イリア「…とにかく貴方は悠久の国、フィヌノア国には行かない方がいいと思う。私の憶測でしかないけど…。」
ジーク「冗談だよな?」
イリア「そう見える?」
ジーク「…まぁ頭には入れとくよ。それよりもシリルに話す覚悟は出来たか?」
イリア「……。」
ジーク「確かに話しにくい内容かもしれないけど…自分の発明で沢山の人を殺したからって言うのは、でも腹括るしかないぞ。」
イリア「…そうね。ちゃんと話してみるわ。」
ジーク「あぁ。いい感じに眠くなってきたし、俺は寝るな。おやすみ。」
イリア「おやすみ。」
ジークはセドリックに用意された個室の扉を閉める。
イリア「…情けないわね。私よりもずっーと幼いのに、あの子達の方がしっかりしてるわね…。」
シリル「アリィちゃん、おはよう。」
アリィ「おはよう。ただの挨拶?」
シリル「うん。」
アリィ「真面目だね。ジークも挨拶に来ると思ったんだけど…来ないね。」
シリル「呼んだんだんけど、寝てるっぽかったよ。」
アリィ「珍しい。朝ジーク早いのに。あっさては夜更かししたな…?」
シリル「分かんないよ?ここいい寝具ばっかだからぐっすり寝ちゃってるのかも。」
アリィ「…小銅貨5枚。」
シリル「いいね。同じ額かけるよ。」
イリア「こら、いくら小銅貨だからってかけないの。」
シリル「イリア。」
イリア「この賭けは無効よ。私の夜更かしに付き合ってもらったから本人の意思じゃないわ。」
アリィ「そうだったの?」
イリア「ええ。私はセドリックさんと話をしてくるけど、賭け事はしないこと。」
シリル&アリィ「はーい…。」
イリア「シリル、今日も手伝ってくれるかしら?」
シリル「…君が危険なことをしないならね。」
イリア「今回はする予定はないわ。」
シリル「今回だけじゃ困るよ…」
イリア「…ごめんなさい。それも説明ちゃんとするから。」
シリルは目をぱちくりとさせる。
シリル「…分かった。アリィちゃんゆっくり休んでてね。」
アリィ「うん、ありがとう。」
セドリック「水路の出処?」
イリア「ええ。」
セドリック「やっぱりそこが問題かね…」
イリア「まだ憶測でしかないわ。何か問題でもあるの?」
セドリック「…この町はな、昔はここから1番近い、時の国に所属していたんだ。」
シリル「時計が有名な国だよね?」
イリア「知ってるの?」
シリル「ちょっとだけね。昔、任務で行った仲間がお土産に時計をくれたんだ。」
セドリック「その時の国から水を引っ張ってきて水路で、俺達は生きてたんだが…」
イリア「が?」
セドリック「…その国が内戦で分断しちまったんだよ。国が文字通り真っ二つ。1個増えた訳だ。」
イリア&シリル「は!?」
セドリック「今は、永夜の国と恒陽の国になってる。…一応ここは恒陽の国の所属になってるみたいだが…自力で下手なことすれば…分かるだろ?」
ブライア「間違いなくコイツの首は永夜の国に持ってかれるだろうね。」
セドリック「政治戦争には巻き込まれたくないのでね。少し遠いが、1番近いオアシスから引っ張りあげるように変えたんだ。…だからそこかもしれない。少し遠くなる訳だが…」
イリア「日帰りで帰ってこれそう?」
セドリック「まぁ少し帰りは遅くなるだろうが、多分ギリギリ…」
イリア「なら大丈夫よ。早速行ってくるわ。シリル、護衛をお願いね。」
シリル「任せて。」
シリル「道中暇だし聞かせてよ。」
イリア「…そうね。…どこから…貴方は、貴方の傭兵団は、アヴィニア人の保護をしてるのよね?」
シリル「うん。そうだけど…」
イリア「…私はね、アヴィニア人の故郷、”桃源郷”を壊滅状態に追いやった張本人なの。」
シリルが息を飲む。
