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シリル「……。」

シリルは扉の前でノックをしようと手を構える。しかし、その手をすぐに下げてしまう。

シリル「…はぁ…。」

一呼吸置くと、シリルは扉をノックする。

シリル「そこにジーク君居る?」

アリィ「居るよー」

ジーク「んー。」

扉の向こうから2人の声が聞こえる。

シリル(起こしちゃったかな…)

アリィ「入ってきていいよー」

シリル「うん、ありがとう。」

そう言ってシリルは部屋の中に入る。

シリル「ごめん、起こしちゃった…?」

アリィ「ううん、元々起きてたから大丈夫。」

ジーク「いっはい、どうしたんら?」

ジークが口をもごもごさせながら、聞く。

シリル「…何食べてるの?」

ジーク「ひんご。アリィにつっこはれは。」

シリル「なんて?」

アリィ「りんごだよ。ジークが差し入れに持ってきてくれたんだ。で、美味しいから私だけ食べるのは勿体ないからジークにも食べさせてあげようと思って口に突っ込んだの。」

シリル「美味しい物を共有したいのは分かるけど、ヒトの口に突っ込んじゃいけません。」

アリィ「ジークみたいなこと言う…」

シリル「にしてもりんごなんてよく売ってたね。」

食べ終えたジークがアリィの代わりに答える。

ジーク「なんか、若干信じ難い話なんだけど…雨がずっと降ってて、気温が低くなったからワンチャン他の地域の種でも育つんじゃねって遊び半分でやったら本当に育ったらしい。」

シリル「いやすご!?えっでもりんごって果物でしょ?この環境じゃ木って…」

ジーク「それやったのセドリックさん。行ったことないけど、屋根のついた庭園があるらしくて。」

シリル「すっごい人生楽しんでそう…!」

ジーク「ほんとに多分あのヒト誰よりも楽しんでるよ。でもまさか本当に育つとは思ってなかったみたいで、町の人にお世話を頼む代わりに商売に使ってもいいって話だ。」

シリル「…色々規格外の人だね…」

アリィ「私もそう思う。あ、そういえば用があって来たんじゃないの?」

シリル「あ…うん。……。」

シリルは肯定して最後、何も喋らない。

ジーク「言いにくいなら場所を変えようか?俺で話しにくければ、アリィでもいいし。」

シリル「そこまで気を使ってもらわなくて大丈夫。大したこと…ではあるか…。」

アリィ「…話しにくいなら、無理に話す必要もないからね。」

シリル「…その…愚痴みたいなものなんだけど…」

ジーク「ああ。愚痴でも言って構わない。限界を迎えてヒトに暴力を振るうよりずっといいからな。好きに話すといい。」

アリィ「旅中のストレス管理は凄く大切だからね。…愚痴を言わないヒトなんて存在しないよ。居たら、そのヒトはもうとっくに限界を迎えてる。1度限界を迎えるともう、後戻りは出来なくなるから、話していいことだと思うよ。」

シリル「…君達凄く、他人なのに気にしてくれるんだね。」

アリィ「当たり前でしょ。チームなんだから。」

ジーク「チームを組むなら、相手を気遣うのは当たり前だろう。」

シリル「…イリアの話なんだけどさ。」

アリィ「うん。」

シリル「…ずっとイリアは死のうとしてるんだ。何度も止めてるんだけど、考えを変えてはくれなくて…アリィちゃんは休むべきだから、無理にとは言わないけど…ジークからも言って欲しい。」

ジーク「…イリアが死ぬのはお前は嫌か?」

シリル「当たり前だよ!だって僕イリアのこと好きだし…」

アリィ「えっ」

シリル「それに彼女が死のうとしている理由は…彼女はとにかく死ぬべきじゃない。」

ジーク「…分かった。やるだけやってみるが、あまり期待はしないでくれ。」


イリア「手に痒みあり…やっぱり水が原因ね。さて、次は水がどうしてそうなったかの原因だけど…この報告書だと手を洗い流したことが伝わらないから誤解を産みそうね…。…水路の水はどこから…もうこんな時間だし、流石にセドリックさん、起きてないかしら…。…少し気分転換しましょう。」

イリアは扉を勢いよく開ける。

イリア「あ。」

ジーク「〜〜!!

