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僕らの詩 ~Our Lifetime~

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僕らの詩 ~Our Lifetime~

14 - エピローグ(最終話)

♥

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2022年09月25日

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エントランスのろうそくにひとつずつ火を灯し、丁寧にランタンをかぶせる。

ちらちらと暖色に輝くそれを見ていると、心が落ち着く。

ホールが明るくなるこの時は、特別な夜という感じがする。

マスターは踵を返し、とある部屋へ向かった。


2つ並んだベッド。片方は樹、もう一つは北斗。それぞれ安らかな表情で静かに眠っている。

最後も2人一緒に、というのはスタッフの提案だ。

「お疲れ様でした。田中さん、松村さん、よい旅を」

手を合わせ、そっと告げる。

よい旅を、というのはマスターが旅立つ人にいつも言っている言葉だ。人生という第一の旅を楽しんだあとは、空の上での第二の旅に出かける。それがより良いものとなるように、スタッフ一同願うのだ。

きっと2人は今頃、自由になって空を飛びまわっている。


昨日の夕方、看護師が部屋を見に行ったとき、ベッドの樹の上に重なるようにして北斗が寝そべっていた。

たぶんベッドサイドに座っていて、そのまま倒れ込んだのだろう。

どんだけ仲良いんだよ、と突っ込みたくなるような距離の近さだった。


「もう少し、あの6人でいさせてあげたかったな」

スタッフルームで、マスターはつぶやく。やはり、誰かを見送ったあとにはわずかな後悔が残るものだ。

「でも花火を一緒に見に行っていたらしいですよ」

「そうか…」

「僕がセラピーに入ってたとき、高地さんやジェシーさんすごく楽しそうに話してました。気の合う人たちだって」

うんうん、と感慨深げにうなずいた。

「そういえば、森本さんもアロマセラピーしてたときそんなこと言ってたな」

あのときの幸せそうな顔を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれた。


マスターが窓を開けると、冷たい風が吹き込んできた。

「涼しいですね」

療法士が言う。昼間はそれほどでもないが、夜は寒くなってくる。

「あ、明日新しい入居者が来るから、よろしく」

スタッフを顧みて伝えた。

ここでは別れがあるのは当然。その次には、新たな出会いがやってくる。

スタッフは、ここで出会った人を大切に、送り出すまで寄り添う。また新しい人にもおもてなしを尽くす。

よし、と気合を入れた。

ふと肌を撫でるような風が吹き抜けたとき、あの6人の詩声が聴こえてきた気がした――。


終わり

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コメント

2

ユーザー

とても好きです❕ 本出せるレベルの話をタダで見れるなんておこがましいくらいです

ユーザー

ガチ泣きしました。 一生心に残るような素敵な作品を読めて光栄です。

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