シリル「何を言って…それだと色々おかしいよ。」
イリア「そうね。…ごめんなさい、私嘘をついてたの。本当は18なんかじゃない。もっと年齢行ってるの。」
シリル「…人間じゃなかったの?」
イリア「半分は正解。でも半分は人間。…私は人間に限りなく寄せただけの、この世界にどこも存在していない生命。…ジェイン夫妻が気まぐれに作って成功してしまった作品。私は、”テオス”の完成形、イリア・ジェイン。もちろん、事故では死ぬわ。でも、私には寿命がないの。」
シリル「…じゃあ今まで僕がした話も…」
イリア「…ごめんなさい。知らないふりをしてたの。」
シリル(こんな時、どう声をかけたらいいのか僕には分からない。そもそも黙って聞くべきなのか、声をかけるべきかも。)
ただシリルは息を飲んだ。砂の乾いた音だけが、耳に残った。
ジーク「おはよう、アリィ。」
アリィ「もうこんにちはだよ。」
ジーク「えっ嘘今何時?」
アリィ「11時。」
ジーク「うわ…寝すぎた…。」
アリィ「珍しい。ジークって、髪ストレートなのに寝癖付いてるよ。」
ジーク「え?さっき水つけたんだけどな…。」
アリィ「じゃ諦めるしかないね。」
ジーク「これじゃだらしなく見られるな…。」
アリィ「寝癖はどうしようもないよ。」
ジーク「そういや2人は?」
アリィ「セドリックさんのところに行って、そのままここから1番近いオアシスに行ったみたい。」
ジーク「そうか。」
アリィ「ジーク、イリアに何か言った?」
ジーク「なんで?」
アリィ「だってイリアがシリルに話したいことがあるって言ってたから。」
ジーク「あぁ。言ったっていうか聞いただけだけどな。…話すんだな。ん、ポルポル居ないと思ったら、ずっとアリィのとこにいたのか。」
ポルポル「ギ…。」
アリィ「バレたらまずいからずっと荷物のフリしてくれてたんだよね。」
ポルポル「ギ…!」
ジーク「お利口さん。…2人を待ってる間、俺だけ暇だな。あ、そうだ。庭園行ってみようかな。皆入っていいみたいだし。」
アリィ「私も行きたい。」
ジーク「え…俺はいいけど…体は大丈夫なのか?」
アリィ「軽いお散歩程度ならいいって。体力も落ちちゃうし…」
ジーク「一応、お医者さんに聞いてくるな。」
アリィ「私って信用ない…。」
ポルポル「ギ…?」
シリル「こりゃもう毒沼だね。」
イリア「……これどうしろって言うのよ…。」
2人は既に死んでいる巨大な悪魔の前に立ち尽くす。その悪魔の首から上は、目標地点であったオアシスに浸かっていた。
イリア「シリルの予想で合ってると思う。一応確認してもらえるかしら。」
シリル「うん。」
シリルはそう言うと、悪魔の腹をナイフで切り裂く。
イリア「相変わらず切れ味いいわね。人間も簡単に切れそう…。」
シリル「いいの使ってるからね!って人間を切ろうとしないの…。うん、やっぱり胃袋と似た袋みたいなのがある。」
2人は目を見合わせる。
シリル「…一応動いてなければ遠距離でも出来ると思う。」
イリア「その前に二次被害の対策をしないと。どれだけの量があるか分からないし…掘りましょう。こんな大きな巨体運べないし。」
シリル「マジか…。」
イリアは早速手で砂を掘りながら、シリルを咎める。
イリア「ほら、口より手を動かす!」
シリル「…君って結構肉体派だよね。シャベルあるよ。」
イリア「ほんと?」
イリアがそう聞くと、シリルはポケットから出した大きなシャベルを渡す。
イリア「…待ってこれ持ち歩いていつ使うの…?」
シリル「死体埋め用。」
イリア「ひいいいいい!」
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