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【風真side】
俺は両親の仕事の関係で、山々に囲まれた青花私立高校にやってきた。
青花私立高校は4年前に建てられた結構新しめな学校なので、綺麗な校舎である。
学校訪問の日
「風真さんは、何か質問やこの学校の知りたいことなど、他にありますか?」
母との会話が終わり、校長先生が問いかける。
「凛…いや、ありません」
「そうですか。今日はこれで終わりなので、自由に校舎を回っても構いません」
「ありがとうございました」
母は立って校長先生にお辞儀をしたので、俺も後に続いた。
校長室の扉付近で母に校舎の中をもう一度回ってくると言って、ポケットに手を突っ込んで考えながら歩き出す。
この学校には中庭、食堂、図書室、コンビニなどが設置されていたり、 学校の近くには、男女別の生徒専用のマンションと、先生専用のアパートが完備されており、家から遠い人や親が深夜出勤などの理由で利用している人が多い。
中庭にある木製のベンチに座り、空を見上げる。
「…」
今、あの子は元気に暮らしてるのだろうか。友達と楽しく話したり遊んだりしてるのかな…この学校にいたら嬉しいな…ま、居ないだろうな。
前を向いて戻ることにした。
戻ると親が先生らしき女性の人と話していた。
「あら、戻ってきたのね」
母の声で先生らしき人が、俺に気づいて笑顔を作る。
「この子が私の自慢の息子の」
「風真です」
頭を下げるが、「頭を上げて」と言われて頭を上げる。
「すごく礼儀正しくて羨ましいわ。うちの息子なんて風真くんのように、知らない人がいたら恥ずかしがってすぐ私の後ろに隠れて 」
自分の子供と他の子供を区別する、子供を愛している優しい親だ。
そう思ったのに突然俺を真上から見るような目。
「でも、すぐ他人に頭を下げちゃダメよ」
押し潰されないように耐える。
「そういえば、自己紹介してなかったわね。私の名前は、小林美波。風真くんの担任になる人です。初めてこの学校に配属されたから、あなたと同じこの学校の一年生。これからよろしくね、風真くん」
また優しそうな笑顔を作る先生に戻った。
それから担任と解散して、俺と母は待機させておいた車に乗って家に帰った。
あれから一週間が経ち、ついに翌日が初登校日となるなか、俺は部屋で黙々と勉強をしていた。
普通は明日のために備え?などしないといけないのだが、何もやることがなくノートと向き合っていた。
コンコン。ドアを叩く音がする。ドアの方に体を向け 「はい」と二言。
「坊ちゃん。おばあです」
「どうぞ」
「失礼しますね」
中に入ってきたのは、俺が産まれる前から家政婦として雇われている、おばあさんの家政婦さん。
俺はおばあと呼んでいる。 昔から自分のことをおばあと俺に自己紹介してからである。
「おばあ、どうしたの?」
「明日が初登校日と言うことなので、坊ちゃんの好きなケーキ作ってきましたよ」
おばあの手には苺のショートケーキがのった皿。
「ありがとうね、おばあ」
笑顔でケーキを貰うと、おばあは俺の部屋から出ていき、フォークを持って おばあ手作りのケーキを一口サイズに切りながら食べる。
うん、いつも通りうまい。
俺は結構な程に甘党だ。週に一回はケーキ屋に行ってモンブランやチーズタルトなどなど、買ってきて笑顔で食べる。でも、お祝いの日にはおばあがホールケーキを作ってくれる。
おばあは昔からお菓子作りが大好きで、家政婦として雇われる前に、 五年ほど有名なケーキ屋さんで働いていたらしいのだが、色々ありケーキ屋の仕事を辞め、それから俺の親父から拾われてこの家の家政婦になったらしい。
そんなことを考えていたら、ケーキがもう無くなってしまった。
「もっと食べたい…」
机に頬をつけて、ぼーっとしながらお行儀悪く、フォークで皿を優しくカツン、カツンとリズムよく叩く。
