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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ようやくこの日が来た。

この日の為にここまでひたすら頑張って来た。


ようやくここから新しく始まる。


「樹くん。こっちは準備出来たよ~」

「あ~栞サンキュー」


今日の会場の部屋で、どんどん完成していく様子を眺めながら声をかける。


「いよいよだね」

「あぁ。ようやくだな」

「にしてもすげーなこの会場」

「今日の樹くんには相応しい素晴らしい会場だと思うよ~。何? 緊張してんの?」

「いや・・・緊張してるっていうか。ホントにここまでちゃんと来れてよかったな~と思って」


今までいろんなことを犠牲にして、ここまでやって来た。

これはオレのプライドで、夢で、今のオレを証明するカタチで。

ようやく思い描いていたこの状況に、少し胸が熱くなる。


「樹くんなら大丈夫だと思ったよ。この実現にはさ、樹くんのいろんな想いがあって成り立ってるワケだからさ」


そう。

これは、自分に対しての挑戦で、守りたいモノで。

大切な人たちがいたからこそ、実現したこと。

オレがしなければいけなかった、オレだから出来たこと。

大切な人たちを守る為の今のオレのすべてがここにある。


「ようやく、なんかオレがオレでいる意味?みたいなの実感出来た気がする」

「うん。これは樹くんだから出来たことだよ。これで樹くんは周りの皆を幸せに出来るんだからさ」

「ならいいけど・・・」


透子にも、ちゃんと伝わればいいな・・・。


「透子さん今日来てくれるんでしょ?」

「あぁ、多分」

「多分?」

「透子の部署の部長に招待状渡してもらうようにお願いはした。まぁまさかそこにオレがいるとは思ってないだろうけどね」

「でもそれも全部透子さんと幸せになる為だって知ったら喜んでくれると思うよ」

「そう願ってる」


それから一時間後。


「樹。そろそろ挨拶スタンバイの時間だぞ」

「あぁ。了解」


神崎さんが呼びに来てくれて、その場所へと移動する。


「神崎さん。今日もいろいろ力を貸してくれてありがとう」

「約束だったからな。ここまでちゃんと見届けるって」

「オレ的にはやっぱり神崎さんいると心強い」


こうやって隣にいてくれることでオレはホント安心する。


「樹がずっとここまで頑張って来た姿、ずっと見て来たからね。オレも力になれることあれば嬉しいし」

「ありがとう」

「まぁここから樹はスタートだからな。しっかりやれよ」

「あぁ」


ここまでやってきたことが、ようやく今日カタチになる。

ずっと今までいろんな状況で支えてくれた神崎さんに見守られながら、オレはここから始まる場所へとスタンバイした。


「皆様、大変お待たせいたしました。只今より、REIジュエリーの新ブランド発表会を始めさせて頂きます」


そして、いよいよ始まった。


「皆様本日はお忙しい中、集まっていただきまして誠にありがとうございます。では、早速ですがまずは新ブランド立ち上げの発表前に弊社代表取締役REIKAよりご挨拶がございます。それでは、よろしくお願いします」

「本日は、REIジュエリー新ブランド発表会にお集まりいただきありがとうございます。ただいま、ご紹介に預かりました、REIジュエリーの代表を務めておりますREIKAでございます。皆様方には普段からREIジュエリーを愛していただき感謝しております。この度、弊社でブランドを新しく立ち上げることになりました。それに伴いその新ブランドは弊社の子会社として成り立ち、後々はREIジュエリーを引っ張るメインブランドとして成長させていきたいと思っております。まずはそちらの新ブランドの代表を新たに務めます人物からご挨拶させていただきます」


今日の主催者でもあるREIジュエリー社長からの挨拶。


「ただいま、ご紹介に預かりました、REIジュエリーの子会社新ブランドの代表に就任いたしました早瀬 樹と申します」


そして今日のこの発表会の主役でもあるオレの挨拶。

そう。

これがずっと今まで計画してきた今のオレのすべて。


「この新ブランドAngraecum<アングレカム>はREIジュエリーの新ブランド、そして子会社としてREIジュエリーとはまた違うコンセプト・ラインナップを揃えさせて頂きました。本来のREIジュエリーの良さと価値を活かしながら、更にたくさんの方に手に取りやすい商品を提供したいと思っております。元々のREIジュエリーは女性が輝き続けられる希望ある商品として提供させて頂いておりましたが、こちらの新ブランドは男性・女性どちらもそれぞれに愛ある商品を贈り合い、更に輝き続けてほしいというコンセプトがメインになっているブランドです。ペアアクセサリーとして共に持っていてもオシャレな商品から相手を想いオリジナルで作れる商品など多数の魅力ある商品をご用意しております。とにかくこちらのブランドではパートナーへの愛をこのアクセサリーと共に感じられて、更に輝いてほしいという願いが込められております。デザイナーも若手の新進気鋭の素晴らしい人材が揃っており、他にはないこちらのブランドでしかない必ず気に入って頂ける商品がお届け出来ると自負しております」


きっとこの場所に透子は来てくれているはずだけど。

何も聞かされていない透子は、今のオレを見てどう感じているだろうか。

そして透子に今のオレが伝わるように、今の想いが伝わるように願いながら挨拶を続ける。


「そしてこのブランドの立ち上げのきっかけになったのは、私にとって大切な大きな存在である一人に出会えたからです。その人のおかげで私は縁あってこちらのジュエリーと関わることが出来、自分の力でその愛しい人をもっと美しく輝かせたい・その想いを永遠に残る絆と形を残していきたいと思ったのがきっかけで、この商品は生まれました。すでにREI社との独占アクセサリーとして、今もなお皆様に先立って気に入って頂いておりますが、このブランド立ち上げと共に更にそちらとの商品・このブランドでの商品を自信持ってたくさん届けさせて頂ければと思っております。最後にこのブランドのAngraecum<アングレカム>という名前は、実際にある花の名前で、花言葉は『祈り』『いつまでもあなたと一緒』。この花言葉のように、愛する方に贈って頂きたい特別なモノとして、そしてずっと愛して頂けるアクセサリーになることを願っております」


ねぇ聞こえてる? 透子。

これはすべて透子のことだってわかってる?

透子がいたから実現したこと。


「新社長としてまだまだ経験も浅く未熟ではありますが、これから誠心誠意愛ある商品をお届けし日々尽力して参ります。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます」


最後の挨拶をしながら、会場一面を見渡す。

拍手を浴びながら、必死に大勢いる人混みの中にいるであろう透子を目で探す。

すると会場の真ん中辺りにいる透子をようやく見つける。


きっと、あれは透子。

広く遠いその先にいるその姿を見つけ、ちゃんと透子に伝えられたのだと少しホッとする。

だけど、そのまま背を向け出入口の方まで歩いて行き、扉を開けて外へ出て行くのが見える。


えっ? 今話聞いてたよね?

どこ行くつもり?


そしてオレもそのまま頭を下げて、挨拶も終わったと同時にその場を離れる。

気持ちの焦りと共に早足になって辺りを見回す。


透子? どこ行った?


それからすぐそのまま透子を探しに廊下へと出て会場の外を走り回る。

そしてようやく会場から少し離れたソファーに座っている透子を見つけた。

だけど、やっと見つけた透子は、うなだれて泣いているように見えて・・・。


やっと気持ちが伝わったと思ったのに、なんで透子泣いてんの・・?


しばらく離れて見ていても、全然泣き止まなくて、我慢出来ずにオレは透子の元へと近寄る。



本気にさせたい恋

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