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第5章. 自己愛と絶望


───……?」

意識が朦朧とする中。

静かに瞼をゆっくりと開くソニア。目を覚ますと、そこには灰色の天井が遍在していた。

仰向けになり、天井という空を見上げている。故郷を思い出す。

よく家族で草原のど真ん中で仰向けに眠っていたっけ。そんな回想が頭を一瞬で駆け巡る。

「……ここは…?」

見た事もない。

知らない天井を見上げ、

見つけた疑問を率直に呟いた。

ふと、いつものように何気なく起き上がろうと思い、

上半身を起こそうとした瞬間。

自分の四肢と首にひんやりとした冷たい感触と、締め上げるような苦痛に襲われた。

「……!?」

その刺激に、ソニアは暫く

理解が追いつかなかった。

しかし、徐々に分かってくる嫌な感覚。それは、

───両手両足。そして首を、

何かの台に拘束されていた。

手足を動かそうとしても硬く冷たい何かにより行動を阻まれる。

「な、何よこれ、!」

ガチャガチャと拘束具の音を荒立てながら脱出を試みる。

しかし、拘束は弛めることを知らなかった。

暫く拘束を取ろうと奮闘したが、

取ることは出来なかった。

暴れ疲れた頭で辺りを見渡す。

冷静になった五感が、体の中で嫌な予感を交差させる。

何かの動物が腐るような腐臭が、

鼻を劈くように刺激してきた。

その腐臭のする方に、首を捻らせ、視覚を移した。

「……っ!?きゃあああ、!!」

ソニアの双眸に映ったもの。

それは、顔以外の皮膚を真っ直ぐ切り裂かれ死んでいる、ミラと、顔以外の皮膚が切り裂かれ赤黒く変わってしまったマティスだった。ミラの奥にマティスが放置されていて、

ミラは何かを恨むように。

マティスは安らかな顔で。

首を捻らせ、こちらを見ていた。

腐った臭いの原因は、”これ”だった。内臓と血の臭い。

ソニアは、目の前の事から逃げるように目を閉じ、反対を向いた。

見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。分かりたくない。分かりたくない。分かりたくない。分かりたくない。分かりたくない。

ソニアは全身で絶叫していた。

今、隣には、変わり果てた姿で

こちらを凝視している、かつての親友がいる。

それを、理解したくない。

分かりたくない。そう心の中で

叫んでいた。

「……もう…いやぁっ……。」

心の声をそのまま零したと同時に、

───キィ……。

という、扉が開くような。何か重い金属を引きずるような、高い音が聞こえた。

ソニアの意識は完全に音に釘付けになっていた。

目を音のする方に向けると、

身動きの取れないこの状況で、

最悪の状況を想像してしまう。

「やぁ。ソニア。」

最悪の想像が当たってしまった。音の正体。それは、

金属で出来た扉を開いて不気味に微笑みこちらへ向かってくる、

───スコット神父だった。

「い、いやぁっ!!」

手足の拘束の解除を再度試みるが、拘束具は微動だにしなかった。嫌な汗が吹き出る。

「ずっと待っていたよ。この時をね。君を残しててよかった。

おかげで沢山実ってくれた。」

スコットは1歩ずつソニアの元へと向かう。

───恐怖。ソニアが感じたのは、それだけだった。

「いやぁっ!!来ないで!!」

心の内をそのまま叫んだ。

しかし、スコットは気にする様子もなく、ソニアに近寄る。

「いいよ。いいよぉ。もっと叫びなさい。そして聞かせなさい。

少女の絶叫と悲鳴を!!」

スコットはソニアの上半身に纏っていた白色の衣服を強引に掴むと、横に大きく破った。

「きゃあああ!」

ソニアの悲鳴と共に、白く美しい肌と白色の下着が露になる。

「……はぁ!!ソニア!もっと聞かせてくれ……!」

スコットは懐に隠していた小型のナイフを取り出し、ソニアに向けた。

ソニアは、いやぁ……!と拒絶するが、スコットはものともせずに、ソニアの頬を切り上げた。

傷は浅かったが、ソニアの頬に確かな痛みを感じた。

「痛っ……!!」

ソニアの心から漏れた悲鳴に、

スコットは愉快そうにニヤけた。

「じゃあ次だ。体を頂くよぉ!

素晴らしい遠吠えを聞かせておくれ……!」

スコットはそういうと、

欲望のまま、ソニアの白い下着と紫色のスカートを強引に剥いだ。

───ギシ……ギシ……

ソニアを乗せている拘束台が一定のリズムで音を鳴らす。

「はあ、はぁ、!いいよ。気持ちいいよ。ソニア。」

ソニアは反応を見せない。

絶望の表情のまま、まるで人形のように天井を見上げている。

体中には切り傷、打撲の後が、

無惨に残っていた。

あれから何時間経ったのだろうか。とスコットが腕時計を見た。もう時刻は6時を回っていた。拷問し、犯し、切り傷をつけ、叩き、腹を蹴って、その度に叫び声を聞く。

そんな過程を繰り返すうちに、

いつの間にか朝になってしまっていた。

スコットはぐちょ…という音と共にソニアから体を離し、

放置していた黒色のズボンを履いた。

「はぁ…はぁ……!…残念だ。ソニア。もう朝だ。あの子が楽に裂けるように、最後の仕上げをしないとねぇ。」

スコットはナイフを再びソニアの喉に突き立てるが、それでもソニアは無表情のまま動かなかった。スコットはつまらないなと溜息をつきながら呟くと、ナイフを降ろし、指でお腹につけた傷を抉りあげる。

「……が……ぁ…………。」

ソニアは微かに悲鳴をあげ、声のみで苦しみを吐き出した。

抵抗する元気も、嫌だと吐き捨てる気力も残っていなかった。

「ほら、まだ声が出るじゃないか。ならもう一度犯してあげよう。」

スコットは中指と薬指を立て、ソニアの下半身に向かって手を伸ばした。

───ソニア!!!!」

金属製の扉を重々しく開き、

ソニアの心配を口にした者達がいた。カイルとイザベルだった。

息を荒らげ、スコットとソニアの事を凝視する。

───約30分前。

カイルはイザベルの部屋を

訪れていた。

「イザベル!!ソニアはどこだ!!」

紫色の髪を七三分けにした少年、カイルが、息を荒らげながらイザベルに問いかける。

「カイル…!?え…?ソニアは

マティスが……」

イザベルはその問いに答えるが、

カイルの顔は増して暗くなる。

「……部屋に行ったがソニアはいなかった。マティスは朝起きたらベッドから消えていた。」

「あ、食堂に朝ご飯食べに行ってる……とか、?」

イザベルはベッドから降りて立ち上がり、見つかる期待を込めてカイルに駆け寄った。

しかし、カイルは首を横に振った。

「……いや、今は5時半だ。

お前ならまだしもこんな早朝に飯を食いに食堂に行くとは考えにくい。」

イザベルは、確かに。と頷くと共に、えっ。とも呟いた。

カイルは開けたままの部屋の扉に寄りかかり、呟いた。

「今この教会にはマティス、ソニア、神父様、そして俺とお前しかいない。ミラは誰かに殺された。」

辛そうな表情を見せ、苦悩を話すカイルだったが、どこか声に不安さを醸し出していた。

「ミラ……」

イザベルは悲観と絶望を言葉に乗せ、独り言としてミラの名前を呟いた。

それを見てカイルは表情をより暗くしたが、言葉を止める事はなかった。

「……神父様はどこだ。」

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