あの子は今どこで何をしてるんだろう。あの子はまだ俺のこと覚えていてくれてるのかな…
「坊ちゃん…坊ちゃん起きてください」
「ん… 」
横におばあがいて、俺は目を擦りながら机から顔を離す。
「もう夕方ですよ」
「夕方…」
外を見ると日が半まで沈んでいた。
俺は寝てたのか…
「よくお眠りになっていましたよ」
「… 」
「ご飯ができておりますので、お食べ下さい」
「父と母は?」
「お二人は先にお食べになり、奥様はリビングに、旦那様は書斎でお仕事を」
「…そうか」
早くも翌日になり後輩の入学式と、俺の転校して初登校、当日。
入学式の最後の方に、全校生徒に向けて自己紹介をしてください。と言われたので俺の番が来るまで待つ。
先生たちの隣に座りたくねーと思いながら数十分過ごす。でも、そんなことは出来ないので周りを見渡す。
「…今年から二年生のクラスに新しい生徒がやってきました。皆さん楽しみにしててくださいね」
校長先生の話が終わる。もう次か。
「次は、今年から2年生のクラスに入る転校生を紹介します。神崎風真さんお願いします」
「はい」
まじめんどくせぇ…
ステージに上がってお辞儀をする。
でも面倒くささを感じさせない爽やかな笑顔で。
「皆さん初めまして、神崎 風真と言います」
全校生徒をステージ上から見渡す。
「親の仕事の関係で、東京からこの青花私立高校に転校してきました。この学校にいた期間で言うと今日入学してきた後輩と同じ一年生なので、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、お手柔らかにお願いします」
お辞儀で閉めてステージから降りる。
はぁ…これくらいでいいか。それにしてもそんなことあるわけないよな…
心に靄ができる中、入学式は何事もなく無事に終わりを告げた。
俺は校長室に顔を出した。
「よく来たね、風真くん」
「まあ、まだ俺の教室を教えられてませんから」
校長は軽く笑いながら話す。
「そうだね。さあそこに座って。入学式のスピーチは疲れただろう」
俺は無言で校長の前のソファーに座る。
「君のクラスは二年五組だ。そして知っての通り君の担任は、小林美波先生だ。分からないことがあれば小林先生に相談してくれ」
「分かりました」
校長室を出ようとした時。
「あぁ、それと君が探していた、山岡凛(やまおかりん)という生徒はこの学校にはいません」
母さんが言ったのか。でもやっぱりそうなのか…
「そう…ですか」
「これからもご贔屓に」
扉をバタンっと閉める。
鞄を肩にかけ、ポケットに手を入れて自分の教室へ歩き出す。
コツ、コツと靴の音が響き渡るくらい誰もいなく静かな廊下。
凛はこの学校にいない…か。
教室の前に来て、扉を息良いよく開ける。
「あー来た来た」
中に入る。
「改めて自己紹介をお願いします」
小林先生に言われ教壇に上がる。
なんか全てが面倒くさくなって、冷たく冷ややかな目をしながらクラス中を見渡す。
「えー東京から来ました。神崎風真です。よろしくお願いします」
みんな 興味深そうに俺を見てくる。
「はーい、ありがとうございました。風真くんは後ろの空いてる席に座ってね」
後ろの空いてる席に向かう時隣の席のやつを見ると、俺に興味がなくずっと外を眺めていた女がこちらを一瞬見る。
その姿があいつに似ていた。
凛…
俺は考えすぎだと思いながら自分の席に座る。
それからみんなの自己紹介などが始まり、隣の席の奴に回ってきた。
彼女は教壇に上がり、他人事のように話す。
「柴村幸美です。趣味は読書です」
それだけ言って戻って来た。
柴村幸美…やはり違う人なのか。それか、双子で隠し子として生きて来たのか?帰ったら調べさせるか。
それから自己紹介も終わり、三十分間のフリー休憩が始まる。
多くの人達が俺の周りに集まり始める。
名札の色を見るとほとんどが青色=二年生だ。
