、嬉しいでしょ?

これは、維申が教えてくれたんだからね。



触れ続けた手の震えが次第に無くなっていく。

本当に、良かった。維申の気持ちを、莉愛が少しでも軽くしてあげられるのなら……



これからも、いくらでも付き合うよ。

貴方が私に、昔。そうしてくれたみたいにね。















「ただいまっ、!」


「おかえりなさい!葵さん、!」


「葵の姉貴ー!遅いですよ!もう僕寝ちゃいます!」



「あーもう本当にあのクソ上司許さないわっ、!」


「おぉ、!僕もそのセリフ使ってみたいです!」


「美佳ちゃんは、多分使うことは無いかなぁ……あはは、」



「そんなことはどうでもいいの、!維申は、!?大丈夫だった、!?」



朝早い時間に仕事で家を出た。精神科に行った維申はどうなった、?どうにかなったのか、?




「見てみます?結構、安心出来る方向に落ち着いてますよ。」


コノハがこれだけ穏やかに笑っているということは……自体は終息の兆しが見えたのだろう。本当に、、良かった。



コノハと美佳に手招きされて、3人で維申の部屋に向かう。

コノハが軽く扉を開くと、彼女の顔が緩む。



「…寝ちゃってますね、2人とも。」


「……莉愛の野郎ー、、そんな体制で寝たら体が痛くなりますよ、!」


「……本当に、良かった。」



維申は比較的に穏やかな顔をして眠りについている。莉愛が何かしてくれたお陰だろう。

莉愛が床に膝をつき、上半身をうつ伏せにベッドに乗せたまま眠ってしまっている。美佳の言う通り、体を痛めてしまうかもしれない。


「莉愛のこと、移動させてあげよっか。莉愛の部屋まで運ぶから、ベッド開けといてくれるかしら?」


「分かりました!用意しますね、!」

「僕もお手伝いします!」



莉愛の体を持ち上げようとして気づく。


「コノハ、やっぱり、クッションと毛布をここに持ってきてくれる?動かせそうにないわ…」


「…?分かりました、!」


……手なんか繋いじゃって。初々しいカップルかっ、、、なんてね。



…この幸せ者め。辛くなったらこんなに心配してくれる人が居て、可愛い彼女に慰められて。羨ましいわ。




「葵の姉貴?どうしました?黙り込んで」


「……んー、?維申に心の中で文句言ってたところ。」


「葵の姉貴もこうやって欲しいですか?嫉妬ですか?莉愛の野郎にこれやれって頼んでおいてあげましょうか?」


「はいそこ、人のセンシティブにしてるとこに触れない。」


「反省しますっ!」



「…本当に、良かったわね、、。何も起きなくて。」


「……そうですね。僕らにめっちゃ労力掛けさせた代償は必要ですけど!」


「何を代償にするつもり?また発明用の資金でも強請るの?」


「人聞き悪いですねぇ葵の姉貴。それに、お金は求めませんよ。」




「二度とこんな騒ぎで僕とコノハに迷惑をかけないこと!!ですよ!」


「…そう」


「……少しだけ、言い換えると…その、」



「……幸せに、なって欲しいです、ね。」




…美佳の初めて見る顔。心の底から、想いが伝わる。


「そうだね、、幸せになってもらわなきゃ、困るわ。」


……本当に、、本当に。






幸せにしてあげる。から、もう二度と、絶対に幸せを自ら手放さないでね。


凄く、愛されてるんだから。
















「本当に良かった、!ここの精神科ならいつでも頼って良いからね。沢山の治療法が有るし、また無理をして倒れてしまってからじゃ遅いから、、」




「はいっ、!本当にお世話になりました…」

「このバカは私が何とかします!本当にありがとうございました!」



バカって言われたことは触れないでおくか。事実莉愛達に迷惑は掛けたんだ。

精神科とも話は終わったし、暫くは俺の話題も上がらないだろう。


「維申ー!どこ行くー?お昼ご飯駅前で食べちゃう?」


「うん、そうだね、。莉愛が好きなもの食べに行こうか。」


「…あんまりお腹空いてなければファミレスとかにしておく?莉愛は何でも食べれるよ~っ!」


…あまり腹が空いていない。莉愛はオブラートに包んで言ってくれた。

有り得ないほどの食欲の無さはもちろん健在。正直茶碗一杯分を食べ切れるかも分からない。


