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「それ全部勘違いやねんけど」──────────────────
◇ワンクッション◇
キャプション必読。
こちらはとある戦/争.屋実況者様のキャラをお借りした二次創作です。
ご本人様とは一切関係ございません。
・作品内に登場するすべては誹謗中傷/政治的プロパガンダの目的で作られたものではありません。
・公共機関では読まないようにご配慮下さい。
・あくまで一つの読み物としての世界観をお楽しみください。
・作品/注意書きを読んだ上での内容や解釈違いなどといった誹謗中傷は受け付けません。
今作品は私主催のshaさんを祝う生誕祭イベント『#黄ポメ主役の生誕祭2025』の作品です。
参加者→あくありうむ様、えーこん様、炭酸飲料のるかさん。様、の の 様、わたがし@イケメンになりたい様、星月 ひい/底P お嬢様上等!様
参加者様の作品は私のフォロー欄からも見れますし、タグで調べて貰えば他作品も簡単に出てくると思います。
では、物語をごゆるりとお楽しみ頂ければ幸いです。
──────────────────
s h a 視点
「にゃー、にゃー、」
そんな愛らしくか弱い声が庭から聞こえてくる。
その声につられ、シャオロンはそちらへ足を向けた。
ひょこっ、と壁から覗いて見ると、複数の猫が戯れている。
この光景を見たのが俺でよかったな、としみじみ思う。
もしこの光景を見たのがかの紫青年だったとしたら、「ゲフンゲフンデュフフフフ」といった気持ち悪い形相で猫を追いかけ回していただろう。
いや、それはロリ(幼女幼女)の場合か。
ともかく、ここに猫がいる事はまあ、頂けない。
猫がいるこの場所は軍基地、つまりは軍の本拠地でもある。
そん場所に入れば、もし敵が攻撃した時、猫は木っ端微塵の肉片と成すだろう。
なので、猫を外に出そうと一歩足を踏み入れた。
「こらー、猫ちゃんここおったら危険やから避難しよなー」
と、テノールボイスで猫を抱き上げる。
すると、猫はシャオロンの顔を蹴り上げ、シャッ、と腕を引っ掻いた。
綺麗な三本線の小さな傷が腕に走る。
「いったぁ!?」
頓珍漢な声を上げ、彼は無理やり猫を抱き上げる。
またもや引っ掻いてくるが、そんな事は気にせずにズンズン門の前まで歩く。
現役の、しかも最前線で戦う軍人なのだ、銃弾で撃たれることもあれば、ナイフで刺されることも、敵の自爆特攻の巻き添えも喰らったことがある。
こんな猫の可愛らしい抵抗など文字通り痛くも痒くもない。
「もう今度は迷い込むなよー」
と言い、彼が猫を抱き上げる腕を緩めた瞬間に猫が走り出す。
たんっ、と地面に降り立ち、素早い動きであっという間に姿が見えなくなった。
そんなに俺の事嫌やったの?、と思い少しショックを受けるが、紫の青年だったら、もっと嫌だったと思うぞお前、という念を込め猫の去った道を眺めた。
残りの猫を基地から追い出そう、とシャオロンはまた、庭へ足を向け、気怠げそうに肩を上下させ、ため息を吐いた。
秋になった夕焼けが、色鮮やかに彼の姿を照らした。
* * *
「ろぼろぉ〜〜………………」
そんな情けない声と共に、誰かがロボロの部屋へとやって来た。
大体、ロボロに来るのは黄色いあの青年だ。
なので、さっ、と扉を開け彼を出迎える。
彼の姿を見てみると、手をプラプラと振り、しょもしょも、とした面子でロボロを待っていた。
よく見てみると、彼の服は泥だらけで、白く細い腕にも何やら赤い線が何本もある事に気付く。
まーたコイツ怪我したんか、と重くロボロはため息を吐き、「中入って」と部屋を入るよう促した。
コイツ、ことシャオロンは軍学校時代からの親友で、彼のことは熟知している。
彼はなにも用なんて無いのに、よく俺の部屋へ来て、漫画やらゲームやらを勝手に漁ったあと、俺の部屋に泊まることもあれば、自分の部屋へ戻っていく。
お陰で、俺の部屋にはシャオロンの私物が置いてある。
何も用が無いのにくるか、もしくは怪我をした時に俺の部屋へ来る。
彼は医務室が嫌いなので、俺の部屋へ来るのだ。
この軍に来るまで彼は、それはまあ酷い環境にいたらしく、前の軍では医務室に行けばよく分からない薬を投入され、下痢、嘔吐、発熱、吐血を繰り返した為、あまり医務室に良いイメージが湧かないんだと。
あと単純に医務室に置いてあるツンとした消毒液の匂いが嫌いなのもあるが。
なので、怪我をした時は俺の部屋に来て、俺が怪我の手当てをする。
よっぽどの怪我では無い限り、俺の部屋で治療している。
そのおかげで、俺の部屋にはいつも救急箱が携帯してある。
「で?今度は何したん?」
「今のままやったらお前が自分で自傷したみたいな感じの傷やけど」
「え、うそ。そんな風に見えてる?」
「おん、まあな」
俺は彼の手を握り、消毒液で彼の手を消毒し、ティッシュで液を拭き取り、ゆっくりと包帯を巻く。
キツない?、と声を掛けながら。
