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土井どい恵介けいすけは社長室で小さな封筒を前に本日何度目になるか分からない溜め息を落とした。


表面に【退職願】と書かれたその封筒は、裏返すと〝倍相ばいしょう岳斗がくと〟と書かれている。


実はその封書をおいっ子の屋久蓑やくみの大葉たいように自宅で手渡されてからこちら、その封は未開封のままだ。


恵介は先日ふと思い立って、美住みすみ杏子あんずの父親・美住みすみ大地だいちに連絡を取った。


見合いに関する件でのお嬢さんへの非礼を謝罪したうえで杏子むすめさんに再度コンタクトを取ってもいいかどうか打診したのだが、最初は渋っていた大地も、恵介の話を聞くうちに懐柔されてきて、最終的には「お願いします」と言ってくれるようになっていた。


これでいつでも杏子に連絡が取れる。

(だけどまずは――)

杏子へ打診する前に、呼び出さねばならない相手がいる。


恵介は花菱はなびしマークが表示されたパソコンの画面を見て、もう一度吐息を落とした。



***



法忍ほうにん仁子じんこ荒木あらき羽理うりを一人ずつ呼び出して、自分に退職の意向があることを伝えたのはついさっきのことだ。


社長室からの呼び出しが彼の秘書を通してあった時、岳斗がくとはいよいよだな、と思った。


離席の際、一応部下の仁子と羽理に断りを入れて、ついでに部長室にいる屋久蓑やくみの大葉たいようにもしばらく席を空けることを告げようとしたのだけれど――。


「ちょっと待て、岳斗。俺も一緒に行く」


どうやら大葉たいようも自分同様社長室に呼ばれたとかで、一緒に行こうと声を掛けられる。


大葉たいようさんも?)


退職願を預けたのが大葉たいようだったからだろうか。


そんなことを思いながら、部長室から大葉たいようと連れ立って出てきたら、すぐさま荒木羽理と目が合った。


岳斗の方のみならず、大葉こいびとへも心配そうな眼差しを向けている彼女の視線を見て、岳斗はふと――それこそ何となく――、所在なげに自分の顔を見上げてきた杏子のことを思い出した。


(僕も早く杏子ちゃんと職場で会えるようになりたいな)


杏子には、岳斗がコノエ産業あちらへ移るまでは、大事を取って有給休暇で休むように伝えてあるけれど、それでも放っておけなくて、仕事後には毎日杏子の家を訪ねるようにしている岳斗だ。


毎日一緒に夕飯を食べるのを離れている間の約束にしてあったのだが、それでも杏子は日がな一日家にいて不安なんだろう。


あの一件以来、休むことを余儀なくされている会社のことをしきりに気にしていた。


(きっとそれもあと数日で終わりかな)


やっと杏子に、〝いつから〟コノエ産業に移れるかなど、具体的な話が出来そうだ。


そんなことを思いながら、岳斗は大葉たいようとともに社長室を目指した。



***



岳斗がくと大葉たいようと連れ立って社長室へ入るなり、社長の土井恵介が秘書に目配せをして、「悪いけど財務経理課の荒木あらき羽理うりさんも呼んでくれるかな?」と指示を出した。


「社長っ、何で……、荒木さんまで!?」


それは大葉たいようにとっても想定外だったらしい。


自分のすぐ横で社長に物申す大葉たいようの背中を見詰めながら、岳斗がくとは(荒木さんまでこっちに来たら、経理うちの課、法忍ほうにんさんだけになっちゃうな)と思って。(なるべく早めに戻らなきゃ仕事に支障が出ちゃうかな?)とか、でアレコレ考えていることに気が付いて、思わず苦笑した。


今から土恵ここを去ろうという人間が、何を烏滸おこがましいことを考えているんだ、と思ったからだ。


そうこうしていたらノックの音がして、荒木羽理が社長室へ現れた。それを見届けるなり土井恵介は「とりあえずあっちで話そうか」と、三人を社長室の真ん中へ配置された応接セットへとうながした。



***



いきなり倍相ばいしょう課長と大葉たいようが向かったはずの社長室へ呼ばれた羽理うりは、仁子じんこに不安そうな目で見送られながら、自身もソワソワとした心持ちで社長室へ向かった。


社長室に入るなり大葉たいようと目が合って、〝どういうことですか?〟と縋りつきたい衝動に駆られたけれど、そこは仕事中ということでグッと我慢したのだけれど。


そんな自分たちを応接セットへ座らせるなり、土井社長が大葉たいようへ向けて言うのだ。

あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

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