「莉愛、、の、好きな物にしよう?俺に合わせてたら莉愛の好きな物食べれないでしょ?」



「……そうだね!よーしお寿司食べよーっと!!」


軽く走り出す莉愛を追い掛けながら感じる。

莉愛の美しさに口元が緩む。








……莉愛の前では、嘘じゃない笑顔が出来る。






大丈夫と、偽るのは得意だ。心の傷が癒えたように振る舞う。葵達に心配をさせない。精神科と縁を切る。その為だけに、自分の心を押し込んでいる。

悪夢を見なくなったのは勿論、莉愛のお陰。本当に、全く悪夢を見ることは無くなった。

逆に言えば、治ったのは悪夢だけなんだよ。











苦しいよ。



助けて。莉愛。





俺はいつまで大丈夫を演じれば良いのか、教えてよ。




「わっ、!?危ないっ、」


「莉愛、、走っちゃダメ!!良いね、?また転びかけるよ?」


「うぅ…うん、、、」







「あ、あそこのお手洗い寄っていい、?お寿司屋さんの中だと混んでるかもしれないし、!」



…駄目だッ


「嫌……だ、、、ッ、行かないで…ッ」



馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿。俺の馬鹿。今すぐ莉愛の腕を掴むのをやめろ。莉愛に迷惑をかけるな。



「ぇ…嫌って、、、流石にトイレ一緒には無理だからね…?30秒で戻ってくる、!」



……莉愛が行ってしまう。駄目だ駄目だ駄目だ。嫌だ嫌だ嫌だ。

周りから冷たい視線が送られてくる。ナンパとでも思われたのか。今はそんなことどうでもいい。



…目を閉じる。隅に移動する。構える。




目の前から聞こえる声に、嫌でも体は反応してしまう。

そんなこの体が憎たらしくて堪らない。



「…い~しん、っ!元気~?」


整った白髪。スタイリッシュな服装。青い瞳。


間違いない、俺の記憶通りの明日香が目の前に立っている。






俺の、誰にも言っていない症状。

幻覚、及び幻聴。



1人になると必ず明日香が現れる。そして、俺の首を絞めてくる。


息が出来ない。幻覚だと分かっているのに、、幻影だって、理解しているのに。


明日香を助けられなかったのに、俺は莉愛を……選んで、、また失ってしまうかもしれない。

頭に残るのは明日香を救えなかった絶望感だけ。明日香が首を絞めないでいてくれるのは、俺が苦しんでいる時だけ。


俺がリスカでもしていれば、明日香はニッコリと笑顔を見せて隣に佇んでいる。


…莉愛と出掛けてるんだ。どうにか幻影を対処しなければ。



……咄嗟にカバンの外ポケットに忍ばせていたポーチからカッターを取り出す。

カチカチと音を立てながら刃が伸びていく。


…首に刃の側面を当てる。







突然彼氏に腕を掴まれて「行かないで」と言われた。困惑はするがある程度の精神の乱れはあっても不思議ではない。

約束していた30秒は少し過ぎてしまったか。早く戻ってあげないと。



お手洗いから出ると、立っていた場所に維申が居ない。少し当たりを見渡せば、端っこの方に服が見える。あまり目立たない場所に行かれると見つけにくくて困る。後で文句を言ってやろう。




「維申ーただい、、ま…ッ」


維申が首にカッターを突き立てようとしている。直ぐにカッターを取り上げる。維申の目はどこを見ているのか、まるで分からなかった。



「維申ッ、、維申ッ!、」



「……り、、ぁ……」



ようやく正気になってくれたか。色々問い詰めなければ。





莉愛が現れてくれたお陰だ。何とか思考が正常に作動する。

先程まで居た場所に明日香は居ない。



「どうして、また、、こんなに急にっ、?」


「……莉愛、、には、、言いたくない、んだよ、、、ッ」



莉愛に、明日香の話はなるべくしたくない。負担を掛けたくないというのもそうだが、単純に昔好きだった人を今愛している人の前で語りたくない。


「本当に、ごめんね、?大丈夫、もう、、大丈夫っ、!早くお昼ご飯食べに、、行こう、!ッ」


「…っ、、家に、帰る。」


「……莉愛、?」


「帰るよ。言いたくないじゃない。言って。これは権利じゃない。義務。」


「…」


幻覚の話をしろってことか。拒否するに決まっているだろう。何を考えている、?


