テラーノベル
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翌日の江古田高校2年B組の教室。朝のホームルーム前、新一の席からは地鳴りのような怨嗟の声が漏れていた。
「マジであいつ、何しに東京まで来やがったんだ……っ!!」
新一は自分の席で机に突っ伏し、拳をギリッと握りしめていた。その背中からは、昨夜の獲物を逃した悔しさと、キッドへの執着が混ざり合ったすさまじい負のオーラが立ち上っている。
「お、おいおい、工藤……。朝から一段と凄まじいな」
前の席の椅子を後ろ前にして座った快斗は、引きつった笑みを浮かべながら新一を覗き込んだ。
「黒羽! 聞いてくれよ!」
新一は勢いよく顔を跳ね上げると、快斗の胸ぐら(ブレザーの襟元)をガシッと掴んで引き寄せた。潤んだ瞳が至近距離で快斗を睨みつける。
「夕べの対決、俺のワイヤーが完璧にキッドを捉えたんだ! シルクハットを叩き落として、あと数センチであいつのモノクルを剥ぎ取って、そのツラを拝めるところだったんだよ……ッ!」
「へ、へぇー、そりゃ惜しかったな……(笑)」
快斗は内心で滝のような冷や汗を流していた。
(惜しかったどころじゃねぇよ! あとコンマ数秒遅かったら、俺の顔面が白日の下に晒されて完全に詰んでたわ……!)
「だろ!? なのにさぁ!!」
新一はさらに顔を真っ赤にして、悔しそうに声を荒らげる。
「大阪のあのドジ!! 服部の野郎が、何もないところで勝手に転んで俺にスライディングかましてきやがったんだ! あいつのせいでバランス崩して、その隙にキッドに逃げられた……っ! 本当に意味がわかんねぇ、あいつ絶対にわざとやったろ!!」
新一が「わざと」という核心に半分掠りながら怒り狂っている姿を見て、快斗は心臓が止まるかと思った。
(服部……っ! ホントにお前、ナイスアシストすぎる……!! サンキュー西の探偵、今度大阪の方向いて高級寿司の詰合せでも送るわ……!)
快斗は心の中で平次に五体投地で感謝を捧げつつ、表面上は「ただの同級生」として新一の肩をポンポンと叩いた。
「ま、まあまあ落ち着けって工藤。服部だって、お前の応援に必死だったんだろ? ほら、気合が空回りしちゃうことってあるじゃん」
「応援なんて頼んでねぇ! あいつのせいで……あいつのせいで、俺はあいつの顔を、キッドの本当の姿を見るチャンスを失ったんだぞ……っ」
新一は再び机にガクッと突っ伏すと、自分のブレザーの胸元をぎゅっと掴んだ。悔しさの裏にあるのは、昨日からずっと新一の胸をかき乱している「キッドへの恋心」だ。顔を半分埋めながら、消え入りそうな声でぼそっと呟く。
「……あいつ、去り際に『今夜はこれで勘弁したってや』なんて服部が言ってたのを、からかうみたいに『よろしくお伝えください』とか言って笑ってやがったんだ。……顔が見えそうになった時、あいつ、一瞬すごく焦った顔したんだよな。……もし、本当にあいつの仮面を剥ぎ取ってたら、俺、どうなってたんだろ……」
新一の耳の根元が、みるみるうちに夕日のように赤く染まっていく。「顔が見えそうになった時、キッドが焦っていた」ということまで正確に見抜いていた探偵の観察眼にヒヤリとしつつも、快斗の胸の奥には、またしても甘い独占欲がトクトクと湧き上がっていた。
(焦るに決まってんだろ、お前の気迫が凄すぎて心臓止まるかと思ったわ……。でも、そこまで俺の顔が見たかったのかよ、名探偵)
快斗はフッと口元を緩めると、机に突っ伏したままの新一の頭を、昨日と同じように優しく、けれど少し意地悪に撫で回した。
「そんなに悔しいならさ、工藤。次あいつに会った時は、服部に邪魔されないように、俺がお前の後ろでしっかりあいつを捕まえててやろーか?」
「……っ、黒羽」
新一が指の隙間から、潤んだ瞳で快斗を見上げる。自分の正体を完全に隠したまま、キッドとしての執着も、黒羽としての優しさも、すべてを新一にぶつけて翻弄する大怪盗。
「……お前が協力してくれたら、百人力なんだけどな」
新一の無自覚な信頼の言葉に、今度は快斗の方が(うっ……かわいすぎる……!)とリアルに悶絶しかける番だった。
西の探偵のファインプレーによって守られた、世界一じれったくて甘い二人の距離感。快斗はポケットの中で、昨夜の平次からの「貸し一な、大泥棒さん」というニヤけた絵文字付きのメッセージ画面を思い出しながら、今日も愛しい探偵の隣で、幸せなポーカーフェイスを崩さずに微笑むのだった。
유리
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コメント
1件
うわああ朝から新一の怨嗟のオーラがすごい…!笑 でも「キッドの顔が見たかった」って悔しがってるの、絶対それだけじゃないやつじゃん…!顔赤くしてキッドの焦った顔思い出してるの完全に恋する名探偵じゃんね…😭💕 快斗が平次のアシストに感謝しつつ新一の頭撫でて「俺が捕まえてやろーか」って言うの、ずるすぎる…!二人とも無自覚に距離詰め合っててもう尊さで胸が痛いよ…!次回も楽しみにしてるね千導さん!🌸