…………Side 響
横向きで向かい合った琴音が、目の前で無防備に眠ってる…
合わせた唇から舌を出して、そのふっくらした琴音のそれを舐める
我ながら…いやらしいな…。
琴音に、しばらく会えないなんて言えば、変な誤解を生む心配はあった。
結果その通りだったし、琴音はずいぶんこじらせたみたいだ。
でも…あんな可愛い笑顔を見れば、思い切ってやってみてよかったと思う。
カフェの運営を成功に導く鍵、緑川コーヒーの令嬢、蘭子の出現には正直驚いた。
蘭子を武者小路グループに引き入れることができたら、琴音のための「koto.cafe」が、俄然現実味を帯びてくる。
腹をくくって、俺は河本と真莉を巻き込み、蘭子と外で会うことにしたんだ。
2人を巻き込んだ理由はいろいろあるが、一番は琴音に変な誤解をされないため。
作戦はあっさり成功して、緑川コーヒーを味方に引き入れることができた。
結果を知らせるため、カフェ運営の責任者を頼んでいた未里子夫妻に連絡をしてみれば、なんと引っ越しをするというから…閃いた。
琴音の謎の引っ越し屋バイトのことは、すでに真莉に白状させている。
もしや…と、未里子の家で張ってみれば、難なく可愛い琴音が引っかかったというわけだ。
FUWARIの経営危機、そして玲の琴音への執着を理由に、勝手に内定取り消しをしたのは俺だが…あの日泣かせたことを忘れることはできなかった。
琴音を想うからこそだったし、あいつも理解してくれたけど、あの言葉は胸に刺さったんだ。
「響と離れてからの私の10年を知らないくせに」
失った10年は取り戻せない。
だったらこれからの時間を、俺の隣で過ごす時間を…琴音にとってこれ以上ない幸せなものにするために…。
それが、FUWARIを奪って泣かせた俺から、琴音へ贈る…
「koto.cafe」だった。
見下ろす琴音の寝顔に目をやって…
手を伸ばせば、完全に腕の中に閉じ込められる距離にいることに気づく。
無自覚に触れたら、勝手に体が動いてしまいそうで、どれほど琴音を渇望していたかを知る。
そりゃ…
いろいろ手を出したくなるのは否定しないが…そしたらきっと止められない。
止めなくてもいいのかもしれないが、今寝てるしな…
俺がいなくて眠れなかったのに、俺がいても眠れないってマズいだろ。
今まで…関係をすすめるチャンスには、ことごとく恵まれなかった。
大事な場面で2人きりになれなかったり、2人でいる時は何かしら揉めていたり。
だとしたら、今こそが最高のチャンスなのかもしれない。
それでもなぜか今は…
この穏やかな寝顔を見ていたい方が先だ。
この子のこんな無防備な姿を、俺は間近で見つめていられるんだ…って、言ってやりたい。
誰に…?
…最近、考えることがある。
もし、琴音が引っ越さなかったら。
あのままずっと、近所に住んでいたとしたら。
俺はもっともっと早い段階で、琴音に告白していただろう。
そしてきっと恋人になって、どれだけたくさんの思い出を共有したかな。
今頃…熟年夫婦みたいに遠慮のない関係になっていたかもしれない。
あの夜見た、真莉と琴音のように、しっくりした感じになれていたかな。
俺たちの抜けた10年を、実際に琴音と過ごしたのは、間違いなく真莉で…
そこには俺が決して入り込めない思い出、そして真莉の思いが…いくつもある。
あの夜、琴音に自分の上着を頭から被せた真莉を見て、なぜか強くそう思ったんだ。
バーで男に口説かれていたことなんて吹っ飛んだ。
俺の心臓を跳ねさせたのは、あの夜の真莉と琴音。
だから…あの時2人を見たことを、俺は口に出したくない。
ただ、「響に会えなくて眠れなかった」と言って、あんな泣き顔を見せる琴音がいるなら、それでいいんだ。
「…ん…ひび…き」
「…っ!」
琴音の方から抱きついてきて、腕の中にすっぽり入ってきた。
ロンTから太ももをさらけ出して、俺の足に絡みついてくる。
「あ〜あ…襲っちゃおっかな…」
眠る琴音にそんなことをする気なんてサラサラないくせに、わざとつぶやいてみる。
「…zzz」
穏やかな寝息しか聞こえてこない。
これからまた2人で暮らすようになって、体を重ねる日は、自然に訪れる。
それまで、焦るな俺。
そんなことを考えているそばから、妙に甘い匂いが鼻をつく。
シャンプーとは違う甘い匂い…
石鹸の香りもまざって、ふと柔らかい体も感じる。
やっぱり…結構荒ぶるなぁ…
本能のままに動けば壊してしまいそうだし、理性を効かせてみれば動けない…
こんな状態で眠れるのかはおいといて、とりあえず、俺は無理矢理目を閉じてみることにした。
もう少しだけ、琴音を抱き寄せて…
コメント
6件
響のあらゆる力を使えば、もっと早くに琴音ちゃんを見付けられたんじゃないの?と今更ながらに思う(^O^;)
なんか響も辛い立場だよね。でも琴音ちゃんの心の中に住んでるのは響なんだから自信持って🫶🫶🫶早く響が願いが叶うように祈るわ🤞🤞🤞
愛しい琴音ちゃんが無防備な姿で寝てたら響はひたすら悶々としちゃうよね。ただ今は焦らずに大切にしたい気持ちだってある。 見守ってるよ🥰💛