テラーノベル
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牢屋の中、紗羅と健は背中を合わせて座り、囁き声だけで会話を交わしていた。
外には見張りの村人が二人。
交代は昼と夜の二回だけ。
『鉄格子は頑丈やけど……この床、ちょっと緩いとこある。』
健が足元を軽く蹴ると、石の板がカタカタと揺れた。
その隙間から、ひんやりした風が吹き上がってくる。
「地下の抜け道……?」
紗羅の胸が高鳴る。
もしそこから外へ出られれば、断罪の儀の前に逃げられるかもしれない。
だが、問題は見張りだ。
健はしばらく黙って考え込み、やがて小さく笑った。
『……紗羅、ちょっと演技できるか?』
「演技?」
『そうや。わざと倒れたフリをして、俺が看守を呼ぶ。その隙に俺が……』
健の瞳が鋭く光った。
あなたは一瞬ためらったが、うなずく。
「……わかった。やろう」
作戦は単純だが、失敗すれば二人とも即座に処刑だ。
それでも、ここで何もしなければ確実に日暮れと共に終わりが来る。
健は紗羅の手をぎゅっと握り、低く囁いた。
『俺ら、絶対生きて外出るで』
その瞬間、遠くから村の鐘が鳴り響いた。
脱出までのカウントダウンが、静かに始まった……。
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