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朝。
カーテンの隙間から、
白い光が落ちてくる。
スマホを取る。
少し迷ってから、
メッセージを送った。
「昨日は、
飲み会楽しかったよ」
すぐに既読がつく。
「よかったね。
飲み過ぎてない?」
胸の奥が、
ゆるむ。
「うん、
大丈夫」
返事をして、
画面を見つめたまま、
少しだけ考える。
歯ブラシ。
洗面台。
ポスト。
頭の中で、
並ぶ。
言い方を、
探す。
「ねぇ、
昨日ってさ」
一度、
消す。
もう一度、
打ち直す。
「仕事、
早く終わったの?」
送信。
既読。
少し、
間。
「いや、
残業だったから
遅かったよ」
画面の文字が、
静かに並ぶ。
「そっか」
それだけ返した。
それ以上、
続かない。
続けられない。
スマホを伏せる。
そのまま、
ベッドに腰を下ろす。
明かりは、
つけない。
暗い部屋で、
呼吸の音だけが
はっきりする。
ベッドのそば。
目を向けると、
何かが
影になっている。
形は、
よく見えない。
見なかったことにして、
視線を外した。
そのとき、
スマホが鳴った。
友人の名前。
通話。
「元気?」
笑い声。
「今度の休み、
カフェでランチしよ」
いいね、と答える。
少し間を置いて、
声のトーンが変わる。
「そうだ、
結婚式なんだけどさ」
胸の奥が、
静かになる。
「招待状、
もう届いた?」
「……まだ」
自分の声が、
少し遅れて聞こえた。
「おかしいな。
先月出したんだけど」
「たぶん、
まだなだけだよ」
そう言って、
笑った。
通話が切れる。
部屋は、
暗いまま。
朝、干した洗濯物のことを、
思い出す。
しまった、
と思って、
そっと扉を開けた。
外の空気。
ベランダ。
下を見る。
マンションの前に、
一台の車。
見覚えのある色。
見覚えのある形。
しばらく、
動かない。
私は、
そのまま
カーテンを閉めた。