急な勢いに驚いたジークが、声にならない悲鳴をあげる。

イリア「うそ、そんなに…?」

ジーク「お、お前今何時だと思ってるんだ…」

イリア「何時?」

ジーク「2時だぞ2時…。あぁクソビビった…。」

イリア「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだけど…ん?ジークはどうして起きて…」

ジーク「おやすみ。」

イリア「こら待ちなさい。…何持ってるの?」

ジーク「何も。」

イリア「食べ物?」

ジーク「持ってないってば!」

イリア「なんで隠すのよ?」

ジークは痺れを切らし、手に持っていたパンを口に詰め込んでしまう。

イリア「あっ証拠隠滅された!」

ジーク「ほうおへのいほははらほ。」

イリア「食べきれてないわよ。お腹すいちゃったの?」

ジーク「…たまたま空いたとかじゃないけど…この時間いつも食べてる…」

イリア「いつも!?ずっとお腹空かせてたの!?それは良くないわよ。ご飯が足りてないなら言ってくれれば、量足したのに…。」

ジーク「あ、いや…量は足りてて…」

イリア「?」

イリアがジークの言葉を待っていると、ジークは観念したように答える。

ジーク「…俺って一口が小さいだろ?」

イリア「ええ。いつもシリルを見てるから男の子にしては少し珍しいなとは思ったけど。」

ジーク「元はまぁ結構開けれたんだけど、ちょっとトラウマで開けれなくなって…じゃなくて、一口が小さいって言っても、少食とかじゃないから食べるのに時間がかかるんだ。だからそれが嫌で…」

イリア「そんなの私達いくらでも待てるわよ。」

ジーク「むしろそうされるとなんていうか…お前ら2人ってほら、いつも食事の最中警戒してくれてるだろ?」

イリア「ん?」

ジーク「じ、自覚ないのか?いつも辺りを見回してるだろ?」

イリア「…確かに!言われてみて初めて気づいたかも…。」

ジーク「えぇ…。」

イリア「とにかくそこまで気を使ってもらうと、食べにくいとかかしら?」

ジーク「…ああ。」

イリア「そんなこと気にしなくてもいいのに…。でも自覚がそもそも私たちになかったものね。シリルと相談してみるわ。話してくれてありがとう。私達と、チーム組む前はどうしてたの?」

ジーク「アリィは俺の食べるスピードが遅いの知ってるから、満腹になるまで食べてた。」

イリア「そうなのね。ジーク、あまり私達に気を使わなくて大丈夫よ。」

ジーク「あぁ。…もう目が完全に覚めた…。」

イリア「私も今寝れそうにないし、さっきの話して頂戴よ。」

ジーク「さっきの?」

イリア「トラウマの。嫌だったらいいけど、なるべく配慮した方がいいじゃない。」

ジーク「あぁ…。別に大したことじゃないんだ。ただ…昔大口を開けて食べようとしたらさ、顎がカクッて言ってさ…そこまではよかったんだけど…その時一緒に狩りしてた仲間がさ…顎が外れかけてるとか、顎取れたら一生食事できないなって言われてそこから…。」

イリア「こっわ。あるわよねぇ。大人がタチの悪い冗談を言ってトラウマになること。」

ジーク「お前にもなにかあるのか?」

イリア「私?私は…風船が怖いわね。」

ジーク「風船?」

イリア「ええ。風船をずっと持ってると、風船と一緒に風に攫われちゃうって言われて。まぁ半分両親のせいでもあるんだけど…。」

ジーク「ほう。」

イリア「両親に冗談半分で実験で風船で飛ばされそうになったことがあるのよね…。」

ジーク「そ、それ大丈夫か…?というかお前、自分の不満とかそういうの言えたんだな。」

イリア「言う時は言うわよ。あれは酷かった…。」

ジーク「じゃあなんで自分が死にたい理由は教えてやらないんだ?」

イリアは目をぱちくりとさせる。

イリア「シリルから聞いたの?」

ジーク「ああ。シリルの為にも本当は秘密にしてやろうと思ったんだが、生憎そこまで器用じゃなくってな。詳しく話を聞けば、死にたい理由は曖昧にしか教えてくれなかったって。教えてやればいいのに。」

イリア「簡単に言うけれど…」

ジーク「何年も一緒に居たんだろ?なら説明してやるべきだ。…その方がまだ受け入れやすいものだ。それは分かるだろう?…短い付き合いだけど、俺達だって何も思わずには居られない。シリルにだけは教えた方がいいと俺は思う。」

イリア「君は…」

ジーク「?」

イリア「止めようとは思わないの?」

ジーク「判断材料が足りないから中立だ。」

イリア「…そう。」

ジーク「話しにくければ俺が仲介してやろうか?今回は秘密にするのは無理だけど。」

イリア「秘密にする必要は無いわ。…私、貴方に話したいこともあったし…シリルに話す予行演習に付き添ってくれる?」

ジーク「もちろん。」

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