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#ファンタジー
#ざまあ
設楽理沙
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強い眼差しだった。もう決めている揺るぎのない力強い瞳。すると、香さんは首を目一杯横に振り、床を思いっきり何度も叩きだした。
「ダメよ!そんなの許さない!あなた達はこの家の子なのよ!そんな勝手絶対に許さないんだから! 」
甲高い声で泣き叫ぶ香さんは、目の周りが真っ赤に腫れていた。
家に訪問したばかりの時の、にこやかで可愛らしい香さんの雰囲気の欠片も感じない。この数時間でこうも変わってしまうだなんて。
すると、そんな香さんの目の前にゆらりと落ちる影。
「香さん、少し休みましょう」
今まで黙って静観していた泉くんがゆっくりと口を開いた。
「あなたには心の療養が必要です」
「私がおかしいって言うのっ!? 」
落ち着いていて窘めるように泉くんが続ける。
「少し距離を起きましょう。このままではダメになってしまいます」
「〝九條〟は私から子どもを奪うの!?」
「今のあなたには歩とみちよを任せられないと言っているんです」
拒否は許さないというような厳しい口調だった。
「この子たちは私の子よ! 私のもとにいるのが一番いいに決まってるじゃない!それが幸せなのよ!」
「歩のことを本当の名前で呼んであげないのにですか? 二人がこんなに辛そうにしているのにあなたは目を合わせようともしないですよね。 きちんと目を背けずに二人の顔を見てあげてください」
それだけ言うと、泉くんは誰かに電話をかけはじめた。
「入ってきてください」
香さんが不安げに泉くんの顔を見上げると、おろおろと視線を泳がせて声を震わせる。
「ま、待って……誰を呼んだの? 兄さん? また私のこと罵倒しに……」
泉くんは何をする気なんだろう。……誰を、呼ぶ気なんだろう。
そして、少ししてリビングのドアを開けて入ってきたのは——
「香さん、こんにちは」
長い黒髪を右側にまとめて結っている優しそうな雰囲気の女性だった。