「いやなぁ、裏庭に猫おってさ。そんで逃がしてたんよね」
「ほら、ここおったら猫も危険やし、猫って雑菌塗れで軍の衛生環境にも悪いしさぁ」
「あぁ、なるほどな」
「でも、このまま腕包帯塗れやったら大分ヤバいで?」
「んー、なら長袖の服着るかなー」
「今秋やし、まあ行けるやろ」
「そんな簡単に行くかなぁ……」
「大丈夫大丈夫!なんとかなるなる!」
「そんなヤバい風には見えんし」
「いやそれはお前が客観視出来てないだけやろ」
とツッコミながら、俺は消毒液と包帯を救急箱にしまった。
カチッ、と箱の蓋を閉め、元の置いてあった引き出しの中になおす。
「手当てありがとなー」
そう言って、彼は部屋から出て行った。
ガチャン、と扉が閉まる。
全く、突然来ては突然帰る。
嵐のような男だなあいつは。
俺の迷惑も少しは考えろ、とここに居ない彼の愚痴を内心落とした。
「…………なんかおもろい勘違いされそ」
と、俺は誰もいないこの部屋で一人独ちた。
その音は、空気に振動を伝え、瞬く間に、消えていった。
* * *
「あれ、シャオさん長袖やん」
食堂で騒音クソチワワがシャオロンに問いかけた。
もう既に日が沈み、三日月さんが登りかけていた頃。
そう、いつもは半袖の赤と白の派手なボーダーシャツが、長袖に変わっている。
一応今は秋なので、それも納得できる。
が、シャオロンは前線で立つ軍人であり、実戦の演習もよくする。
演習でとてつもない動きで動くため、肌寒い秋でも直ぐに熱くなる。
なので、いつもは半袖を着ていたのだが。
どいういわけか長袖を着ている。
違和感に映ったコネシマが、怪訝そうな表情でこちらを見つめていた。
「お前がこの時期に長袖着てんの珍しいな」
と言いながらゾムはコネシマに食害している。
コネシマの右隣にゾムが座り、左隣に大先生が座っている。
ゾムは大量のピザを食べていて、大先生は食後のゆっくりコーヒータイムに入っているところだった。
コネシマの周りには、ゾムの食害のマルゲリータや海鮮類のピザやらなにやら、色々な種類のピザが机に置かれている。
大先生は食害から逃れた様だった。
「え、えーと……いやな、さっきまで冷房ガンガンのところにおったでさ、えらい冷えて寒なってん!」
「やから長袖着とんの!」
「ホンマか?」
「ホンマじゃ!!」
「まあええわ」
「シャオロン、明日の演習さ、第二訓練場でやるから覚えといてな」
「んー、わかったわ」
俺は早速料理を受け取り、彼らの前の席に着いた。
今日の夕飯はハンバーグ。
なんとなく、今日は肉々しい食べ物を食べたかったのだ。
この軍には二つの食堂があり、一つは幹部用の食堂と、一般兵用の食堂。
一般兵は毎日決まったメニューが出るが、(イメージ的には給食に近いかもしれない。)幹部には幹部専属のコックが付いており、例えば、幹部でただ一人の日本生まれてあるひとらんは、日本人のコックを専属にしている。
ちなみに、俺はひとらんに勧められた”ワショク”というやつをたいそう気に入り、それ以降俺は”ワショク”を真似るように米を主食にしていた。
普通、一国の幹部にここまでの好待遇はあまりないのだが、グル氏曰く、『お前たちには美味い飯を食わせてやりたいからな!!』と言っていた為、このような制度になったんだそう。
アイツ俺らの事大好きかよ。金かけ過ぎだろ。
とも思いつつ、俺はナイフとフォークを持った。
ナイフでさっくりと肉を切り、フォークで口に運ぶ。
うん、美味い。
ハンバーグはデミグラスソースとケチャップ、オニオンソースとあるが、俺はオニオン派だ。
シッマはオムライスもハンバーグもケチャップ派らしく、ハンバーグのソースに関してはいつも俺と好みが合わない。
ゾムは第三派のデミグラスソース派だ。
オムライスは俺とシッマがケチャップ派で、デミグラスソース派であるゾムを叩きのめせるのだが、ハンバーグ何ソース派戦争ではいつも決着が着かない。
そしてその度に『いやくだらな』という大先生の一言で戦争が終わり、代わりに大先生が俺たちから、くだらなくなんかねぇやろ!!、とひょうてきにされ、はしたなく喘いでいる。
そんな馬鹿な考えを巡らせながら、俺は米を口に含む。
この国でも米が収穫出来ればいいのになー、と俺は思い、ハンバーグを一口食べた。
玉ねぎの風味が鼻を通り抜けた。
* * *
「あのさ、コイツやっぱ怪しない?」
そう鼓膜を震わせたのはシッマだった。
現在いる場所は内部ゲバルト略して内ゲバの戦場になりやすい談話室。
談話室では、茶色い光沢あるソファに、一人の青年がくうくう、と寝息を立てて眠っていた。
彼は、食堂を出る際に『眠いから仮眠取ってから書類するわー』と言っていて、てっきり、自室で仮眠を取るのだと思っていたら、彼は談話室のソファで寝ていた。
これ幸い、と俺たち(大先生、ゾム、俺)は彼の袖をまくり上げる。
すると、彼の腕には包帯が巻かれていて、さらにそれを外すと、小さく細い傷がある事が目に入る。
瞬時に俺たちの頭脳はこう結論付けた。
──────こいつ、自傷しているのでは?
