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私
にはこの人生の中でたった一度きりしか無い瞬間がある。
それは私にとって一生忘れることは無いであろう特別な日であり、また同時にとても辛い思い出でもある。
そう、今日は私の誕生日なのだ。
毎年誕生日になると母さんはとても張り切ってご馳走を作ってくれるのだが、今年だけは違った。
父さんの急な出張が決まり、母さんは父さんの代わりに仕事をしなければならないらしい。
もちろん私は自分のために料理を作ることくらい出来るけど、折角の誕生日だから家族全員で祝いたいというのが本音だ。
それにしてもどうしてこんな日に仕事なんて入れるのかしらね。まったく父さんにも困ったものよ。
「ねぇ母さん、父さんは何時頃帰ってくるの?」
私は目の前にある大きなハンバーグを食べながら言った。
「うーん、いつも通りだと遅くても8時前には帰ってこれるとは思うんだけど」
時計を見ると時刻はすでに7時半を過ぎていた。
8時まであと30分程しかないじゃない! 早くしないとせっかく作ったご馳走が無駄になってしまうわ。
急いで食べようと思った矢先に玄関の方から扉を開ける音が聞こえてきた。どうやらようやく帰ってきたみたいね。
私は皿に残った最後の一切れを口に放り込むと椅子を引いて立ち上がった。
階段を下りてリビングに向かうと、テーブルの上に一枚の写真が置かれていた。そこに写っていたのは笑顔を浮かべている僕自身であった。その瞬間僕は全てを理解したのだ。
「なるほどね」
そう呟くと同時に、玄関の方でチャイムが鳴る音が聞こえてきた。時計を見ると時刻は既に正午を過ぎていた。僕は慌てて玄関に向かい扉を開けると、そこには僕の母さんが立っていた。
「こんにちわ。元気してたかしら?」
母はいつも通り優しい笑みを浮かべながら僕を見つめてくる。僕はその視線から逃れるように目を逸らすと、「うん」と答えた。
「そういえば、もうすぐお父さんの誕生日よね? 今年は何をあげようかしらねぇ」
誕生日。毎年この時期になると必ずこの話題が出る。
父へのプレゼントは毎年違うものですが、今年は何にしましょう? やはり毎年同じでは芸がないですよね。
去年は確かお酒でしたね。日本酒とワインを贈りましたよ。
じゃあ今年はどうしようかなぁ。
うーん、思いつきませんねぇ。困ったものです。
そうだ! いっそのこと私が何か作るというのはいかがでしょうか? えぇそうですよ。料理が得意だから思いついたのです。
きっと喜んでくれると思いますよ。
早速明日買い出しに行きましょう。
ふぅ、やっと帰ってきました。さて作りますかね。
まずは鶏肉を一口サイズに切っていきます。次にニンニクを薄皮ごと潰しておきます。そうしたらフライパンにオリーブオイルを引いて温めていきます。温まったら先程切った鶏肉を入れます。両面に焼き色がついたところでいったん取り出して皿に移して置きます。そして次は玉ねぎです。これも一口サイズに切り分けて同じように炒めていきます。玉ねぎにも火が通ったことを確認したらまた鶏モモ肉を入れて焼いて行きましょう。そしたらトマト缶を加えて煮詰めていきます。その間に付け合わせとしてキャベツを千切りしていきます。このキャベツも出来上がったスープに入れれば野菜たっぷりミネストローネの完成です。それでは早速味見をしてみたいと思います!あむっ。う〜ん美味しいです!これぞまさに家庭料理の真骨頂ですね。これであの人も喜んでくれるはずです。
そう思いながら僕は彼女の喜ぶ顔を思い浮かべていました。
ふと気がつくと見慣れない部屋にいた。そこはどこかの部屋の一室のようだったが僕には見覚えのない場所だった。それにしてもここはどこなんだろうか?どうしてこんなところにいるんだろう。確か昨日は仕事を終えて家に帰ったはずだ。そこからの記憶がないということは誰かに襲われたとかそういうことなのか?それとも誘拐されたのか?どちらにしてもこれはまずいな。早くここから逃げないと!そう思い僕は急いでこの部屋の出口に向かおうとしたのだがなぜか体が動かない。どういうことだ?なぜ体を動かせないんだ?まさか金縛りにあっているのか!?だとしたらこのままではまずい。なんとかして抜け出さなければ!!だが僕の体は一向に動く様子はない。くそっ、一体どうなってんだよこれ!動けよ!頼む動いてくれ!必死になって動こうとしているうちに段々と意識が遠退いて行きやがて完全に目が覚めたときには僕はまた見知らぬ部屋にいた。あれ?おかしいぞ。今度こそ本当に起きたと思ったんだけどなぁ。とりあえずもう一度寝てみるか。今度はちゃんと起きられるように祈りながら目を閉じてみると再び眠りにつくことができたようだ。よし、これで大丈夫だろう。次は絶対に起きることが出来るはず!それからどれくらい経った頃だろうか?突然ドアを開ける音が聞こえてきたのだ。マズイな。もし起こされてしまったとしたら間違いなく怒られてしまうに違いない。どうにかして誤魔化さなければならないな