こんなに同学年の奴らが集まってくるのに対し、隣の席の幸美という奴は俺に見向きもしない。
冷たい視線を送ってもこっちを振り向かない。
「ねえねえ。風真くんて好きな人とかいるの?」
話しかけた方を見れば、顔に命をかけてる嫌いなタイプの女子だ。
俺は低い声で尋ねる。
「そんな事聞いてどうするんですか」
そう言うと女は、少し焦りながら言った。
「あ、えっと…いるんだったら誰かな〜って気になっただけ」
は?何言ってんだ
「俺に好きな人がいたとして、お前に教えてなんのメリットになる?なら教える必要はあるのか」
そう言った瞬間、隣のやつが少し笑ったような気がする。なんか嬉しい気持ちになる。
質問してきた女はは俺に論破されると思わず、恥ずかしくて逃げていった。
隣のやつがまた笑った気がした。
「すごいね!神崎くん!」
「神崎さんスゴすぎ!」
みんなから絶賛を受ける。
「あの子もこれで落ち着けばいいんだけど…」
聞く限りさっきのやつはよくそんな事をしているらしい。
面白いことを思いついき一瞬だけ笑顔を作る。
「そいつの名前を教えてくれないか?」
三十分休憩が終わり、授業前の教科書など配られる時間になった。
暇すぎて頬杖をつき、教科書をペラペラ…パタンと閉じた時、隣のやつがなんか筆箱の中を漁って焦っていた。
…そいえばさっき先生が、マイネームペンで名前を書いてとか言ってたな。
俺はノートの切れ端の紙に書いて、隣を見ると人生が終わった…って感じで頭を抱えていて笑みを浮かべる。
俺は先生に気づかれないように手のひらを見せる。帰ってきた手紙はには二言しか書かれていなかったが嬉しかった。
俺は約束通りマイネームペンを貸す。
やっぱ似てんなー…
ペンを返された時、付箋も貰った。
放課後になり、俺は学校から少し離れたところに車を呼んでいた。なんとなく面倒くさいから。
後部座席の扉を開ける。
「おかえりなさいませ。お坊ちゃん」
「ただいま。じぃ」
この白髪おじいちゃんは俺専属の運転手。いつもじいやと呼んでいる。
「初日はどうでしたか?」
車に乗る。
「楽しかったよ。それに…」
「それは良かったですね」
何故か言葉を遮られた。
まあ分かっていた。じぃはいつも俺が凛のことを話そうとするたび、遮ってくる。名前も出してないのに俺の気持ちが、全て見透かされているような。
三十分休憩の最後の方…
周りがざわめく中、俺の近くにいた女の子が声を出す。
「いいよ」
その子は色々教えてくれた。
「あの子の名前は朝倉瑠愛(あさくらるな)。瑠愛は気に入った人なら誰でも。その人に恋人がいたとしても、めちゃくちゃボディータッチしたりして奪おうとしてくる。瑠愛に抗議してもはぐらかして…だからみんなから女の敵とか言われてる」
まじが、ヤバいやつじゃねえか。
「瑠愛は自分がいちばん可愛いって思ってる人だから。それに反するとやばいことになるから神崎くんも気をつけてね」
これまで自分がやばい人だと思わないなんてヤバすぎだろ。
俺は外を見ながら笑ってしまう。 それを見てじぃはため息をつく。
これから面白くなる事を俺は知っていた、ような気がする。
コメント
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読ませていただきました!風真くんの心情の描き方がとても繊細で、特に「凛」という存在に縛られながらも新しい環境に馴染もうとするもどかしさが伝わってきました。隣の席の幸美さんに向ける「似てるけど違う」という複雑な視線、そして初日に感じた小さなときめき——まだ2話目なのに、すでにこの先の関係性が気になって仕方ないです☺️ おばあちゃんのケーキエピソードもあたたかくて、風真くんの甘党な一面にほっこりしました。続きが楽しみです!
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