と。
「どうしよ大先生、グルッぺンに報告するか?」
俺が大先生に問いかける。
「いや、少なくともこうしとるってことは本人は知られたくなかった、ってことやろ」
「なら暫くは様子見でどうなんや」
「……わかった」
「ん」
それにしても気ぃ悪いわ、と言うふうに彼はタバコに火を付ける。
ここ談話室やで、と視線を向けるが、彼は知らんぷりを決め込んでいる。
ゾムはシャオロンの頬をツンツンとつつき、水くせぇなぁ、と呟いた。
そんなに俺ら信用出来へんの?、とゾムは少し涙目だ。
大先生も、そんなゾムの呟きに同意するように、チッ、と舌打ちを一つ。
かく言う俺も、眉間に皺が寄るのを止められない。
あぁ、俺たちは信用に足る人物ではなかったのだな。
そう俺は天を仰いだ。
仰いだ先には、ゆらゆらと煙が立ち込めていた。
──────────────────
s h a 視点
おかしい。
いや、おかしいと言えばおかしい。
あれ、俺おかしいしか言ってなくね。
まあそれはどうでもいい。
俺が談話室で仮眠を取って以来、ゾムが必要以上に構ってくる。
大先生は、いつもは滅多に来ない演習場に来ては、こちらを見て安堵したように、ほっ、と息を吐く。
あの心無いシッマでさえ、馬鹿みたいに構ってくる。
『シャオロン!!!なんか相談あったらいつでも聞くで!!!』とゾムが俺の事を抱きしめては、大先生は『シャオちゃん、今度飯奢るわ』。
挙句の果てには、『なんかあったら言えや?俺ら仲間やねんから』と心無いシッマが、優シマになってしまっている。
いやどうしたお前ら。
いつもよりも距離感の近い三人のせいで、周りからも変な目で見られ始めている。
一般兵なんか、『もしかしてシャオロン隊長を巡って三角関係ならぬ四角関係……?』なんてほざきやがった。
誰だそんなウワサ流したの。
はあ、と俺はため息を吐き、廊下を歩く。
こつ、こつ、と靴音が鳴る。
そこに、一つの音が加わった。
「シャオロンさぁww正直ウザくね??www」
「わかるー」
「煽りしかしないしマジ目障りww」
「なんというか、幹部様たちの金魚の糞みたいだよねwww」
という、俺を下にみた罵詈雑言の数々。
その言葉に、俺は笑いが止まらなくなる。
が、そこは必死に我慢する。
だって、コイツらはこんなにも俺の事を一つもわかっていなかったのだから。
笑いを堪える事に必死で、ひーひー、と息があれ、涙まで出てきそうになる。
カクカク、と足に力が入らなくなっていって、地面にしゃがみこむ。
我慢する反動で体がフルフルと震え、本格的に笑いそうになった、その時。
トントン、と誰かが俺の肩を叩いた。
咄嗟に俺はその手を払い除け、後ろを振り返ると、驚いたような顔をしたショッピ君とチーノがいた。
二人は仲がいいから、恐らくだが、これから買い物に行こうとしたところなのだろう。
二人ともいつもの服ではなく、Tシャツにパンツといった私服姿だったからだ。
俺は、笑いを堪えることに必死で、全く気付かなかったが。
なんだかいたたまれなくなって、俺は早くに地を蹴り駆け出した。
「っ…ちょ!!シャオさん!!!??」
ショッピ君の呼ぶ声。
そんな声には反応せず、と言うか聞こえていない振りをして耳を塞いだ。
今にも笑いそうだから。
廊下を走る音がカツっカツっ、と大きくなる。
頬をなでた風が冷たかった。
* * *
「っ…ちょ!!シャオさん!!!??」
そうすると、しゃさんは耳を塞いだ走り去ってしまった。
彼を見かけた時、彼は身体が震え、しゃがみこんでいた。
トントン、と肩を叩くと、怯えたように手を叩く。
彼の瞳には、涙が浮かんでいた。
何かあったのか?、そう思う。
が、その疑問は直ぐに解決された。
『シャオロンさぁww正直ウザくね??www』
『わかるー』
『煽りしかしないしマジ目障りww』
『なんというか、幹部様たちの金魚の糞みたいだよねwww』
あぁ、彼はこんな罵詈雑言を常日頃から聞かされていたのか。
