「……桜坂さん」
律の声は低く、しかし強く響いた。
「あなたは無駄なんかじゃありません」
華の目が驚きに見開かれる。
「失敗しても立ち上がる。その姿を見て勇気をもらってる人が、ここにいる。
俺も……スタッフのみんなも。お父様がどう言おうと、それが真実です」
律の瞳は真剣そのもので、揺らぎがなかった。
「俺にとって、桜坂さんは――」
そこで言葉を切り、律は小さく息をついた。
「……大切な人です」
その一言が、華の胸にまっすぐ届いた。
「律さん……」
涙が溢れそうになるのを、華は必死に堪えた。
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