コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
番外章:灯火の静寂(しじま)
――エラ・ノア神殿の夜。
神殿の奥、星空の見える高台にゲズとセレナはいた。
地球での戦いから数日、久々の静けさだった。
小さな焚き火の揺らめきだけが、ふたりを照らしている。
セレナ「……星、綺麗ね」
ゲズ「ああ。昔……村の丘でもよく見たよ。こんなふうに、静かな夜空」
セレナ「……ゲズ。ねぇ、いい? 少しだけ、素直に話しても」
ゲズ「……うん」
セレナは膝を抱えながら、そっと視線をゲズに向ける。
セレナ「わたしね、あなたと一緒に戦うようになってから……少しずつ変われた気がするの。
最初は、ただ使命だからって思ってた。でも今は……あなたを守りたいって、思えるようになったの」
ゲズは少し驚いたように目を見開き、それから静かにうなずいた。
ゲズ「……俺も、同じかも。お前がそばにいてくれたから……“戦う理由”が、ただ怒りじゃなくなった。
お前が笑うと、安心するんだ。……生きててよかったって、思える」
セレナの瞳が、そっと揺れる。
セレナ「そんなこと……言われたら、もう……」
ふと沈黙が訪れる。
それは重くも、気まずくもない――ただ、あたたかい“空白”。
セレナ「ねぇ、ゲズ。……今だけ、戦いを忘れてもいいかな?」
ゲズは答えず、そっとセレナの肩に手を添えた。
火の灯りが揺れる中、ふたりの距離が、少しずつ、少しずつ縮まっていく。
セレナ「……キス、しても……いい?」
ゲズはわずかに笑い、静かに答える。
ゲズ「俺のほうが、先に言いたかった」
そして――
ふたりの唇は、そっと重なる。
焚き火の音が遠くなる。
星空の下で、世界が一瞬だけ、ふたりだけのものになった。
⸻
その夜、セレナはゲズの肩に寄り添いながら静かに眠り、
ゲズはその姿を、そっと見守りながら心に誓う。
ゲズ(絶対に、守り抜く。――もう、誰も失わせない)