戦時中、こちら側が押されていた時も、颯爽と太陽のように俺たちの士気を鼓舞し、敵を喋るで潰す姿は、喜劇に舞い降りる一匹の小さな龍のようで。
そんな姿に、俺は憧れた。
そんな彼が、このような罵詈雑言に耐えていたなら、俺は到底この者たちを許せる気がしない。
俺はインカムでトントンさん、グルッぺんさんに繋ぎ、この一般兵を処罰する許可を貰った。
「……すまんチーノ買い物はまた今度な」
「ショッピ……もちろん、俺も拷問の遊び、させてや」
チーノが同調するようにスラリとナイフを袖口から取り出す。
俺は服に忍ばせていた斧を見せつけるように出す。
その斧を一般兵の背中に切りつける。
刹那、絹を割くような野太い男の悲鳴が響いた。
シャオさん、これが俺からアンタへの最高のプレゼント。
しかと受け取ってくれたでしょうか。
「ふふふ………」
「お楽しみはこれからやで?」
ダイスロールの駒が回る。
その駒は、成功を収めて、彼の手のひらに収まった。
数字は、六。
斧の悪魔が微笑んだ。
* * *
「って事があったんすけど………」
現在PM10:32。
夜の談話室にて。
コネシマ、ショッピ、チーノ、鬱、ゾムがソファに座っている。
この前の一般兵がシャオさんの悪口を告げているとき、シャオさんが震えていた事、泣いていたことを離した。
すると、大先生は信じられない衝撃の事実を話した。
『シャオちゃんさ、自傷してんねん』
そう重苦しい顔で彼はタバコを吸う。
ここ禁煙やで、と部長も注意するが、キツく咎めることは無い。
『っふー、これでシャオちゃんが自傷する原因もわかったな』
そう言い、彼は拷問器具を懐から取り出した。
いや、今どこからそんなら大きいものを取り出したんだ。
そんなツッコミはなんとか飲み込み、彼らとまた、意見交換。
『お、俺な、シャオロンが心配で盗聴器付けてん!』
『自傷する原因もわかったけど、まだなんかありそうで怖いし………』
『やから!その一般兵、拷問したらまた様子見せえへん……?』
『それ、賛成やわ』
大先生が賛成の挙手。
普段、大先生はシャオさんにイタズラを仕掛けられ、迷惑を被ってしまっていたかもしれないが、その実、彼がシャオさん保護者会筆頭である事は間違いない。
シャオさんが柔らかくはにかんだ時も、愛おしそうに、親が雛鳥を見守るような目つきで優しく微笑んでいるのだ。
そんな彼が、シャオさんが傷ついているとなると、黙っている訳がない。
かくして、俺たちの『シャオさんを傷つけるやつ絶対殺すマン』と化したのだった。
そして皆さん、お気づきだろうか。
ここまで申告に彼らは話し合っているが、全て勘違いだと言うことに。
さらに、その勘違いを指摘する者はいな事も。
では、物語の続きをどうぞ。
──────────────────
s h a 視点
おかしい。(二度目)
おかしすぎる。(三度目)
まさかのショッピ君やチーノまでもがおかしくなってしまっている。
前の『一般兵オモロすぎワロタ事件』より一週間が過ぎた。
ショッピ君は、いつもバイク旅には誰も連れていかないで有名だったのに、何故かバイク二人旅に誘われている。
おかしすぎる。お前どうした。
おかしいのはチーノもだ。
チーノは、常日頃からイタズラをよくメンバー全員に仕掛けていたが、何故か俺には仕掛けて来ないし逆に、よく買い物行こう!と誘われる。
何故?
本当にどうしたお前ら。
そして、俺が今いるここはM国。
現在、罵詈雑言を飛ばされています。
「はぁ……なぜあのお方は貴方のような無能を雇われているのか………」
「噂に聞くと、貴方、あまり部下にも慕われていないのでしょう?」
「こんなにも役に立たない方をなぜ雇われていらっしゃるのか……あのお方も物好きなものですねぇ」
「貴方、正直に申し上げてあのお方のお荷物なのでは?」
「……ははは……そうかもしれないですねぇ…」
(クッッッソ腹立つ……!何だこの野郎面と向かって真正面から言うやつがおるか!!!)
