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翔と智也は、裏口から外に逃げ出し、校庭を横切った。
緊張感が漂う中、彼らは誰にも捕まることなく、隣接する公園へとたどり着いた。
公園には遊具や木々が点在し、隠れる場所が多い。
「少し休もう。」
翔が提案すると、智也は頷いた。
二人は木の陰に身を隠し、心臓が高鳴るのを静めるために深呼吸した。
「このままじゃ、いつか捕まっちゃうよ。どうする?」
智也は不安そうな表情で翔を見つめた。
「隠れながら、他の仲間を探そう。まだ、他の生徒も逃げているはずだ。」
翔は希望を持ちながら答えた。
しかし、彼の心の中には不安が広がっていた。
このゲームの真の恐ろしさが、これから明らかになるのではないかという恐怖だった。
数分後、彼らは公園の隅に座っていた時、他の生徒たちの姿を見かけた。
彼らは一緒に逃げていたが、明らかに動揺している様子だった。
「こっちに来て!」
翔が手を振り、仲間たちを呼んだ。
生徒たちが近づくと、翔は彼らに事情を説明した。
「今、鬼ごっこが始まった。捕まったらどうなるかわからない。みんなで一緒に隠れよう。」
「でも、どうやって逃げるんだ?」
一人の女生徒が不安そうに尋ねた。
「校内に戻るのは危険だ。公園の外に出て、誰か助けを呼びに行くしかない。」
翔は皆の表情を見つめ、彼らを励ました。
彼らは一緒に逃げることを決意し、夜の帳が降りてくる中、公園を後にした。
しかし、心の中には緊張感が残っていた。いつ襲われるかわからないという不安が、彼らの足取りを重くさせた。
彼らが公園を出て街へと向かう途中、急に後ろから大声が響いた。
「お前たち、捕まれ!」
それは鬼の声だった。
翔は振り返ると、鬼が一人、彼らに向かって突進してくるのを見た。
パニックが広がり、生徒たちは一斉に逃げ出した。
「分かれろ!隠れるんだ!」
翔は叫んだ。
智也と別れ、翔は近くのビルの陰に隠れた。
だが、逃げていく仲間の中には、混乱に駆られて一緒に逃げている生徒もいた。
翔の目に留まったのは、明らかに怯えている女生徒だった。
「こっちに来て!早く!」
翔は彼女を呼んだが、彼女は恐怖で動けずにいた。
その時、別の生徒が彼女を押しのけて、先に逃げてしまった。
翔は一瞬、彼の背中を見て「裏切りだ」と思った。
仲間を見捨てることができるのか。
翔の心に疑念が芽生えた。
「大丈夫、こっちだ!」
翔は女生徒を引き寄せ、彼女と共にビルの陰に隠れた。
「ありがとう…」
彼女は震える声で言った。
翔はその声にほっとしながらも、仲間の裏切りが心に残っていた。
やがて、鬼の足音が遠ざかっていくのを感じた。
翔は生徒たちを集めるために、再び街の中へと向かった。
「智也!智也はどこだ?」
彼は呼びかけたが、返事はなかった。
仲間が次々と逃げていく中、翔は一人でいる感覚が強まった。
彼はふと、智也を探している自分の姿が滑稽に思えた。
捕まるかもしれない恐怖に対抗するために、誰かを必要としていたのだ。
「みんな、どこにいるんだ…?」
翔の心の中に孤独が広がった。
その時、彼はあることに気づいた。
鬼ごっこの恐怖が生徒たちの心を引き裂き、仲間の絆が薄れていく様子を。
「このままじゃ、ダメだ…」
翔は再び立ち上がり、仲間を探し続けることを決意した。