「……拒否したら別れるから。」


……心臓が少し縮んだ。

脅し文句が怖い。莉愛と別れるのは、、当然1番嫌な選択だ。


「…分かった。」








コノハの入れてくれたお茶に口をつける。俺を中心に仕事で居ない葵を除いた3人が座っている。


…少しづつ、話していく。



俺の苦しみを、全部。



迷惑をかけると分かった上で。明日香のこと、全てをさらけ出していく。



明日香の葬式で味わった時の苦しみを思い出して。

聞き苦しい、涙混じりの汚い声を3人は必死に汲み取ってくれた。



震える手は莉愛が握ってくれた。いつもなら直ぐに落ち着けるのに、今は落ち着けない。




「……頑張ってきたねぇ、、維申。莉愛達に黙って全部抱えて、本当に凄いよ。よく頑張ったね。」


莉愛の声が耳に上手く入らない。


「けどね、?維申。」




「迷惑なんかじゃ、ないんだよ。」



共感を示すように美佳が首を縦に振る。


「僕達に隠し事をする方が迷惑です!どんどん悩みはぶちまけましょう!」


「私もそう思います。維申君。誰も、貴方に迷惑だなんて感情は抱きません。話してくれて、ありがとうございますニコッ」



「…ありがと」


震える声を必死に絞り出して、言葉にする。こんなに涙を流したのは明日香が死んだ時以来かもしれない。






「明日香ちゃんは、絶対に維申のこと恨んでなんてないよ。」

「僕、1つ提案します!」



「その、、ケンさん、?に会いに行ったらいいと思います!明日香ちゃん(?)の最後に立ち会ったのは多分その人ですよね?」



謙さん、に、会うか。考えたことも、無かった。


「…そうだね、行ってこようかな。」


「莉愛も着いていくっ、!」















「それじゃあ、行ってらっしゃい。頑張ってね。」

「僕も維申の兄貴を応援してますっ!」


…久しぶりに、ビビッドストリートに立ち寄る。行くのが怖かったんだ。避けていたんだ。



「……明日香ちゃんって、、どんな子だった?見た目!!莉愛より身長高かった、?胸大きかった、?維申の初恋って、、まさか何処かの財閥のお嬢様とか、?いや、、単純に超優しいとか、、、」


「ただの女の子だよ。執拗に俺に告白してきた意味も分からない。」



そう、49回…明日香から告白されているのだ。すべて断ったが。

明日香の愛を受け入れなかったことも、引け目に感じている。明日香を受け入れず、莉愛を受け入れたことになるから。




…WEEKEND GARAGEは営業中。此処を開けば謙さんに会える。戸に手をかけて暫く静止する。隣に立つ莉愛も、急かしはしなかった、。


戸を開ける、と、高らかな声が響く。



「居らっしゃい!!2人?なら此処空いてるよっ!」

「って、、莉愛ちゃん、、維申ッ、!?」



白石杏。謙さんの娘だ。

杏ちゃんの叫んだ声で、ある集団の視線が飛んでくる。


「維申、、っ、!お前!久しぶりだな、」



「彰人、くん?」


見れば、Vivid BAD SQUAD の他にも誰か居る。杏ちゃん達の仲間か。イベント仲間で、セトリを組んでいるのだろう。


「……謙さんに用事があるんだ。」








「…それなら、別室を用意しよう。」


部屋の奥から、謙さんが出てくる。


「…いつか必ず来ると思っていたさ。杏、少し店を頼む。」


「はーい!」




「維申、隣のお嬢さんは、、誰だ?」


「り、莉愛って言います!維申の彼女です、、!お願いしますっ、!」




「彼女……維申が、、?また性格でも変わったか?」


「…俺の過去は掘り返さないでください。明日香の話をしに来ました。」


「そうだな、俺からも伝えたいことが沢山ある。」











ガレージを1歩出ると、春の涼し気な風が過ぎていった。真っ黒な夜空も、もう気にしなくていい。もう、彼に門限は無いのだ。




「明日香?何してるの?」


「ん、いや、どっかでイベントやってないかな、?」


「探してみる?」


高校生になった私は、維申とあまりイベントに出ていなかった。またイベントに最強の歌を届けちゃおう!






……異変を、感じる。

あの人の動き、、変。







目の前で、人が刺される。



知らない人が、刺された。


「維申ッ!!逃げるよ」


半ば反射的に叫ぶ。警察、救急車、、色々あるがまずは保身だ。



それなのに、、


「維申ッ動いて、、!」


何が起きたかは想像出来た。

彼は中学生の時に親に刺されている。それを思い出してしまったのだろう。



無理矢理腕を引っ張る。が間に合わない。

フードを被った男のナイフが、維申の腹部に突立った。


彼が膝から崩れ落ちる。本能が、働く。



維申の事を、守らなければ。



ガレージの扉が開く。中からは謙さんが出てくる。謙さんに救急車や警察を呼んでもらうように叫び、男に視線を向ける。



次の瞬間、胸が裂けそうな程の痛みが襲ってきた。

男のナイフは私の肺を確実に貫いていた。



「痛ッ” 」


足で体を支えられなくなる。

ガレージの方向から、幼い声がする。


「お父さん、?」


駄目だっ、、出てきちゃダメだよッ、!!

杏ちゃん、!!!!