と、内心腹が立っていた。
が、シャオロンは思い直す。
あれ、もしかして、陰湿にコソコソする一般兵とは違い、真正面から言ってくるだけマシなのでは?、と。
なら、まだええか……、と持ち直し、この嫌味を淡々と聞き流していた。
上の空状態のままで、外交は終わる。
この前、グルッペンにこの国のこと話したんやけどなぁ。
ま、今度この国の外交になる時はマンちゃんにして貰おう。
そう思うも、少し考える。
あれ、この国からはもう欲しい輸出品は貰ったし、欲しい情報も要らなくね?、と。
「……捨てるんかなぁ」
そう呟く。
何故、捨てる、という発想になったかと言うと、この国に輸出するのを止めてしまえば、たちまちこの国は滅ぶ。
この国は、周りにある国に嫌われており、孤立しているから。
が、それは我が国W国も同じだが、数は少ないが我々は友好国もいるし、なにより、輸出を停められても戦争が出来るくらいには豊富な資源がある。
そこがお相手の国と、我々の国の違い。
だから、輸出を辞めて捨てるのかなぁ、という思考に至った訳である。
そして、黙々と考えるシャオロンとは他に、聞き耳を立てている者がいた。
彼の袖口を見てみると、小さく銀色に光る小型の機械が付いている事に気が付く。
そう、それはシャオロンが外交に行く前、ゾムが付けた代物だった。
『しゃ、シャオロン!お土産楽しみにはしとくな!!』そう言ってブンブン腕を振っていた。
恐らく、その時に付けたのだろう。
さらに、その事実にシャオロンは一切気付いていない。
先程のシャオロンによる『捨てるんかなぁ』発言は彼らにどう捉えられたのか。
あーあ、こりゃ勘違いが酷くなるぞ。
第三者の視点から見て、そう、桃色の誰かが思った。
* * *
どうもどうも、俺(ロボロ)です。✌(´>ω<`)✌
現在、俺は情報管理室にて、監視カメラと睨めっこしています。
そして、隣には、盗聴器を通して外交の様子を聞いている大先生、ショッピ、チーノ、コネシマ、ゾムがいる。
おい、ここはお前らの駐屯所ではないんだが。
その五人は、入ってくるや否や、空いている椅子を適当に引っ張り出し、机を挟んで面と面を向けている。
だんだんと様子が代わり、般若のような表情になっていく。
『捨てるんかなぁ』
そうシャオロンが呟く。
さて、ここで問題です。
この発言は皆さんにどう捉えられたでしょう。
答え、『外交で責められ、自傷するまで追い詰められたシャオロンは、俺たちがシャオロンを捨ててしまうのか』、そう捉えた。
彼らは、その発言を聞いたきり忙しない動きになり、皆さんで目線を合わせアイコンタクトを行うと、扉をぶち壊し総統室の方面へ走っていった。
俺は作業をしながら、監視カメラを見た。
トントンにまた怒られんでー、と高みの見物をしながら。
総統室に彼らが入ってから数分でインカムに連絡が入る。
『総員、五分以内に会議室へ集合。総統命令だ』
バリトンボイスの低い声。
総統命令と言われれば集まらない訳には行かない。
しかも、五分以内ときた。
大急ぎで監視カメラの監視を部下に任せ、ブルーライトカットのメガネを布面の下から外す。
眉間を少し摘み揉む。
そのまま総統室まで全力疾走。
『廊下を走るなァァ!!!!』と剣を持って追いかけてくるトントンだが、今ばかりは何も言わないはずだ。
この情報管理室から総統室まで全速力で約五分。
情報管理室から総統まで、中々距離があるのだ。
まあ、遠いところで十分かかるが。
既に一分ロスしている。
このままでは一分遅刻。
情報管理室本部は地下三階、最下層にあるが、情報管理室分部は四階にある。
なぜ別れているか、それは、軍に存在する国家機密情報は地下に保管し、その他の盗まれてもいいような情報は分部四階にある。
幹部以外の兵には、情報管理室は四階にある分部のみだと思っており、情報管理室本部がある事は幹部のみである。
今日俺がいたのは情報管理室分部四階。
なので、階段で二階まで降りると、いつものゾムのように、とまでは行かないが、二階から窓の縁に足をかけ飛び降りる。
ちなみに、ゾムは四階から降りても無事らしい。
人間離れしてやがる。
廊下を更に走り、所々でショートカットをしていく。
総統室の扉を壊さないよう蹴り開ける。
情報管理室から総統室まで、この時点できっちり五分。
遅刻はしていない。
二十と偶数の目が俺に向く。
会議室は殺意と殺意に満ちていた。
すまんシャオロン。お前に対する勘違い、俺には解けなさそうだ。
星になれ。アーメンアーメン。
「遅かったな。ロボロ先生よ」
「お前は楽でええよなぁグルッペン……!」
「こちとらクソ忙しいとこに、遠いとこから来てんぞ……!ホンマ走ったわ……!」
ここまで本気の本気の全力疾走だったので、額には汗をかいている。
対する、会議室にいる幹部たちは汗を一つもかいていない。
「では諸君。全員揃ったな」
「これから会議を始める」
「はぁい」
「どうぞ、オスマン」
オスマンが手を挙げる。
なぜ緊急の会議が開かれたのか、その質問のためだろう。
ココ最近では怪しい動きを見せた国はいないし、戦争は暫くないだろう、そう思っていたからだ。
「なんで会議室開かれとんの?」
「今シャオニキがおらん事となんか関係がお有りで?」
「そうだ。ここには居ないシャオロンに関する会議だ」
「まずはこれを聞いてくれ」
細長いリモコンのような機会のボタンをカチッ、とグルッペンが押した。
会議室にあるスピーカーから野太い男の声と、いつもの甘く優しいシャオロンの声が聞こえてくる。
『はぁ……なぜあのお方は貴方のような無能を雇われているのか………』
『噂に聞くと、貴方、あまり部下にも慕われていないのでしょう?』
『こんなにも役に立たない方をなぜ雇われていらっしゃるのか……あのお方も物好きなものですねぇ』
『貴方、正直に申し上げてあのお方のお荷物なのでは?』
『……ははは……そうかもしれないですねぇ…』
その音声が流れた瞬間、会議室は怒気とより強い殺意、殺気が溢れ出した。
そのままシャオロンを罵る声が続く。
その罵詈雑言に、シャオロンは下手に出て、相槌を打っている。
どんどん会話は続き、パタン、と扉の音がし、シャオロンが歩く音だけが続く。
不意に、足音が止まる。
『捨てるんかなぁ』
おい、シャオロン。
それ言うたら余計に勘違いが進むぞ。
その一言で殺気が最高潮に達した。
「……こういう出来事が起こった。これは過去の音声の再生であり、今も音声は続いている。これが現在の音声だ」
シャオロンは帰路に付いており、何故か歩く音だけが続いている。
今頃ではとっくに車に乗って我が国に帰っているはずだ。
『……はぁ。まさか車をぶっ壊してくるとはなぁ。俺ホンマになんかした?』
『まぁ隣国やし歩いて帰れるけども。気ぃ重いわ……』
車を壊した?
