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かすかに震えていた瑞樹の指が、慈しむような力加減で、柊吾の手を丸ごとそっと包み込んでいく。
「……ありがとうございます。……っ」
かすれた声で感謝を口にした瑞樹は、溢れそうになる涙を堪えるように一度深く目を閉じた。そして、次に瞼を開いた時、そこには迷いのない、強い光が宿っていた。
組み合わされた手から伝わる体温が、熱いくらいに指先へと染み込んでくる。瑞樹は吸い寄せられるように柊吾との距離を縮め、その眼差しを逃がさないように捉えた。
「世界中の人が柊吾さんを忘れたとしても、俺が居ます。俺だけは、絶対に貴方を忘れたりしない」
真剣な表情で、祈るようにまっすぐ告げられた言葉。
言葉のひとつひとつが染み渡るたび、ずっと冷え切っていた柊吾の胸の奥が、痛いほど熱く震えた。
今すぐにでも、彼の胸に飛び込みたい。そんな衝動に駆られ顔を上げた瞬間、躊躇いがちに柊吾を見つめていた瑞樹が、静かに問いかけてきた。
「あの……抱きしめても、いいですか?」
真っ直ぐに自分を求める瑞樹の眼差しに、胸の奥がぎゅっと跳ねる。飛び込みたい気持ちとは裏腹に急に気恥ずかしさが押し寄せてきて、柊吾は声が出せないまま、小さくこくりと頷くのが限界だった。
そっとのばされた瑞樹の腕が、柊吾の背中に回る。その温もりに身を委ねるように、柊吾もゆっくりと自ら腕を回し返し、彼の背中にそっと手を添えた。
重なり合う体温を感じながら、至近距離で自然と目が合う。吸い寄せられるように、互いの唇が少しずつ近づいていった。
——あと数ミリで、触れ合う。
その瞬間。
ガチャガチャッ!
ドアノブを乱暴に揺らす甲高い音が静寂を切り裂いた。
「——っ!?」
二人は弾かれたようにバッと体を離す。
「柊吾、まだ出てこないの? 母さん、洩れちゃいそう……っ」
ドアの向こうから聞こえてきたのは、真理子の切羽詰まった声だった。
自分の部屋をトイレだと勘違いしているのだと瞬時に理解した柊吾は、顔を跳ね上げる。甘い空気は一瞬で吹き飛び、一気に現実に引き戻された。
「す、すみません、黒瀬さん……!」
瑞樹に一言叫ぶように謝罪すると、柊吾はバタバタと駆け寄り、勢いよくドアを開けた。不安そうに足をもごもごさせている真理子の手を取り、「こっちだよ、お母さん」と慌ただしく廊下の奥のトイレへと連れて行く。
取り残された部屋で、瑞樹はふっと肩の力を抜いた。
さっきまでの緊張や固さが嘘のように、その表情からはどこか憑き物が落ちたような柔らかさが生まれていた。
しばらくして、無事に真理子をトイレに滑り込ませ、心底ホッとした様子で柊吾が部屋へ戻ってくる。その顔には、切迫した出来事が一段落した安心感と同時に、どこか「未遂」に終わってしまったことへの猛烈な寂しさが隠しきれずに滲み出ていた。
そんな柊吾の表情に気づき、瑞樹は少しだけ口元を緩める。
「今日はもう、帰りますね」
「え……」
露骨に寂しそうな顔をする柊吾に、瑞樹は優しく目を細め、耳元に届くような静かな声で囁いた。
「続きは……また今度。ね?」
#三角関係
霞花怜
1,066
#イラスト部屋
寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
695
その約束を残して、瑞樹は自分の部屋へと戻っていった。
コメント
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みぅ🤍🥀です。 96話読んだよ…っ。 もう、瑞樹さんの「俺だけは絶対に忘れたりしない」って台詞が心臓にズドンってきた。めちゃくちゃ重くて深い愛、感じる…。甘い雰囲気になりかけたところでお母さんの乱入、タイミング悪すぎて笑っちゃったけど(笑)、でもその後の「続きはまた今度」って瑞樹さんの余裕ある感じ、逆に大人っぽくてドキドキしたよ。柊吾さんの寂しそうな顔も可愛くて、次が待ち遠しい…!🤍