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ヤマトと四方守神がアゲルを助けに行き、悪魔ルインとルシフェル、僕の三人は闇の中に残された。
「闇龍、ちょっといいですか」
「なんだ……ミカエル」
「僕とルシフェルを、天使の国へ送ってください」
突然の申し出に、ルシフェルは動揺する。
「ま、待てよミカエル! 僕は禁忌を犯しすぎたし、追放したのは君だろ!?」
「バベルに赦されたんだ。もういいだろ……」
そして、有無を言わさずに天使の国へ降り立つ。
「相変わらず……何もないところだよね」
「ほとんどの天使族は……地上界で人間に成りすまして秩序を守らせているからな……」
何もない、真っ白な空間。
ここに、長いことルシフェルを閉じ込めていた。
「うわっ!」
僕は、ルシフェルに光剣を投げ付けた。
「な、なんだよいきなり……!」
「僕と勝負をしよう、ルシフェル」
「は……?」
「魔法の力は無し。光剣のみを使った体術。それなら公平な勝負になるだろ」
「やっぱり……バベルが赦しても、ミカエルは僕のことを赦さない気なんだね……」
僕は、ここぞとばかりに大翼を広げる。
ルシフェルには、もうない翼。
「死ぬ気で掛かって来い!! ルシフェル!!」
「クソっ……!! 分かったよ……!!」
ルシフェルは、必死に光剣を掲げる。
しかし、魔法を使用しない戦いは公平……ではない。
天使族、いや、魔法の源の僕たちにとって、翼の有無というのは身体を動かすのに最も必要なものだった。
ルシフェルの鈍い動きは、僕を捉えることはできない。
「ハァハァ……趣味が悪いよな……。誰も見てないのにストレス発散でもしたいのか……?」
「ルシフェル……翼が欲しいか……?」
「は……? 堕天した僕にそんなこと出来ないことは分かってるだろ……?」
しかし、僕はニヤけた。
「唯一神バベル本人が、この世界の理を変えている。その今なら、理を変えることが出来る」
「それって……」
「僕の翼をあげるよ。そして、君が光の神になるんだ」
「それが『自身の権力も開け渡す』ことだと、分かってるんだよな……? また僕が裏切ったらどうする……? 君に力は無いんだぞ……」
僕は、自身の大翼をスゥッと消滅させる。
「さあ、受け取りなさい、ルシフェル」
「正気か……?」
恐る恐る、ルシフェルは僕の手に輝く、光のエネルギーをその身に受け渡される。
そして、ばさっと、白く綺麗な大翼が現れた。
「これで……ミカエルは……」
「うん。ただの人間になった。光魔法が扱えるだけの、ただの凡人になったわけだね」
「これから……どうするの……?」
「さて、風の赴くままに考えてみようかな。この世界の終焉は免れた。バベルも七神も無事だったしね」
そして、僕はルシフェルに背を向けて去った。
――
アゲルを連れ、地上界に戻った僕は、炎龍に跨るカエンさんと合流していた。
「本当に全てを守り切るだなんて……。お見それしましたよ、バベル様」
「やめてくださいよ、カエンさん。僕一人じゃ何も出来ませんでしたから……」
そして、カエンさんは炎龍から飛び降りた。
「それでは、早速お話をしましょうか」
「はい」
僕が聞きたかったのは、龍族の一味のその後だ。
暴発を共に防ぎ、終焉を防いだ功労者たちとは言え、一度は七神に反旗を翻し、殺そうとした一味だ。
僕が許しても……他の神たちは……。
炎龍とカエンさんは、順番に彼らが今後どうするのか、どうなるかの調査に向かってもらっていた。
「ルークは、炎神にこき使われるみたいですよ」
「え……それだけ……?」
「ヴォルフは狼村に帰り、ガドラは持ち前の岩魔法で岩神と共に守護の国に暮らすそうです」
ガンマは闇龍で、ドレイクは死んだ……。
「フーリンは、自由の国を助けたとかで、暫くは自由の国と楽園の国が合併国になるそうですが、そこで弟と共に兵士になると言っていましたね」
七神も分かっていた。
この世界の、本当の想いを……。
「カエンさんは……」
すると、カエンさんはハットを僕に被せた。
「私は、ディムに仕えるとでもしましょう。禁忌を犯した罪滅ぼしをしなければなりませんからね」
そう言うと、今まで見せていた裏のありそうな笑みとは違う、朗らかな笑みを僕に見せた。
「あの……カエンさん……!」
ここで言わなきゃ……また繰り返してしまう……。
「同じ地球人の貴方に、お願いがあるんです……」
「お願い……?」
「唯一神の森羅万象の力を、譲り受けて貰えませんか……?」
それは、僕がこの世界の唯一神を降りると言う話。
そんな重責……帰ってくる言葉は当然……。
「分かりました。その命、僭越ながらお引き受けしましょう」
「え……? いいんですか……?」
「はい。子供に世界の神なんて、務まりませんよ」
そう言うと、またしてもカエンさんは笑った。
そして、僕に手を差し出す。
「さあ、力を」
「は、はい……」
僕は言われるがままに、その力をカエンさんに渡す。
「お疲れ様でした、唯一神バベル。そして、おかえりなさい、ヤマトくん」
気が付いたら、僕は涙が溢れてしまっていた。
夕暮れに染まる中、荒れ果てた広野が広がる。
「世界は……きっともっと素敵な世界になる。君が創り変えたこの世界は、きっと……」
そう言うと、カエンさんは炎龍に跨った。
「それでは、またいずれ、どこかで」
僕の姿は、ヤマトの姿に戻っていた。
「ハァ〜〜〜〜、疲れた……」
重責から解き放たれた最初の一言だった。
「それじゃあ、僕は……」
もう、行き先は決めている。
「アゲル、行こうか」
「うん! ヤマト!」
「おーい、俺たちを置いて、どこ行くってんだ?」
「ヤマト一人だと不安だしねー!」
「ぼうけんだー!!」
「ヤマト、着いて行く……」
アズマ、セーカ、カナン、ホクト。
そして、
「さあ、ボサっとしている暇はありませんよ、ヤマト!」
いつものニヤけた顔は、僕を振り回すんだ。
「あぁ! ミカエル!」
「本当にこの世界が平和になったのか、ちゃんと確認しに行かないといけません。神の加護もなくなりましたから、徒歩での大変な旅路になるでしょうね」
「えー、またそんな疲れる旅するのー……」
「アハハ、元々旅ってそんなモンだろ?」
僕は、ミカエルと、カナン、セーカ、アズマ、ホクト、そして、アゲルを連れて、自然の国に向かった。
僕たちの、リメイクは終わった。
そして、新しい冒険が始まった。