限界値を突破した殺気で、俺は居心地が悪くなる。
皆勘違いしてるからだが。
俺はきちんと勘違いだとわかっているので気楽に見ていられるが、他の幹部からしたら違うのだろう。
『うっ……は……ひぅ……グスッ……』
え?嘘やんなんで泣いてんの???
お前……なんか嫌がらせで催涙弾かなんか喰らったやろ。多分。
嫌がらせした、その事実がバレたらあの国は俺たちに潰されるが、催涙弾だと、直ぐに治まる上、証拠が残らない。
だから俺は、催涙弾でも喰らったんか?、と推測した訳である。
「……ふーん?」
「グルッペン、もちろんその国潰すやんな?」
「なにを言っている?当たり前では無いか。諸君、事情はわかったな?向こうの愚かな国は我々の大切な幹部に手を出したのだ、我々の恐ろしさ、しかと目に見せてやろう……」
全員、武器を構え、席を立つ。
かく言う俺も。
全て勘違いだとは言え、俺のマブダチにこの様な仕打ちをしたのだ、万死に値する。
俺は弓を手に持つ。
オスマンは拳銃を構える。
ひとらんらんは白い刃の刀を構える。
エーミールは爆弾を手に構える。
ゾムはナイフを構える。
トントンはダイヤで出来た大剣を構える。
ショッピは斧を構える。
コネシマは水色の大剣を構える。
大先生はスナイパーライフルを構える。
グルッペンは、観客を前にした役者のように両手を広げ、怒気を纏った表情で、俺たちを見下ろすように全員の顔を見て、呟いた。
「さあ諸君、戦争を始めよう。」
俺たちは武器を右手に持ち、グルッペンの方に身体を向ける。
頭を垂れ、跪き、左手を胸に添える。
「ハイル・グルッペン」
顔を上げ、全員が頷いた。
戦争の狼煙が、立ち込めた。
* * *
時は数刻戻り、M国。
シャオロンは、猛々しい山道を歩いていた。
ホンマ、運悪いわぁ。
外交の帰り道、『なんでお前なんかが!』と言われ名も知らなぬ一般兵に催涙弾を投げつけられ、帰ろうとすれば嫌がらせ(Part2)で車を壊され、仕方なく歩いて帰れば、山賊に襲われ(全て返り討ちにしたがお気に入りのニット帽を取られた。)、慣れない山道で何回も転び、至る所傷だらけだ。
催涙弾のせいで未だに涙は止まらず、身体中の水分を出し切ったな、と思うほど涙が続いていた。
いやぁ、運が悪い。
とぼとぼと歩いて帰っていると、やっと自国の国旗が見えた。
「や”っだあ”!!ゴホッ、オェッ、ゲホッ!」
催涙弾を喰らったせいか、喉が痛んでいる。
ズキズキと小さな針で刺されているような感覚。
拳銃で腹をぶち抜かれた時の方が痛かったのでどうってことはないが。
軍基地の門の前に立っている一般兵にぺこりとお辞儀をしてから門に入る。
あ、また涙出てきた。
おのれ催涙弾め、許さん。
そう思いながら廊下をゆっくりと歩く。
涙がポロポロと止まらず、この姿を誰にも見られたくないな、そう思い俯きながら進む。
ボスっ、と誰かにぶつかった。
そのまま俺は尻もちを付いてしまい、咄嗟に上を見上げると、エーミールが立っていた。
エミさんは一瞬驚いていたが、すぐさま優しいいつもの笑みに変わり、安心指せるように手を差し伸べた。
よく見ると後ろにはオスマン、ひとらんらんがいて、二人は驚いた顔をしたが、エミさん同様すぐさま表情は戻り、オスマンは胡散臭い外交官スマイルで、ひとらんはいつもの無表情を貫いた。
「大丈夫ですか?」
「そんなになるまで傷つけられていただなんて……オスマンさん、ひとらんらんさん、これは我々も全力を尽くすしかないようですね」
「おん、せやねぇ」
「でもその前に、俺はシャオちゃんをお風呂入れてくるわ」
「了解しました」
マンちゃんに腕を引っ張られ、俺は風呂場へと連れていかれる。
「あの……マンちゃん…?」
「ふふふふふ……新作の拳銃、スミス&ウェッソン モデル500を使うか……」
なんて物騒な事を呟いている。
こっそりと顔を伺ってみると、外交官の構える笑みは無く、ゾッとするような無表情で、いつもは目を閉じている深い緑の翡翠色の瞳が覗いていた。
俺は小刻みに震えながら、マンちゃんに釣られて足を運んだ。
* * *
大変だ。遂にエミさんやトントン、オスマンにひとらんまでおかしくなった。
