テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
朝の光が、洋館の大きな窓から差し込んでいた。
廊下には革靴の音が規則正しく響く。
組織の朝は早い。
それぞれが自分の役割を果たすため、静かに動き始めていた。
その空気の中、一人だけ場違いな声が響く。
rm「うわぁ……!」
きょろきょろと辺りを見回しながら歩く青年。
少し大きめのバッグを肩に掛け、期待と緊張が入り混じった表情を浮かべている。
――りもこん。
今日、この組織へ入る新人だった。
rm「広いなぁ……。」
思わず漏れた独り言に、近くを歩いていた構成員が苦笑する。
mb「迷うなよ、新人。」
rm「あっ、はい!」
ぺこりと頭を下げる。
その素直さに、構成員は少しだけ笑った。
mb「その調子なら大丈夫かもな。」
しかし、その笑顔はすぐに消える。
mb「……いや。」
mb「教育係が、あの人だからな。」
rm「あの人?」
mb「会えば分かる。」
それだけ言って立ち去ってしまった。
りもこんは首をかしげる。
(そんなに怖い人なのかな。)
⸻
応接室。
ノックをすると、穏やかな声が返ってきた。
bs「入りなさい。」
部屋に入ると、ボスが立ち上がって迎えてくれる。
bs「君がりもこんだね。」
rm「はい! 本日からよろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げる。
ボスは優しく笑った。
mb「そんなに緊張しなくていい。」
vs「ここでは仲間同士、支え合うことが大切だからね。」
その言葉に、りもこんは少し肩の力を抜いた。
rm「ありがとうございます!」
bs「君には今日から教育係をつける。」
ボスは部屋の扉へ視線を向ける。
bs「入りなさい。」
ゆっくりと扉が開く。
黒いコート。
整った足取り。
無駄のない動き。
部屋へ入ってきた青年は、静かに頭を下げた。
fu「お呼びでしょうか。」
bs「紹介しよう。」
ボスは穏やかに笑う。
bs「彼がふうはやだ。今日から君の教育係になる。」
りもこんは目を輝かせた。
rm「よろしくお願いします!」
勢いよく手を差し出す。
しかし。
ふうはやはその手を見つめるだけだった。
数秒の沈黙。
やがて、小さく口を開く。
fu「……よろしく。」
握手はしない。
そのまま踵を返す。
fu「ついてこい。」
rm「え、あっ、はい!」
慌てて後を追うりもこん。
ボスはそんな二人の背中を、穏やかな笑顔で見送っていた。
⸻
長い廊下を歩く。
ふうはやは一度も振り返らない。
りもこんは小走りで距離を詰めた。
rm「あの!」
fu「……。」
rm「ここって、何人くらいいるんですか?」
fu「百人ほど。」
rm「えぇ!?」
fu「静かにしろ。」
rm「あ、すみません……。」
また少し歩く。
沈黙が続く。
りもこんは話しかけるタイミングを探していた。
rm「……あの。」
fu「何だ。」
rm「好きな食べ物ってあります?」
ふうはやの足が止まる。
振り返る。
fu「その質問は任務に必要か。」
rm「い、いえ……。」
fu「なら聞くな。」
それだけ言って歩き出す。
りもこんは苦笑した。
(思ったよりずっと手強そうだ。)
でも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
冷たい。
近寄りがたい。
それでも、その瞳の奥にほんの少しだけ、言葉にできない寂しさのようなものを感じたから。
⸻
その頃。
ボスの部屋。
部屋には誰もいない。
ボスは机の上に置かれた一枚のプロフィールを手に取る。
『りもこん』
年齢、経歴、適性。
すべてに目を通したあと、静かに笑う。
bs「明るい性格……か。」
指先で紙を軽く叩く。
bs「いい。暗闇では、光ほど目立つものはない。」
プロフィールを閉じる。
窓の外では、庭を歩く二人の姿が小さく見えた。
一定の距離を保って歩くふうはや。
その後ろを懸命についていくりもこん。
ボスは目を細める。
bs「さて。君は、どこまで彼を変えられるかな。」
その声は期待というより、実験の結果を待つ研究者のようだった。
静かな笑みだけが、部屋に残る。
#syukz
華一
201
#ミステリー
コメント
1件
ふうはやの距離感、めっちゃ気になるね…! 握手を拒むシーンとか「任務に必要か」の返しにちょっとグッときた。 冷たいけど、りもこんが感じた「瞳の奥の寂しさ」がリアルで、これからの関係性が楽しみ。 ボスの「暗闇では光ほど目立つ」ってセリフも背筋が伸びる感じ。 次どうなるか、本当に気になるよ🔥