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その日の夜、東京のあるカラオケ店の一室には、普段戦場を駆け抜ける呪術師たちが集まっていた。何も知らない一般客の間ではただの飲み会のように見えるだろうが、この場には、日常的な戦闘を生き抜いてきた者たちが、短い休息を求めて集まったのだ。
虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇、そして乙骨憂太。普段は真剣に戦っている彼らが、今夜はただの仲間として、呪霊を気にすることなくマイクを握っている。
「みんな、今日は戦いを忘れて楽しもうぜ!」虎杖が元気よく言いながら、マイクを取り、最初に歌い始める。
「これ、俺の十八番だからな!」と自信満々に言うと、彼は力強く歌い出した。曲は、まさかの失恋ソング。歌詞の中の熱い想いが、普段の虎杖には見せない一面を見せつけていた。彼の姿に、仲間たちは少し驚きながらも、笑顔を見せる。
「お前、意外に歌うのうまいな…」釘崎が笑いながら言った。
「おお、ありがとう!これでもちょっと練習してたんだよな。」虎杖はにっこりと笑い返す。
次に歌うのは、当然、伏黒恵だ。歌の選曲は、まさかのロック。普段の彼の冷徹なイメージからは想像できないほど、感情を込めて歌う姿に、釘崎は思わずクスクスと笑ってしまう。
「何そのギャップ。」釘崎がからかうように言うと、伏黒は少し照れくさそうに目を逸らす。
「うるさい。」と一言だけ返し、恥ずかしそうにマイクを返すが、その顔は少し赤らんでいる。
そして、最後にマイクを握るのは乙骨憂太。彼は少し周囲を見回し、少しだけ迷った後、静かに歌い始めた。その歌声は意外にも伸びやかで、完璧なまでにリズムを捉えていた。少し前までは、戦場での冷徹な顔ばかり見ていたが、今この瞬間に彼は、戦いのない世界での楽しみを感じているように見えた。
歌い終わった乙骨に、釘崎が拍手を送る。「さすがだな、乙骨。お前、ボカロの達人かよ。」
乙骨は照れながらも、ちょっと小さな笑みを浮かべる。「いや、たまにはね。」
その後、みんなが歌った曲は、どれも普段の戦闘では決して見せない一面を引き出していた。どんなに厳しい状況にあっても、彼らはまだこうして笑い合える時間を持っている。呪術師としての宿命を背負いながらも、少しでもその重荷を軽くするために、この時間を大切にしているのだ。
「さて、そろそろ切り上げようか?」釘崎が言うと、みんなが頷いた。
「まあ、また今度な。次はもっとやろうぜ!」虎杖が声を上げると、伏黒も同意する。
「次の戦闘の前にでも、また来よう。」と乙骨が続ける。
外はまだ夜が深く、次の戦いを前にして、彼らは一瞬だけ日常に戻った。しかし、戦いはすぐそこまで迫っている。どんなに楽しんでいても、呪術師たちには決して平穏無事な時間は訪れない。
その晩のカラオケは、彼らにとって忘れられないひとときとなった。