マンちゃんは滅多にお茶会に誘わないのに、誘われ、ひとらんはいつも俺が畑を荒らしてしまうので畑の立ち入り禁止を言い渡されていたのに、畑でゆっくりしない?、というお誘い。
更には、エミさんは、コーヒーでもいかがです?、と立ち入り禁止(二回目)の図書館にまで入れてくれた。
トントンは、書類の期限に厳しく、よく大先生を絞って()おり、俺もたまに絞られ、粛清される。
が、何故か、シャオさんなんか悩み事でもないんか?あったらいつでも言ってや、に、書類は俺がやっとくから休んでき、とあの五歳児もびっくりの豹変。
「……てことなんやけど……」
「ヤバない?ロボロ」
「アッハッハッハッハッホワァ↑↑↑」
「んふっ……ふふ……まぁ、お前がおらん間に緊急の会議開かれてたくらいやしなww」
「えっ嘘。それ聞いてないんやけど、俺」
「『シャオロンが自傷行為をするまで追い詰められていた』って勘違いしてなwww」
「はぁ!?俺がそんなんする訳ないやんけ!!いっつも俺のどこみててん!」
「と言うか!お前も勘違いやって気付いとるんやったら訂正せえ!」
「いや、無理やアレは」
「あんな空気感で”勘違いやで”いうたら俺がぶっ殺されるわ」
「えっ、そんな重かったん」
「おう、まあな」
「ま、ええんちゃう?お前、最近疲れてたんは事実なんやろ?」
「そんな疲れとったか……?忙しかったと言えばそうやけど」
「ほんまよう言うわ」
「トントンの書類をこっそり持って行ってやってた事も知っとるし、ちゃっかり大先生のガバもフォローしてたし、朝にショッピ君の稽古も見てたんやろ?」
「トントン言うとったで?『ほんまシャオさんにはようやってもらっとるわぁ。しかも、アレでこっそりやってるつもりなんよな』とか」
「『シャオちゃんに前さ、ぼくのガバフォローしてもらったんよね今度お礼になんか奢らなな〜』」
「『シャオさんに最近朝練付き合うて貰っとるんですよ。俺、後方支援がメインなんですけど、やっぱシャオさん強いすわ。近接戦になった瞬間、ボコボコにされてまう。いつかコネシマを殺す為にめっちゃええ壁ですわ』って」
「嘘ん!?トントンはともかく、ショッピ君がそんなこと言うなんて……!」
「これを機に、甘やかされてこい」
「でも俺そんな甘やかされるん慣れてないし……」
「ふーん?」
「今頃みんな血眼で探しとるやろうけどなぁ」
シャオロンは、照れたようで、頬が朱に染まり、頭をかいてから、俺を指さす。
「あー!!!!もうええわ!!」
「ロボロ!!酒!!!」
「はいよ」
ロボロは、部屋に供えられている冷蔵庫から、二本のビール瓶を取り出した。
彼は、奪うように瓶を取ると、瓶のふたをナイフで開け、俺の持っていた瓶の蓋も開ける。
片方を俺に差し出し、受け取ると、強引に瓶をぶつけた。
カキィン、という軽快な音が鳴ると、彼は瓶のビールを一気に飲んだ。
「ぷはぁ……こうでもしねぇとやってらんねぇわ……」
彼はお酒に弱いので、すぐに酔いがまわったのか、顔がほのかに赤い。
目が少し虚ろで、少しできあがっていた。
ため息をひとつ零すと、彼はまたビールの入った瓶を、ジョッキにも入れず、直でまた一口のんだ。
俺は、そんな彼を見て、布面の下で笑い、ビールを飲んだ。
冷たい炭酸が、喉に絡んだ。
* * *
「んへへぇ……もう呑めへん………」
あれから数時間後、俺たちは酒に酒に酒に酒を飲み干していた。
彼は、あのあとものの数十分で酔っ払い、ビールをぐびぐびと飲んだ。
俺はこのクソザコシャオロンとは違い、酒に強くほとんど酔わないので、未だに酔ってはいない。
いや、少し訂正、いい感じに酔っている、というのが正解か。
冷蔵庫に入れていたワイン瓶をもう一本取り出し、クッションを下にひき、その上からワイン瓶の底を叩きつける。
茶色い栓が浮く。
手で引っ張り出すようにして取ると、ワイングラスを持ってきて、そこに注いだ。
とく、とく、とワインがグラスに入っていく。
入れ終わると、俺はワインに口を付けた。
彼は机に伏せ、半分、否、三分の四ほど夢心地にいる。
くぅ、くぅ、と寝息まで立てて。
口元はにへらと笑い、一体どんな夢を見ているんだか、とまで考えてしまう。
──────と、そこに。
ドアをノックする音が四回。
このノック数は。
ドアが開く。
