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の名前は白雪巴。

この世に生まれてもう数百年経つけれど、その間いろんなことをしてきたわ。退屈だったらそのへんにいる生き物を殺して遊んだりもしていたしね。

私がそんな暮らしをしていた時だったかしら。一人の女の子と出会ったの。

名前はそう──千の夜って書いてセンヤちゃん。綺麗な黒い髪が特徴の可愛らしい子よ。

彼女と出会った日はとても月がきれかったわ。満月から欠け始めた月を見てたら急にその子が現れたの。それで少し話をしてたんだけど、それがなんとも面白いのよ。まるでお人形さんみたいに整った顔をしているくせに言うことがいちいちぶっ飛んでるのよね。

まあ、でも、だからあの子は面白かったのかしら。普通の人間じゃできない経験をしているわけだしね。ただやっぱり、そのへんは羨ましいとは思うわよ。


***

この日、アタシたちは2人で街へと買い物に出ていた。お揃いのマフラーをしたあたしたちが歩くだけですれ違う人々が振り返っていくからなかなか気分が良いけれど――

『んー、なんかさっきも同じようなこと言ってたよね?』

「ああもう!うるさいなぁ!」

こうなるんだよなぁ!分かってたんだけどさ!! 

***

ただいまアタシはご機嫌ななめだった。その理由はこの後にわかると思う。

それは、このあとのデートのことを考えていたからだ。今度こそ彼女に告白しようと思っていた。そう、アタシたち付き合ってまだ数日なのだ。それなのにもう別れ話を切り出すなんて早すぎるだろ!

(ああ、こんなことになるならもっとたくさん一緒に遊んでおけばよかった。せめて最後に彼女の手作り弁当を食べたかったぜ……いやしかし!今日こそは必ず!必ず成功させるぞー!!)

1人拳を握って決意を固めていたときだった。背後から聞き覚えのある声が聞こえた。振り返るとそこにはやはり、見知った顔があったのだ。

(あちゃ~よりによってこいつかぁ……。こいつは苦手だわ……..)

そう思いながらも健屋さんからの誘いを断る理由もなく一緒にお昼を食べようとカフェへと誘われたのだが、そこで紹介された同僚を見て心底嫌そうな顔をしてしまう。

(なんで今日に限ってコイツがいるわけぇ?)

私が顔を出したことに驚いたのか、彼女は目を見開いてこちらを見たまま硬直していた。その表情は明らかに何かを言いたげではあったが無視をしてカウンターの端の方にある席へ向かう。そんな私達の間に座っている彼女の友人と思われる女学生も同じように驚いていたがこちらはすぐに愛想笑いを浮かべていた。

しかし隣にいるこの男は違ったようで不機嫌オーラを隠しきれていないどころか、あからさまな態度すら見せてくる始末だった。

まあそれは当然の反応と言えばそうなんだけどね……。だって彼女、私を殺した張本人だから。しかも何度も殺そうとしてきた奴よ。普通に考えれば警戒して近づきたくはないと思う。

(けど今はそんな態度見せるなよぉ!)

頼むから大人しくしていてくれと願わずにはいられなかった。とりあえず気まずさを感じつつもメニュー表を見ながら店員を呼びランチセットを二つ注文する。ちなみに健屋さんのオススメはこのパスタだと教えてくれたのだけど、生憎まだ頼んだことがないらしいので彼女に全て任せることにした 料理を待つ間手持ち無沙汰になった私たちは特に言葉を交わすこともなく静かに窓の外の風景を見つめている。別に意識してのことではなく、ただ何を話せばいいのか分からないだけなのだけれど……そんな風に私が考え事をしている間に彼はいつの間にかテーブルの上に置いてあったメニューを手に取りながらこちらへと視線を送っていた。その様子に気づいて目を向けると彼が突然ニヤリと笑って言った

「ねぇ知ってた?」

「えっと……何をですか?」

彼の質問の意図が全く理解できず思わず素直に疑問を口に出すと彼女は困った顔のまま微笑んで、「だからさぁ……」

と言った。

それからアタシの顔をじっと見つめると頬に手を添えてからゆっくりと首筋へと手を移動させる。指先が頸動脈に触れてから鎖骨を通り過ぎるようにして服の中まで入ってくるのを感じながらも彼の瞳からは目が離せない。そうして手が胸に到達した時に彼が少し驚いた表情をしたように見えたのだけどそれはきっとアタシが呼吸をするたびに上下していたからだろう。それにこの大きな二つの山は彼の好みとは程遠い。ただでさえ大きいものをわざわざ見せつけるような露出の多い格好をしておきながら、そんなことを考えている自分が滑稽だった。

彼の手によって徐々に脱がされていく衣服。それが腰のあたりに来た時になってようやく我に帰った。このままじゃ本当に最後までされてしまうと思ったアタシはなんとか彼を制止しようとする。しかしそれも虚しく結局全部脱がされてしまった上に押さえつけられてしまい身動きが取れなくなってしまった。そんな状態で首筋に顔を埋められてしまったせいか彼の荒い息遣いを直接肌で感じてしまうことになり背筋からゾクッとした何かがせり上がってくる。その瞬間――――

『ん……』……ここはどこだろうか。見たところどこかの家の中でベッドの上だということは何となくわかる。隣には気持ち良さそうに眠る恋人の姿があった。彼女の頬に手を当ててみるとすり寄ってきてとても愛らしいのだが一体いつの間にこのようなことになったのか記憶が全くなかった。昨晩の出来事を思い出そうとしてみたがその記憶は全くといっていいほど出てこないし何故ここにいるのかすらもわからない

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