男のナイフの先が杏ちゃんに向く。

守らなければ。足が動かない。動かないっ。



維申が杏ちゃんを守ろうと近づき、抱き締める。ダメだよ、駄目。維申が狙われちゃう。

……足が、どうしても動かないよ…












どれくらい経ったんだろうか。

意識こそ飛んでいないが、何も考えられない。



救急車の音がする。少しだけ、、安心。






「何を言ってるんだ、!」

謙さん、、怒鳴ってる?どうかした、?まさか、、杏ちゃん、、大丈夫、?


「明日香、落ち着いて聞いてくれ。」


「はい、、?っ」


「……一度に運べるのは2人までだ。」



その一言で全てを察するものがある。



最初に刺されてしまっていた人。維申。私。

それだけで、怪我人は3人居ることになる。

それだけでは無い。街の人はもっと傷つけられた人も居るはずだ。


「大丈夫です、私は、、まだ、耐えられますっ、、、維申達を運んであげてください、」


意識の無い2人を守るしか選択肢には無い。












軽い手当を施された後、救急車は行ってしまう。


「ね、、謙、さん?」


「あんまり口を開くな。後で聞いてやる。」



……今じゃないと、駄目なんだよ。


「ねぇ、謙さん、お願い。今聞いて、?」





「私、きっと死んじゃう、、アニメでよく見る、自分の事だから死ぬのもわかるって、、本当なんだねぇ笑」


「明日香!諦めるな。大丈夫だからな。」



「沢山残したいの、、本当に、たくさん、、」





「謙さん達みたいに歌えたらなって、ずっと思ってた。ごめんね、謙さん。本当に、、こんな所で死んじゃったりしたら迷惑だよね、?」



「気にするな、お前は死なない、大丈夫。」


…苦しい。息が上手く出来ない。けれど、残さないといけない。



「維申、、に、伝えて欲しい。本当は、後でする予定だったんだけど、、好きって、、告白しておいて、、欲しいなぁ、、」



「自分で言うんだ、死ぬな。」


「えへへ、、維申、絶対に自分のこと責めちゃうと思うから、、よろしくね?」



口を開くのも限界だ。痛みが連鎖してる。死ぬんだ。嫌だな。


杏ちゃんと、、歌いたかったな。

維申、幸せになって欲しいんだけど、、な。

最後に守れて、良かったぁ、、。













「謙さん、、酷くないですか。そんな話、、、1度も聞いてないです。」



「…悪かったとは思ってる。ただ、しっかり街の皆でお前のことを心配していたんだ。お前が音楽の話をすると体調を崩してしまうことも、、、、自殺しようとしたことでさえ、全て見ていた。」

「お前は、本当にあの荒れた時期にこの話をして欲しかったか?」






「確かに、あの時の俺じゃ信じてなかったかも、、ですね。」






「ありがとうございました。また、、色々考えてみます。」














どうなんだろうな。明日香が本当に俺の事恨んでないのかなんて、分からない。


それでも、、信じるだけでも変わる。

別に、忘れなくていい。明日香の幻影を、消そうとなんてしなくていいんだ。

でしょ、?






「おはよう、明日香、」


「おはよ~っ、!維申!!今日は?お仕事〜?」


「うん、仕事。明日香も来るの、?」


「着いてく〜!」








「おはよ、莉愛。」


「おはよう、維申、、今日は悪夢、大丈夫だった?」


「うん、大丈夫。」




維申の顔はあの時を境にずっと良くなった。

本人曰く、幻影を見ることは変わらないが、幻影に首を絞められたりすることはもう無くなったらしい。


幻影とさえ、共存してしまう維申は本当に強いな。






「莉愛、行ってくるね!」


「うん、!行ってらっしゃい!」



うん、それでも、、維申を幸せにしてあげられるのは莉愛も同じだもん!!


大丈夫、任せて。

幸せにしてあげるのは得意だよ。

一緒に幸せになろうね。







「莉愛ちゃんだっけ?あの子の誕生日プレゼントだよね?探してるの!」


「うん、そうだね。」


「……維申、私より莉愛ちゃんのことの方が好きー?」


「さぁねー同じくらい両方大好きだよ。」


「浮気者ー!莉愛ちゃんのこと、私の倍は愛してあげなさいっ!!」




「大丈夫、明日香のお陰で、人を愛するのは得意になったんだ🎶」


「それは良かったーっ!」



「俺は、幸せになるよ。」


「私も、応援してるねっ!」


「明日香も幸せにさせるよ。」


「……期待してる。」



…苦手なことばっかりな俺にとって。

仲間は最高の光であって。

光は、いつまでも心に残り続ける。

そう思えたのは、明日香のお陰。


大丈夫。もう、演じたりしない。

俺は、、、俺の生き方を見つけられたから。

それでも私は愛されたい

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