「やぁ、ロボロ先生よ。シャオ氏は一体どんな感じだ?」
「どうもこうもないわ。アイツ、『なんでこうなったー、勘違いを解かんとー』とか言うてたわ」
「で?そっちこそ珍しいやんけ。俺の部屋に来たんとか、初めてちゃうか?」
グラスを持ち上げ、ワインを口の中に含み、飲む仕草をしてみせる。
ワインに注がれていた視線を、先程の訪問者へと注ぐ。
「なぁ?グルッぺン?」
「ハッハッハッハッハッハ、まぁそんな野暮なことはいいじゃないか。たまには私も酒を呑みたい気分だったんだ」
「私にもひとつくれないか?」
「……しゃあないなぁ。ほな、そこからグラス持ってこい」
「承知した」
グルッペンは、トントンにこってり絞られ書類仕事をさせられたのか、いつものあのコートは脱いでおり、腕を捲り、ネクタイは緩められていた。
ボタンも第二ボタンまで外されている。
グルッペンは、グラスを机の上に置くと、俺はすぐさま、ワインを注いだ。
とく、とく、と心音にも似たワインの鼓動音。
「ありがとう。で、ロボロ氏よ、この件お前はアイツらとは違いなにも勘違いをしなかったようだな。それはなぜだ?」
「何故もなにもないわ。俺はアイツとは、軍学校時代から……いやちゃうな、それより前からずっと付き合うてきたんや。今更こんなしょーもない勘違い、俺がする訳ないやんけ。それも、お前はわかっとんのやろ?」
「まあな」
「それより、俺はお前があの国を潰した事にまあ少し……驚いたわ」
「あの国、いくら戦争を仕掛けたから、って、輸出を止めれば簡単にアイツら自滅したやろ?」
「なのに、お前はせんかった。それは何故?」
グルッペンが、優雅な仕草でワインを口に含む。
顔が良いが故に、どこかのお貴族様みたいだな、と場違いにもそう思う。
「もちろん、アイツらは俺の大切な宝を貶し、罵倒し、挙句の果てには、危害を加えたのだ」
「万死に値する、そう思わないか?ロボロ先生よ」
「同感やわ」
「はは、ほんま珍しいなぁ。俺とお前の意見がここまで合うの」
「俺も少し驚いたゾ。お前がここまで憤っているのは珍しいじゃないか。それこそ俺にとっては疑問だ」
「はぁ?お前がそう思うことこそ意味わからんわ。いっつもいっつも言うてたやんけ。”マブダチ”って」
「思っていたのはシャオロンだけだと思ったが……なるほどな」
「俺のマブダチにあんなに愚かで、愚かで、愚かでたまらん事したんや。許しはせん」
「一瞬でも俺のマブダチを奪おうとしたんや……奪われて、壊されて当然」
「ふはは……」
ワイングラスを持ったまま、グルッペンはそう薄く笑う。
その笑みは、いつものあの邪悪な笑みとは少し違い、優しく微笑していた。
あ、コイツもそんな風に笑うことってあんねんな。
戦争とか武器とか戦車とかそういうの関連でしか笑わんと思ったわ。
「あ、そういやあの一般兵らどうなったん?」
「聞きたいか?」
「んー、まあ生きてるんやったら、俺も拷問したいなー、って思ってさ」
「そうか」
丸いテーブルに面と面を突き合わせているその横では、すぴー、すぴー、と寝息を立てて眠っている。
そんな姿を見て、グルッペンはますます、笑みを深め、眩しいものを見るかのように目を細め、やがてフッ、と鼻で笑い、ワインを一口飲んだ。
「まあ、俺たちは高みの見物でもしていようではないか」
「せやな」
俺もワインを一口飲み、グルッペンに顔を向ける。
彼は、『グラスを上げろ』という風に見てきて、その通りに俺はグラスを持ち上げる。
グルッペンもワイングラスを持ち上げ、俺のグラスとぶつけた。
カチン、とグラスの音が鳴った。
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「それ全部勘違いやねんけど」
『了』
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時間帯:6時〜7時
『#黄ポメ主役の生誕祭2025』
コメント
2件
rbrさんの途中の顔文字ピースで草生えた✌️ 勘違いだとしてもこれほど甘やかされるのってshaさんの人望のあつさだなぁ…と
最高ですね! d!の皆さんが仲間思いなのがめっちゃ伝わってきたし、全部勘違いかぁとおもいながら読んでいるのがとても面白かったです!!